お坊ちゃまはシャウトしたい ~歌声に魔力を乗せて無双する~

なつのさんち

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お坊ちゃまは急かされる

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「エテピシェ伯爵から追加で特使が遣わされました」

 ソファーへ座る間もなく伝令内容が告げられる。
 本当に急いでいるらしい。

「内容については捕虜の即時解放要求。
 すでに迎えの軍勢を手配した、との事」

「迎えの軍勢、つまり奪ってでも取り戻すという事か」

 エテピシェ伯爵の思惑が分からない。
 カーニャを取り返したいのは理解出来るが、この街へエテピシェ伯爵軍が攻めて収容所を襲い、捕らえられた捕虜を救い出せると本気で思っているのだろうか。

 いや、どれだけ死に物狂いで攻めて来たとしても、この街に辿り着く前にシュライエン辺境伯軍によって返り討ちに遭うのは理解しているはずだ。
 あくまでこれは攻めてでも取り返す所存! というアピールでしかないだろう。
 別に何らかの思惑があると考えるのが普通だ。

「さらに詳しいお話は屋敷で。
 ご当主様とお館様がお待ちです」

 そうだな、ここであぁでもないこうでもないと想像しても何にもならない。
 となれば、一刻も早く屋敷へ戻らないと。

「お坊ちゃま、カーニャの処遇についてですが」

 ポーシェが俺の前に立ちはだかる。
 うん、忘れてた訳じゃないんだ。
 ちょっと棚上げしようかなって思ってただけで。
 顔を見てから帰るって言ったから、ちょろっと顔だけ見ようかな、うん。

「私に一任して頂けませんでしょうか」

「ポーシェが?
 どうするつもりだ」

「時間がございません。
 私はここに残り、責任を持ってあの者の面倒を見ます。
 お坊ちゃまは急ぎ屋敷へお戻り下さいませ」

 面倒を見ますって言ったって、犬じゃないんだから。
 ……いや犬か。
 いやいやそういう問題じゃない。

「若様、玄関に馬をご用意しております。
 何卒お早く」

 えっ、ちょ待てよ!
 何か嫌な予感がするんだよ、このまま屋敷に戻ったら面倒な事になりそうな気がするんだよ!!

「馬車は私が屋敷へ戻しておきます。
 さぁさお早く」

 そんな事気にしてる訳じゃない!
 くそっ、職員達に囲まれた。
 玄関から追い出すようにお早くお早くと俺を急かす。
 ポーシェめ、俺が気付かないようこっそりと焦燥感を魔力に込めて放出してるな!?

「それでは後ほど」

 収容所の玄関から俺を見送るポーシェ。
 いつも通り無表情だから、何を企んでいるのか全く分からない。
 馬が鼻息荒く、早く乗れと俺へ擦り寄って来る。
 分かった分かった、乗るから落ち着け。

「面倒な事にならないようにな!」

 エロい事が起きるどころか、何やらとんでもない問題に巻き込まれそうになってしまった。
 ポーシェが悪ノリをしなければいいんだが……。
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