アルメリア海賊団航海日誌〜そして少女は船に乗る〜

歌龍吟伶

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第5章〜ライアン〜

第48話

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ヴィンは一瞬ミュフィに目をやるが、人々の意識がライアンに向いている今は大丈夫だろうと判断し、ライアンを援護すべくケルパ兵士に向き直る。

一方のイクスは判断を迷っていた。


(いったいどういうことだ…ライアンは何者なんだ?)


なぜライアンはミュフィを連れてきたのか。裏切ったのか?

ヴィンがケルパ軍と戦うからイクスも剣を向けつつ、彼は戸惑っていた。


「セシルを返せ!!」


「なんなんだお前は」


兵士たちに守られながら少しずつ後退していくグラン。

怒りに任せて剣を振るうライアンは隙だらけ、次第に兵士たちに囲まれていく。


「くそッ…どけ!!」


「落ち着けライアン」


ヴィンの声も届きはしない。

門のところまで来た時、グランの背後から女の声が。


「おやめなさい、アンリ」


そこにいたのは、王妃エレーヌ。


「おおエレーヌ。お前此奴を知っているのか」


「…はい陛下、ジゼールの息子アンリです」


「…エレーヌ叔母上」


グランの現在の妻エレーヌの父は、ハルシーナ王国国王の弟。

ライアンことアンリ・フォレスの叔母にあたる。


「国に喧嘩を売るなど正気ですかアンリ、無駄なことはおやめなさい」


「無駄だと?セシルの死が無駄だとでもいうのか!何故守ってくれなかった?!」


「あの子は、行く当てもないのに拾ってくださった陛下に逆らったのです。主人に従わなければ、その末路は決まっています」


そう話すエレーヌの目は虚で生気が感じられない。

足取りもしっかりしていてはっきりと喋っているが、その魂はここに在らずという異様な雰囲気だ。


「叔母上、貴女こそどうしてしまったんだ?」


記憶にあるエレーヌは、気は強く無かったけれどこのように非情なことを言う人では無かった。

戸惑うライアンの目の前で、グランは笑いながらエレーヌの髪を掴む。


「ははは!エレーヌを見てみろ、私に従順な人形!素晴らしいだろう!」


「貴様、一体何をした」


「何もしていないぞ。ただ誰が主人か、そして身の程というものをわからせてやっただけさ」


何もしていないものか。

エレーヌの心は既に壊れきっていたのだ。

記憶を頼りにライアンを認識し会話をしているが、自分が何を言っているのか理解することもできなくなっている。
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