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Main story
バッドエンド
しおりを挟むイベント? バッドエンド確定?
囁く小さな声。聞き取りにくいが、独り言ではなく俺に対して話し掛けているようだ。
「ちょっとやり過ぎちゃったのかなー。
みっきーが転校して来るパターンは確率が低いからね、色々試してみたかったんだよ。
一度グッドエンドを見てるからね、バッドエンドも見るべきエンディングの一つではあるんだけど」
まるでシミュレーションゲームの話でもしているかのような羽那子の囁き声。
「幼馴染みを象徴するこの窓。ここの鍵を攻略対象の妹から施錠される。
ストーリー的にはとても面白い演出だよね」
攻略対象。ストーリー。演出。
「ここまでプレイするのにリアル時間で二週間、いやもうちょいか。
結構時間掛かってバッドエンドっていうのはあれだけど、まぁそういうもんだから仕方ないよねー」
プレイ。リアル時間。
こいつは一体何を言っているんだ……?
「あたしは途中でセーブしてそこからやり直しってのはしない主義なんだよ。
だからまた一から始める。
ごめんね? また最初から付き合ってもらうね」
「何の話をしているんだ……?」
思わず目を開けて羽那子へ問い掛ける。
部屋は暗く、俺は羽那子に見下ろされている為に余計に羽那子の表情は窺えない。
「次の周回についての話だよ。
さて、いっくんが声を出した事でいっちゃんが動き出すよ」
バタバタバタッ!
「お兄ちゃん!!!」
伊千香が自分の部屋から飛び出して、俺の部屋へと走って来た。
「離れろ!!!」
羽那子を突き飛ばし、俺を背にして守るように両手を広げる伊千香。
「お兄ちゃんに何するつもり!?」
突き飛ばされて床に尻餅をついていた羽那子が、ゆっくりと立ち上がる。
「隠れステータスである伊千香の好感度を下げてしまうと、ヤンデレ妹化してバッドエンド確定になるんだって。
さっきログアウトして検索して来たんだ」
「何訳分かんない事言ってんの!?」
怒りをぶつけるように叫ぶ伊千香。
質問でも疑問でもなく、羽那子とは相容れないという拒絶の色が入った声。
「おー怖い。こんなに可愛らしい女の子が、お兄ちゃんを守る為に必死の形相で睨み付けて来てる。
いいねぇ、やっぱり全部のイベント見るべきなんだよねー」
両腕を組み、うんうんと頷いている。
やっぱり羽那子っておかしいよな?
怒り狂っている伊千香がおかしいのはまだ分かる。
俺への想いが暴走しての結果、こういう行動を起こしているのだろうという予想はつく。
けれど、その怒り狂っている伊千香を前にして、飄々としているこの羽那子については理解が出来ない。
「よし、じゃあ最後まで進めてしまおっか。
こほんっ。
いっちゃん! あたしのいっくんへの愛は本物なんだよ!!」
小さく咳払いをしてから、大袈裟な身振り手振りで俺への愛を語り出す羽那子。
何なんだこれは!? 意味が分からない! 状況について行けない!!
「うるさい! お前みたいな女にお兄ちゃんは渡さない!!」
「お願いいっちゃん、ちゃんといっくんと話をさせて!」
ゆっくりと羽那子が俺達に近付いて来る。
両手を胸の前で広げ、話し合おうと訴える。
「それ以上近付かないで!!!」
これだけ二人が叫んでいるのに、父さんも母さんも異変に気付かないのか!?
俺が間に入って二人を止められるのかは分からないが、とりあえず伊千香を落ち着かせないと。
ベッドから起き上がろうとしていると、伊千香がパジャマのズボンの腰部分から、包丁を取り出した。
え、何でそんなところに包丁を入れていたんだ? というかよくそんなところで持っていられたな?
そんなどうでもいい事が頭に浮かんでいる間に、二人の距離は近付き。
そして。
ドンッ!
包丁を構えた伊千香と、両手を広げていた羽那子の身体が重なる。
バタンッ!
一切の力が入らなくなったかのように崩れ落ちる羽那子。
俺はベッドを飛び出して羽那子に駆け寄る。
「羽那子!?」
仰向けに倒れてた羽那子の胸には、真っ直ぐに突き立てられた包丁が。
窓から入る月明かりに照らされて、キラリと光っている。
「こんな時何て言うのが感動的なのかなー。
やっぱり痛いとか死にたくないとかは面白くないよね?」
羽那子の表情は至って普通。しかし状況的には全く普通ではない。
「いっくん……、何だか寒いよ……。あたしを抱き締めて……」
抱きかかえた羽那子の胸からは、血がドクドクと流れ出している。
分からない。分からない。分からない……!
「父さん! 母さん! 羽那子が!!」
両親に助けを求める。
叫ぶ俺の後ろから出て来た手が、羽那子の胸に刺さった包丁にかかり、そして引き抜いた。
引き抜いてまた刺し、引き抜いてまた刺し……。
世界が真っ赤に染まり、俺の意識は闇へと落とされた。
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