73 / 83
第73話:誤解と嫉妬、そして歩み寄り
しおりを挟む
時は『恋のキューピッド作戦』茶会の前に遡る。
ライネール夫人から相談を受け、サクリス本人からもツェーザルが気になると打ち明けられたシズリアが茶会を計画していたある日。
「シズリア…お前もしかして、ツェーザルの事が気になっているのか?」
どこか落ち着かない様子で部屋を訪れたジークハルトの一言に、シズリアは驚いた。
「…へ?」
「いや、俺に口出しする権利がない事は分かっている。お前があいつを好きになったなら、俺は…応援する…と言いたくないが仕方ない事だ」
「え、ちょっと待ってください、何の話ですか??」
なにやら勝手に誤解して結論を出そうとしている様子。
慌てたシズリアは、まず誤解を解くことにした。
「えーっと、何故私がツェーザルを好きだなんて話になるのですか?」
「あいつの好みを聞いて回ったり、よく話しかけているだろう?」
「それは…」
勝手にサクリスの恋をバラして良いのだろうか。
しかし屋敷で茶会を開くからには夫の協力もあったほうがいいだろう、そう考えジークハルトにも事情を話すことに。
「…と、いうわけなのです。だから私がツェーザルについて調べたりしているのは、サクリス様の初恋を応援してあげたいからなのです」
「そうだったのか…あのサクリス嬢がツェーザルを気にしているとは」
人の本質を見抜く不思議な娘だと認識している。
彼女が惹かれたのなら、きちんとツェーザルの内面を感じ取ってのことたろう。
夢を諦めて荒れていた頃から知っているジークハルトは、兄のような父のような気持ちで彼を見守ってきた。
「ツェーザルがサクリス嬢を受け入れるかどうかは分からんが、上手くいけば喜ばしいことだな」
幸せになってくれたらという思いは常にあるのだ。
事情を知り誤解であったと理解したジークハルトは、バツが悪そうに頭をかく。
「…すまん。勝手に嫉妬して変なことを言った」
「いえ…誤解を生むようなことをして申し訳ございません」
「お前は悪くないよ」
「ですが…」
公爵夫人として、紛らわしい真似をすべきではない。
反省し落ち込むシズリアを、ジークハルトが抱きしめる。
「俺が余計なことを考えて余裕を無くしただけだ。シズリアが謝ることじゃない」
「ジークハルト様…」
「…そろそろジークと呼んでくれないか?」
彼を愛称で呼ぶのはキリアと、その母でありジークハルトの乳母を務めた女性くらいだ。
シズリアともっと親しくなりたいジークハルトとしては、いい加減他人行儀な態度を卒業して欲しかった。
「…ジーク様」
「これからはそう呼んでくれ」
「分かりました」
「…命令ではないぞ?」
渋々従ったように見えたのか、不安げなジークハルト。
シズリアは笑いながら首を振り、ジークハルトを見上げる。
「ごめんなさい、仲良くなるには必要な事ですよね。私ももっと貴方のことを知らなくちゃ」
シズリアの笑顔を見てジークハルトは思わず顔を近づける。
「…嫌なら言ってくれ」
唇が触れるかと思われた、その寸前で顔が止まり理性を振り絞るジークハルト。
シズリアは少し考え、嫌ではないですと答えて目を閉じた。
ライネール夫人から相談を受け、サクリス本人からもツェーザルが気になると打ち明けられたシズリアが茶会を計画していたある日。
「シズリア…お前もしかして、ツェーザルの事が気になっているのか?」
どこか落ち着かない様子で部屋を訪れたジークハルトの一言に、シズリアは驚いた。
「…へ?」
「いや、俺に口出しする権利がない事は分かっている。お前があいつを好きになったなら、俺は…応援する…と言いたくないが仕方ない事だ」
「え、ちょっと待ってください、何の話ですか??」
なにやら勝手に誤解して結論を出そうとしている様子。
慌てたシズリアは、まず誤解を解くことにした。
「えーっと、何故私がツェーザルを好きだなんて話になるのですか?」
「あいつの好みを聞いて回ったり、よく話しかけているだろう?」
「それは…」
勝手にサクリスの恋をバラして良いのだろうか。
しかし屋敷で茶会を開くからには夫の協力もあったほうがいいだろう、そう考えジークハルトにも事情を話すことに。
「…と、いうわけなのです。だから私がツェーザルについて調べたりしているのは、サクリス様の初恋を応援してあげたいからなのです」
「そうだったのか…あのサクリス嬢がツェーザルを気にしているとは」
人の本質を見抜く不思議な娘だと認識している。
彼女が惹かれたのなら、きちんとツェーザルの内面を感じ取ってのことたろう。
夢を諦めて荒れていた頃から知っているジークハルトは、兄のような父のような気持ちで彼を見守ってきた。
