アルメリア海賊団航海日誌〜そして少女は船に乗る〜

歌龍吟伶

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第6章〜過去〜

第69話

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「お前が殺したのだろう!!お前が惑わせなければあの子が死ぬことなどなかった!!」


「違う!貴様の欲望のせいだ!世界の女王になるなどという幻想が、ヴィクトリアを殺した!」


「黙れええええ!!」


エリスたちレークライド軍は、動けなかった。

見たことがない女王の姿を前に、どうしていいかわからない。


「返せ、妾のヴィクトリアを!妾が腹を痛めて産んだ娘を!!」


「貴様は母などではない…今更親を名乗るな」


静かに言うヴィンの声などもはや聞こえていないのだろう、ジェニファーはエリス達へ命じる。


「此奴を殺せ!!もう生かしておく必要などない!!殺せええええ!!」


「へ、陛下…娘というのはどういうことですか…?」


命令を聞く前に尋ねたエリスの首を、ジェニファーは躊躇いなく切り落とした。

自らの手を血に染めて、狂気に支配された顔で叫ぶ。


「早く其奴を殺せ!!妾の…妾のヴィクトリア…」


血に染まった手で顔を覆うジェニファーは、その顔が血まみれになることも気にならない様子で泣き崩れる。


「ああ…なぜ…なぜお前は男だったのだ…ウィリアム…」


ヴィンの顔からは怒りが消え、ただ悲しみが浮かぶ。

彼は、女王ジェニファーの隠し子だったのだ。

妊娠自体を隠していたジェニファーは、双子を産んだ。

娘だけならばまだしも、息子まで産んでしまったことを知り錯乱。

どちらも別宅に閉じ込め、ごく一部の人間だけが知らされ育てることに。

母性などないと思われていたジェニファーだが、それでも年に一度だけ二人の様子を見にくる日があった。

誕生日にだけ訪れる母親を、ヴィン…ウィリアムとヴィクトリアは恐れていた。

彼らにとっては世話をしてくれるメイドが【おかあさま】だったから。

しかし、いつも無言で見下ろしてくる女王が怖くて「おかあさまはリリーだよ!」と言ってしまったせいで。

優しくて大好きだったリリーは殺された。

その時二人は逃げることを決意し、その後偶然知り合う事ができたアルメリア海賊団に盗んでもらったのだ。

けれど、逃げる途中でヴィクトリアは怪我を負い命を落とす。


『…ねえ、ウィリアム…お外へ出たら、いっぱい遊ぼうね…』


『うん、絶対だよ…約束だ、ヴィクトリア…!』


約束が果たされることは、無かった。

彼女は念願の外の世界を見ることなく、散ったのだ。

ヴィンはそっと胸元に手をやる。

そのにあるのは、ヴィクトリアの遺骨を粉にして入れているペンダント。

彼女はいつも、ここにいる。
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