みんなの女神サマは最強ヤンキーに甘く壊される

けるたん

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第2部 聖なる愚か者の行進

第22話 俺がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!

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「あ、あの騒ぎはそういうコトだったんだね……」


 司馬ちゃんとクソ野郎元気による、残虐ざんぎゃくなお昼のテロ行為を乗り越えた、その日の放課後。

 俺は誰も居なくなった2年C組で、よこたんと共に約1週間ぶりとなる反省文をしたためていた。



「まったく。ちょっと騒がしいくらいで、すぐ反省文を出せだなんて……。この学校は、頭がおかしいんじゃないのか?」

「いや妥当な判断だと思うよ?」

「妥当って、よこたんよ。たかだが窓ガラスが3枚破損、並びにクラスメイト3人が昏睡こんすいした程度で、反省文を提出させるか? 常識的に考えて」

「うん。常識的に考えたからこそ、提出させるんじゃないかな?」



 困った顔を浮かべる爆乳わんに対して、軽くため息をこぼす。

 ダメだな、コイツもこの学校に……いや日本に洗脳されてやがる。



「な、なんでそんな可哀そうな子を見る目でボクを見るの、ししょー?」

「よこたんよ……常識っていうのはな、大人たちが自分の都合のいいのように作った偏見の塊なんだぞ? そしておまえは今、この学校でその偏見に如実に影響を受けている。早く目を覚ました方がいいぞ。いやマジで?」

「えぇ……それこそ偏見じゃないかなぁ?」



 何もわかっていないよこたんに、俺は懇切丁寧に、いかに学校教育が愚かであるかという事を説明してやった。



「いいか? 学校っていうのはな、多感の年頃である男女を、長時間にわたって部屋に監禁し、何年も同じ授業を受けさせ洗脳させ、大人の都合のいい人間を造り上げていくんだ。それが学校、それがここ――侍の国ジャパンだっ!」

「はいはい、お喋りしているヒマがあったら手を動かしてね。はやく反省文を書かなきゃテスト勉強も出来ないんだからね?」

「……はい、すみません」



 よこたんに諭され、大人しく反省文に筆を走らせる。

 ちなみになんで今、ここに芽衣が居ないのかと言えば、生徒会顧問と羽賀先輩と一緒に、今後の方針について生徒会室で話し合っているからである。

 よって、俺とよこたんと廉太郎先輩からなる生徒会平役員はお休み。

 生徒会室が使えないので、仕方なく、よこたんの居る2年C組で勉強を教えてもらうことに。

 結果、本日俺の勉強を見てくれるのは、よこたん1人というわけだ。


 ……というわけなのだが、さっきから、よこたんが不気味なくらいニコニコしていて怖い。


 なんなら、今にも鼻歌を口ずさみそうなくらい、ご機嫌である。


「ほらほらっ! 今日は古文のお勉強をするんだから、はやく終わらせてね?」
「……ねぇ、よこたん? なんか妙に機嫌良くない?」
「ッ!? そ、そんなことないよぉ! ふ、普通だよっ!? ホントだよっ!?」


 首よ吹き飛べ! と言わんばかりに、高速で左右に頭を振りたくる爆乳わん

 す、すげぇっ!?

 なんかちょっと残像が残って、アシュ●マンみたいになってるぅっ!?

 どうやってんのソレ?

 俺にも教えてよっ!



「べ、べべべっ!? 別にししょーと2人っきりだから嬉しいとか、そんな不純な気持ちで機嫌がイイとかっ!? そんな事ないからっ! これっぽっちも無いからっ! 本当だよ? 本当なんだよ!?」

「メッチャ早口で喋るじゃんコイツ……」



 普段のおっとりゆったりしたコイツからは考えられないくらい、饒舌に舌が動き回っていたぞ、今。

 早口過ぎて聞き取れなかったわ。

 もう1回言ってくれる?


「も、もうっ! ボクのことはいいから、お勉強を――」
「こ、古羊洋子センパイっ!」


 よこたんの言葉は、突如背後の扉から聞こえてきた野郎の声によって、かき消された。

 うん、誰だこの声?

 俺はよこたんと一緒になって、声のした方向へと振り返る。

 するとそこには、ガチガチに緊張した男子高校生、もといウチの1年坊主が直立不動でこちらを見ていた。

 というか、よこたんだけを一心不乱に見つめ続けていた。

 いや、マジできみ誰ぇ?