「ツェーザルがサクリス嬢を受け入れるかどうかは分からんが、上手くいけば喜ばしいことだな」
幸せになってくれたらという思いは常にあるのだ。
事情を知り誤解であったと理解したジークハルトは、バツが悪そうに頭をかく。
「…すまん。勝手に嫉妬して変なことを言った」
「いえ…誤解を生むようなことをして申し訳ございません」
「お前は悪くないよ」
「ですが…」
公爵夫人として、紛らわしい真似をすべきではない。
反省し落ち込むシズリアを、ジークハルトが抱きしめる。
「俺が余計なことを考えて余裕を無くしただけだ。シズリアが謝ることじゃない」
「ジークハルト様…」
「…そろそろジークと呼んでくれないか?」
彼を愛称で呼ぶのはキリアと、その母でありジークハルトの乳母を務めた女性くらいだ。
シズリアともっと親しくなりたいジークハルトとしては、いい加減他人行儀な態度を卒業して欲しかった。
「…ジーク様」
「これからはそう呼んでくれ」
「分かりました」
「…命令ではないぞ?」
渋々従ったように見えたのか、不安げなジークハルト。
シズリアは笑いながら首を振り、ジークハルトを見上げる。
「ごめんなさい、仲良くなるには必要な事ですよね。私ももっと貴方のことを知らなくちゃ」
シズリアの笑顔を見てジークハルトは思わず顔を近づける。
「…嫌なら言ってくれ」
唇が触れるかと思われた、その寸前で顔が止まり理性を振り絞るジークハルト。
シズリアは少し考え、嫌ではないですと答えて目を閉じた。
11
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
【完結】異世界転移した私、なぜか全員に溺愛されています!?
きゅちゃん
恋愛
残業続きのOL・佐藤美月(22歳)が突然異世界アルカディア王国に転移。彼女が持つ稀少な「癒しの魔力」により「聖女」として迎えられる。優しく知的な宮廷魔術師アルト、粗野だが誠実な護衛騎士カイル、クールな王子レオン、最初は敵視する女騎士エリアらが、美月の純粋さと癒しの力に次々と心を奪われていく。王国の危機を救いながら、美月は想像を絶する溺愛を受けることに。果たして美月は元の世界に帰るのか、それとも新たな愛を見つけるのか――。
辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました
腐ったバナナ
恋愛
異世界に転移した元会社員のミサキは、現代の調味料と調理技術というチート能力を駆使し、辺境の森で誰にも邪魔されない静かなスローライフを送ることを目指していた。
しかし、彼女の作る絶品の料理の香りは、辺境を守る冷酷な「鉄血」騎士団長ガイウスを引き寄せてしまった。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません
嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。
人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。
転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。
せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。
少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!
雨宮羽那
恋愛
いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。
◇◇◇◇
私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。
元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!
気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?
元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!
だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。
◇◇◇◇
※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。
※アルファポリス先行公開。
※表紙はAIにより作成したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる