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第5章〜ライアン〜
第54話
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中庭にグランの悲鳴が響き渡るが、助けを求められたエレーヌが動く様子はない。
そろそろ止めるべきか、とヴィンが考えた時。
城へと続く扉から、ケルパ国軍とは違う服装の兵士たちが入ってきた。
「…ハルシーナ国軍」
見覚えのある軍服にライアンが反応し、その声で首を動かしたエレーヌも彼らに視線を向ける。
「お、おお…ハルシーナの者達よ、私を助けよ…!」
ボロボロになってなお息のあるグランが、最後の力を振り絞って叫ぶ。
しかしハルシーナの軍人たちは冷たい目で見下ろし、淡々とここに来た目的を話す。
「ケルパ国国王グラン殿。我らがハルシーナ王国国王ダミアン陛下のお言葉を伝える。」
再三要求している令嬢セシルの遺体引き渡し、もしくは使者の墓前参り。
王妃エレーヌの安否確認。
そしてスパイ活動を確認したケルパ国出身者による情報流出について。
「ダミアン陛下は大変お怒りです。ただちに返答せよとのことです」
ハルシーナ側の話に黙り込んだグラン、しかし血を吐きながら必死に訴えかける。
「わ、わかった、セシルの墓参りも許可する!エレーヌはそこにいるだろう、早く私を助けろ!」
ライアンは、ハルシーナの代表として来たらしい男に見覚えがあった。
「…マチアス隊長?」
マチアスと呼ばれた男はライアンに視線を移し、僅かに驚きを見せる。
しかし動揺を表に出してはいけない、それがハルシーナ国軍の決まり。
「…アンリ様でしょうか。国外任務中に亡くなったと報告が上がっておりましたが」
「見ての通り生きてるよ…それより、ダミアン伯父上のお考えを知りたい」
自分の暗殺を命じたのかどうか、そしてなぜセシルをこんな奴の所に送ったのか。
怒りを込めた目で問いかけるライアンに、マチアスは静かに答えた。
「まず、アンリ様襲撃の件についてですが。陛下のご命令という事は断じて御座いません、賊に襲われ亡くなったと報告があり大変残念に思われておりました」
そしてセシルについても淡々と事実が述べられる。
「セシル嬢はアンリ様が亡くなられたという報告に大変悲しまれ、塞ぎ込んでしまわれた。その頃エレーヌ様の輿入れ話があり、気分転換にセシル様もケルパに行かないかと打診があったのです。エレーヌ様からの誘いでしたので、セシル様は了承しケルパに向かわれました」
マチアスがそこまで語ると、ずっと黙っていたエレーヌが乾いた口を開き掠れた声で話し始めた。
そろそろ止めるべきか、とヴィンが考えた時。
城へと続く扉から、ケルパ国軍とは違う服装の兵士たちが入ってきた。
「…ハルシーナ国軍」
見覚えのある軍服にライアンが反応し、その声で首を動かしたエレーヌも彼らに視線を向ける。
「お、おお…ハルシーナの者達よ、私を助けよ…!」
ボロボロになってなお息のあるグランが、最後の力を振り絞って叫ぶ。
しかしハルシーナの軍人たちは冷たい目で見下ろし、淡々とここに来た目的を話す。
「ケルパ国国王グラン殿。我らがハルシーナ王国国王ダミアン陛下のお言葉を伝える。」
再三要求している令嬢セシルの遺体引き渡し、もしくは使者の墓前参り。
王妃エレーヌの安否確認。
そしてスパイ活動を確認したケルパ国出身者による情報流出について。
「ダミアン陛下は大変お怒りです。ただちに返答せよとのことです」
ハルシーナ側の話に黙り込んだグラン、しかし血を吐きながら必死に訴えかける。
「わ、わかった、セシルの墓参りも許可する!エレーヌはそこにいるだろう、早く私を助けろ!」
ライアンは、ハルシーナの代表として来たらしい男に見覚えがあった。
「…マチアス隊長?」
マチアスと呼ばれた男はライアンに視線を移し、僅かに驚きを見せる。
しかし動揺を表に出してはいけない、それがハルシーナ国軍の決まり。
「…アンリ様でしょうか。国外任務中に亡くなったと報告が上がっておりましたが」
「見ての通り生きてるよ…それより、ダミアン伯父上のお考えを知りたい」
自分の暗殺を命じたのかどうか、そしてなぜセシルをこんな奴の所に送ったのか。
怒りを込めた目で問いかけるライアンに、マチアスは静かに答えた。
「まず、アンリ様襲撃の件についてですが。陛下のご命令という事は断じて御座いません、賊に襲われ亡くなったと報告があり大変残念に思われておりました」
そしてセシルについても淡々と事実が述べられる。
「セシル嬢はアンリ様が亡くなられたという報告に大変悲しまれ、塞ぎ込んでしまわれた。その頃エレーヌ様の輿入れ話があり、気分転換にセシル様もケルパに行かないかと打診があったのです。エレーヌ様からの誘いでしたので、セシル様は了承しケルパに向かわれました」
マチアスがそこまで語ると、ずっと黙っていたエレーヌが乾いた口を開き掠れた声で話し始めた。
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