「き、キミは確か保健委員の1年生だった子だよね……?」
「お、覚えていてくれたんですか!? そ、そうです! 保健委員1年の岡本淳太郎おかもとじゅんたろうです!」


 光栄です! と言わんばかりにパァッ、と顔をはなやかせる岡本1年生。

 その勢いに押されているのか、若干後ずさる、よこたん。

 あぁ~……。そういやよこたん、グイグイくる男が苦手だったっけ?

 というか男全般が苦手なんだよなぁ、コイツ。

 ……なんで俺に勉強を教えてくれてんだろう?

 まぁもちろん、そんな事なんぞ知らない岡本1年生は、勇気ある前進を試みてきた。


「よ、ようこ先輩! い、今お時間よろしいでしょうか!?」
「えっと……」
「俺は反省文書いてるからさ、別に構わねぇよ?」


 チラリ、と俺を見てきた爆乳わんと岡本1年生にそう告げる。

 それとは別に視線で『それとも、俺も一緒について行った方がいいか?』と尋ねるが、よこたんは覚悟を決めたように小さく首を横に振った。



「う、うん。大丈夫だよ」

「あ、ありがとうございます! で、でしたらその……隣の空きクラスまで移動してもらってもいいですか?」



 よこたんは「うん、いいよ」と優しげにそう答えると、今にも気を失いそうになっている岡本1年生と教室を後にした。

 俺は別にハーレムラブコメにありがちな鈍感系主人公ではない、どちらかと言えば感度ビンビン♪ 敏感少年である。

 ゆえに、これが愛の告白であることに一瞬で気がついた。

 なんなら、あの岡本1年生が教室に入ってきたくらいで気づいたくらいだ。

 ヤダ俺、超敏感♪ 全身性感帯かよ?


「それにしても、芽衣といい羽賀先輩といい、なんで生徒会役員の女性陣は、あんなにモテるんだろうか?」


 男性陣の方は一向に春が訪れないというのに……。

 いやそれよりも、今賞賛するべきは岡本1年生の方だろう。

 ただでさえ先輩というだけで気後れするのに、あまつさえ教室までやってくるだなんて、見上げた精神力だ。

 きっと彼もまた、俺たちと同様に、夏までに彼女を作るべく必死に努力をしているに違いない。

 やっぱり根性の入った男は、自分から告白しているんだよなぁ。

 あわよくば、女の子の方から告白してきてくれるのを待っている軟弱者とは大違いだ。

 ……別に自己紹介じゃありませんよ?

 ほんとだよ?


「……反省文書こ」


 俺以外誰も居なくなった教室で、雑念を振り払い、カリカリと反省文を埋めていく。

 10分後、俺の反省文が完成するのとほぼ同時に、隣のクラスからよこたんが帰還きかんしてきた。

 どうやら無事に終わったらしい。


「ただいま、ししょー」
「おう、おかえり」
「告白、されちゃった」
「……そっか」


 よこたんは、まるで俺の様子を観察するかのように、じぃぃぃぃ~~~っ! と、その澄んだ瞳で覗きこんできた。



「乱暴されなかったか?」
「う、うん。大丈夫だったよ」

「ならよかった。それじゃ、さっそくで悪いんだけどさ? 古文のテスト範囲を教えてもらっても――」

「ちょっ、ちょっと待って! ちょっと待ってよ、ししょーっ!」



 いいか? と、続くハズだった俺の言葉は、よこたんのお言葉によって、あっさりと阻止されてしまう。

 見ると、つい10分前まではあれほど上機嫌だったのに、今は頬を膨らませて『ボク、不機嫌ですよ!』と主張するように、分かりやすくふて腐れていた。

 えっ? なんでよこたん若干怒ってるの?

 あの日なの?



「ど、どったべ、よこたん? そんなタコみたいな顔をして? ほっぺた、押してほしいの?」

「そうじゃないっ! そうじゃないよっ! ししょーはもっと反応するべきことがあるでしょ!?」

「反応すべきことって……なんぞや?」

「もっとこう、ホラッ!『告白はどうだった?』とか『受けるのか?』とか、色々あるでしょ? あるよね? あるんだよ! もうっ!」

「1人で自己完結しちゃったよ……」



 珍しく情緒不安定な爆乳わんが、恨めしそうな目で俺を睨みつけてくる。

 だからさ? なんで俺が睨まれなきゃいけないのん?



