世界で俺だけが幼馴染の事を知らない

なつのさんち

文字の大きさ
41 / 72
Main story

寝落ち通話

しおりを挟む

 俺はテスト前だからといって日を跨いで深夜まで勉強を続けるタイプではない。
 寝る時は寝る。だいたい普段からきっちり予習と復習をしておけば、必死こいて机にかじりつく必要なんてないのだ。
 どうやら羽那子はなこ美紀みきも俺と同じタイプらしく、ある程度の時間でみんな揃って勉強を切り上げた。
 伊千香いちかは一人慌ててもう止めるのかと喚いていたが、これはいつもの事だから別段気に掛ける必要はない。
 伊千香においては十分頭に入っているはずなのに、これで大丈夫だという自信を持てない事から来る不安感と焦燥感で慌てるだけなのだ。
 いざ本番になればすらすら解けるのに、直前まであわあわしているのはいつもの事だ。

「じゃ、お休みー」

 いつも通り窓を開けてそこから出ていく羽那子。今さら何も言わん。

「お休みー」

 しかしお前は別だ。

「羽那子の部屋に行くのはいいけど、ちゃんと玄関を通って外から行きなさい」

「でもはなちゃんはここ通ってるもん」

 もん、じゃない。危ないから止めなさい。
 ぶつくさ言いつつ階段を降りていく伊千香。いい子だ。

 やっと一人になった。
 少し前まで夜は静かに過ごしていたんだけどなぁ。
 幼馴染というヤツはこんなにも騒がしいものなのか?
 共鳴するように妹までもが騒がしくなり、美紀みたいなうるさい系関西人までくっ付いて来たからたまったもんではない。
 先ほどまでの時間を思い出して一人ため息を吐き、パタンと横になる。リモコンで部屋の電気を消す。
 もう寝る。寝るがその前にスマホを触る。
 いつもチェックしているサイトを巡り、さぁそろそろ寝ようかというタイミングで着信。

「どうした?」

 耳に当てるのが邪魔くさかったのでスピーカーで応答する。

『別に用事はないんやけど……、寝る前にちょっと喋りたいなて思って』

 ……止めろよそのドキッとする声のトーン。こっちが迷惑だって思ってないかなぁと不安がっているのとか、声が聴きたかっただけなんだけど素直に言えないよねみたいな雰囲気を匂わすかのような声量。
 いや、単に俺の想像というか、妄想なのかもしれないが。
 同い年の女の子と寝る前に通話とか、普通に生活してて俺が体験するとは思っていなかったからすごく緊張する。

「そうか」

 そうか、くらいしか言う事なくね!? やべぇ、眠気が覚めた。
 え、これって俺から話題出した方がいいのか? こういう時に頼りになる男アピールするべきなのか!?

『実はそうやねん。まさかそんな事になるとはうちも思ってへんかってんけどな』

「それは大変だな。いつ何が起こるか分からないものなんだな」

『せやろー。だから何事にも備えが大切やねんて。前からうちがうるさく言うてたやろ?』

「そうだったな。二言目には『備えよ、さらば救われん』って言って回ってたな。みんなが怪しい宗教だって警戒しても気にせず説いて回ってたな」

『ふぉふぉふぉっ。感じるな、よくよく考えよ』

 何の中身もない会話。適当に話しているだけ。
 だが、それだけでも楽しいし、次に何を喋るべきかなんて変な気を遣う必要もない。
 そしてだんだんと眠気が増していく。

『……それでなー。えーっと、何やったけー?』

「あーすげぇ分かるわー」

 目を閉じて布団に包まり、聞こえて来る声に対して返事をする。とても心地良い。
 このまま眠ってしまおうとも思ったが、スマホを充電器に刺さなければならない事を思い出し、面倒だが目を開けてケーブルを探す。

『ありがとうなー』

 美紀はあと少しで寝入りそうだ。いや、もう眠っている状態かもしれない。
 変に声を掛けて覚醒させるのも申し訳ないので、そっと終話ボタンを押す。

『……好きやで』

 そう聞こえたのは、多分俺の気のせいだと思う。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

隣の家の幼馴染と転校生が可愛すぎるんだが

akua034
恋愛
隣に住む幼馴染・水瀬美羽。 毎朝、元気いっぱいに晴を起こしに来るのは、もう当たり前の光景だった。 そんな彼女と同じ高校に進学した――はずだったのに。 数ヶ月後、晴のクラスに転校してきたのは、まさかの“全国で人気の高校生アイドル”黒瀬紗耶。 平凡な高校生活を過ごしたいだけの晴の願いとは裏腹に、 幼馴染とアイドル、二人の存在が彼の日常をどんどんかき回していく。 笑って、悩んで、ちょっとドキドキ。 気づけば心を奪われる―― 幼馴染 vs 転校生、青春ラブコメの火蓋がいま切られる!

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。

四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……? どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、 「私と同棲してください!」 「要求が増えてますよ!」 意味のわからない同棲宣言をされてしまう。 とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。 中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。 無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。

二重のカーテン (スカートの下の黒い意志)

MisakiNonagase
青春
洗濯物の隙間に隠したのは、母としての祈りと、娘のプライド。 かつて、女子高生という生き物はもっと無防備で、自由だった。 44歳の主婦、愛子が朝のベランダで手にするのは、娘たちが毎日履き替える漆黒のオーバーパンツ、通称「黒パン」。それは、令和を生きる娘たちが自らの尊厳を守るために身に着ける、鉄壁の「鎧」だった。 小学校時代のママ友たちとのランチ会。そこで語られるのは、ブルセラショップに下着を売っていた奔放な50代、無防備なまま凛と歩くしかなかった40代、そして「見せないこと」に命を懸ける10代の、あまりに深い断絶。さらには、階段で石像のように固まる父、生徒の背後に立たないよう神経を削る教師……。 一枚の黒い布を通して浮き彫りになる、現代社会の歪さと、その根底にある不器用なまでの「優しさ」。 ベランダに干された黒いカーテンの向こう側に、あなたは何を見ますか?

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

宇多田真紀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

【完結】年収三百万円台のアラサー社畜と総資産三億円以上の仮想通貨「億り人」JKが湾岸タワーマンションで同棲したら

瀬々良木 清
ライト文芸
主人公・宮本剛は、都内で働くごく普通の営業系サラリーマン。いわゆる社畜。  タワーマンションの聖地・豊洲にあるオフィスへ通勤しながらも、自分の給料では絶対に買えない高級マンションたちを見上げながら、夢のない毎日を送っていた。  しかしある日、会社の近所で苦しそうにうずくまる女子高生・常磐理瀬と出会う。理瀬は女子高生ながら仮想通貨への投資で『億り人』となった天才少女だった。  剛の何百倍もの資産を持ち、しかし心はまだ未完成な女子高生である理瀬と、日に日に心が枯れてゆくと感じるアラサー社畜剛が織りなす、ちぐはぐなラブコメディ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

処理中です...