アルメリア海賊団航海日誌〜そして少女は船に乗る〜

歌龍吟伶

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第5章〜ライアン〜

第57話

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海賊船において船長の命令は絶対だ、逆らうものには死を。それがルール。

しかしヴィンは普段、命令口調で話してもそれを「命令」だと明言しなければ効力はないと船員に伝えていた。

だから今回あえて明言したのは、それだけ強い意味を込めてライアンを連れ戻すという意思表示なのだ。

船長であるヴィンがライアンを除名せず、命令として船に戻れと言ったからには従わなければならない。


「…どうして、そこまでして俺を迎え入れる?」


正直ライアンはヴィンになら殺されてもいいと思っていた。

大切なミュフィを人質にするつもりで連れ出して許してくれるとは思っていなかったし、任された船を放棄してきた時点で命令違反だと思っていたから。

セシルの墓があるなら一目見たいけれど、あのグズ野郎が埋葬してくれたとは思えない…せめて近くの海に沈んでしまおうか。

それくらい考えていた。


「なぜだと?お前は俺たち・・の仲間だ、それ以外の理由があるのか」


何度も言わせるな、そう付け加えてヴィンは先を歩き始める。

仲間達もアイク達を慎重に運び出すことに集中し、もうライアンのことを気にしていない。

イクスだけはライアンを睨みつけたが、船長命令である以上異議を唱えることはできない…苛立たしげにヴィンの後を追う。


「ね、大丈夫。帰ろう」


優しく笑うミュフィに手を引かれ、ライアンは泣き笑いを浮かべ歩き出す。

帰る場所、生きる場所があると示してくれる人…ヴィンの背中がどれほどのものを背負っているのか。

自分も強くなろうと心に誓い、ライアンは一度だけマチアスを振り返る。

彼は小さな笑みを浮かべながら敬礼し、立ち去った。


(…グランはハルシーナの法で裁かれる。これでいいんだよな、セシル)


ハルシーナの刑法は厳しいものが多く、報復刑もある。

グランが女達にしてきたことを考えれば、彼は拷問の末死刑になるだろう。

国王を失ったケルパはしばらく混乱するかもしれないが、むしろ膿を出せてまともな国になりそうだ。

ライアンは乱れた自分の髪にそっと触れ、幼い日のことを思い出す。


『お兄様が水色の子、私がピンクの子よ』


『可愛い人形だね、これはセシルが作ったのかい?』


使用人から編み物を習うようになり、あっという間に腕前を上げたセシルは人形まで編めるようになっていた。

まだ形は歪んでいたけれど、色違いで編んだ二つの人形でよく遊んだ。

ライアンが髪を二色に染めている理由はここからきているのだが、これだけ見た目が変わっているのにすぐバレたなと後にライアンは思い出し笑いをすることになる。
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