「ところで、よこたんよ。純粋な疑問なんだけどさ? 今年度に突入してから、おまえ何回告白されたの?」

「えっ? え~と、2けたを超えたあたりから数えるの止めちゃったけど……たぶん25人、かな?」

「すげぇっ!? モテ放題じゃんっ! 入れ食いじゃんっ! いいなぁっ!」

「あっ、でもメイちゃんもボクと同じくらい告白されてるよ――って!? そうじゃないっ! そうじゃないよ、ししょーっ!?」

「うぉっ!? ビックリしたぁ……。どうした、やぶからスティックに?」



 よこたんは、半ばやけっぱちのような口調で俺に詰め寄りながら。



「し、ししょーはさっきの告白の結果、気にならないの!?」

「い、いやメチャクチャ気にはなるけどさ……。さすがにソレを根ほり葉ほり聞き出すのは、勇気を出して告白してきた岡本1年生に悪いだろ?」

「ふ、ふぅぅぅ~ん? き、気にはなるんだね、ふぅぅぅ~ん」

「ねぇ、よこたん? なんでそんな満足気な顔をするのん?」



 怒ったかと思えば、今度は嬉しそうな、満更でもないという顔をする爆乳わん

 ほんとどうした、我が弟子よ?

 感情が大渋滞しているじゃないか?



「オカモトくんには悪いんだけどね、さっきの話は断らせてもらったんだ」

「まぁ男が苦手なままじゃ『お付き合い』は難しいわなぁ」

「う、うん。それはそうなんだけどね? やっぱりそのぅ……。そういうのは、す、好きな人と……ね」

「好きな人ねぇ」

「う、うん……」



 赤くなった顔を隠すように俯きながら、もにょもにょ、と恥ずかしげに口元を歪ませるよこたん。

 うんうん、こういうのを本当の乙女心というんだろうなぁ。

 ほんとどこかの腹黒虚乳きょにゅう娘に、この光景を見せてやりたいよ。



「じゃあ、よこたんには今好きなヤツはいないの?」

「えっ? ……えぇっ!? きゅ、きゅきゅきゅ!? 急にどうしたの、ししょー!? セクハラ!?」

「いや、話しの流れ的に妥当な質問かと思ったんだけど?」



 アババババッ!? と、親にお気に入りのエロ本がバレた時の中学男子のように、オロオロと狼狽ろうばいし始めるよこたん。

 ときどき思うのだが、たまに奇行に走るよなコイツ。

 なんだ、なんだ? 奇行種か?

 おいおい駆逐されるぞ、気をつけろ?


「し、ししょーはっ!? ししょーは好きな人いるのっ!?」
「俺か? 俺はそうだなぁ……」
「あ、あの大神センパイッ!」
「うん?」


 再び俺達の背後、教室の扉の方から声が聞こえてきた。

 俺とよこたんが揃って振り向くと、そこには1年生の女子生徒が、まっすぐ俺達を見据えて立っていた。

 いや、俺達というより、主に俺に熱い視線を送っているような……んん?



「えっと……1年E組の鹿目しかめ窓花まどかと言います! 大神先輩、今お時間よろしいでしょうか?」

「し、ししょーの知り合い?」
「いや、初めて話す子だな」



 鹿目ちゃんと名乗るその1年生は、どこか切羽詰った様子で俺を見ているような気がした。

 それは別に構わないんだが……んん~?

 俺に1年生、しかも女の子の知り合いなんて居ないハズなんだけどなぁ……。

 と、自分で言っていて泣きたくなった。

 ほんと俺の青春、灰色モザイク……。


「あ、あの大神センパイ……?」
「あぁワリィ、ワリィ。よこたん、ちょっと待っといてくれ。すぐ戻ってくるから」
「う、うん……」


 何故か不安そうな顔を浮かべるよこたんをその場に置いて、俺は鹿目ちゃんと一緒に2年C組を後にした。

 教室を出るときに見たよこたんの顔が、主人の帰りを待つ子犬のようにシュンッとしていたのが、どうしてか脳裏にこびりついて離れなかった。
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