アルメリア海賊団航海日誌〜そして少女は船に乗る〜

歌龍吟伶

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第5章〜ライアン〜

第55話

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「わたくしが…愚かだったの」


虚だったエレーヌの目には悲しみが広がり、涙が溢れている。


「グラン陛下は、私をとても美しいと言ってくれた。愛していると言ってくれた。お父様もお母様も、昔からずっと兄様と姉様のことばかり…私を見てくれる人が居なかった」


エレーヌは外面の良いグランの甘言に騙され、偽りの愛の言葉を信じたのだ。

初めて愛してくれる人に出会えた、そう信じて喜んだ彼女は、兄を亡くしたセシルに声を掛けた。

一緒に連れておいでというグランの言葉を、優しさからきたものだと信じ切っていたのだ。

その後、セシルの両親を殺したのがバーナー家だと教えてくれたのもグラン。

しかし輿入れしてすぐに身籠り、長男を出産した途端にグランは豹変した。

自分にもセシルにも暴力を振るい、支配しようとしてきたのだ。

まだ愛を信じていたエレーヌは洗脳されていったが、セシルは拒み続け、どれほど酷い目にあっても抵抗し、殺されてしまった。


「全て私が悪いのよ…ごめんなさいアンリ」


「…叔母上に謝られてもセシルは戻らない。どれほど苦しんだか…!」


ライアンは剣を握る手に再び力を込める。

しかしグランに向き直ったライアンの前に、マチアスが立ち塞がった。


「どけ!マチアス!」


「申し訳ございませんが、この男は我々がハルシーナに連行します」


表情を変えずにマチアスは言う。


「セシル嬢は正式に輿入れしたわけではない、あくまでも療養のためケルパに滞在していた。ハルシーナ国民であり王家の血を引く彼女を殺害した罪は許されません。ダミアン陛下の名の下に裁きを下します」


裁かれると聞き、グランは震えながら首を上げる。


「な、何を言う…あれは事故だ!私は悪くない!」


この期に及んで言い逃れする見苦しさに、ライアンはマチアスを押し退けて剣を向けようとした。

しかしそれを制したのは、ヴィン。


「止めるな!お前には関係ない!」


船員ライアンではなく、アンリとして反応する…そんな彼にイクスとジェイが剣を向けるのを片手で制し、ヴィンは静かに語りかける。


ライアン・・・・、この場で憎しみのまま殺すことは簡単だ。だが、それで終わらせて良いのか?ハルシーナで裁かれるということは、生き地獄が続くということだ。」


ヴィンの言いたいことは分かる。

だが感情は納得しない、そんなライアンにミュフィも声を掛けた。


「ライちゃん、帰ろう?」


彼が帰る場所は船だと。

ヴィンとミュフィは伝えたいのだ。
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