8 / 16
第8話:王子の帰還
しおりを挟む
「それで、まだまだ若造のアンタは何しに帰ってきたんだい」
トゥリアの好みの年齢に達していないヴィンセント。
分かっているだろうと問うトゥリアに、ヴィンセントは笑顔で答える。
「誓いの一つを果たすため、ですよ」
すぐに歳を取ることはできないから、まずは力をつけて国に戻るという誓いを果たしにきたのだと語るヴィンセント。
「トゥリアさんが隣国ラースラに逃がしてくれたおかげで、国を追われた仲間達に出会うことができ、ヴァリスに戻ってくることができたのです」
ついにこの時が来たのだ、国民を道具としか思わない国王…父親を倒す時が。
仲間達は森の近くで待機しており、王都へ攻め込む準備はできている。
「戦争を始める前にどうしても会いたくて来てしまいました。顔を見れてよかったです、相変わらず美しいですね」
「そう、戦争するんだね。騒がしくなるかしら…ま、あたしは周辺の村を守るだけだけどね」
心優しいヴィンセントならば良い王になるだろうが、国王は自分たちだけ食料をしっかり確保し贅沢な暮らしをしており、軍隊も揃っているため誰も暴動を起こさずにいるのだ。
「大丈夫なのかい?」
「必ず勝ちます。人数では劣りますが、気を抜いている彼らに負けたりしない」
死ぬ覚悟で集まってくれた仲間たち、そして苦しみ続けている国民たち。
もう誰も死なせたくないのだと力強く話すヴィンセントに、迷いはなかった。
「そう…なら餞別をくれてやるよ」
トゥリアは地下室から薬をいくつか持ってくると、ヴィンセントに渡す。
「これは強力な痺れ薬だ、自分たちが吸い込まないように気をつけるんだよ」
「ありがとうございます。絶対に勝利して、また会いに来ます」
生きたい理由があるから彼は強くなったのだ。
ヴィンセントはトゥリアの手を取り、その指先にそっと口づけをし森を後にした。
「強い男にはなれたようだね」
この七年間彼がどうしていたかは知らない。
しかし見違えるように成長した姿を見れば、その努力が分かる。
ヴィンセントが勝つ事を願い、トゥリアは空を見上げた。
秋の空は澄み渡り、高い位置で雲が流れていく。
「人間ってのは、面白いね」
愚かで醜い者たちを数え切れないほど見てきたけれど、たまに面白い人間がいるから嫌いになれないのだ。
「さーて、たまには他の魔女たちと連絡とってみようかねえ」
ちょうど魔女会議の招待状が来ていたはず。
トゥリアは他の魔女と折り合いが悪いので滅多に関わらないが、所属している国の一大事ならば話くらいしても良いだろうと考えたのだ。
会議への参加表明を使い魔に託し、トゥリアは屋敷に戻る。
もしも国が滅ぶようなことがあったとしても、この森だけは守らなくては。
もう200年以上暮らしてある愛着のある森を思いながら、トゥリアは出かける支度をするのであった。
トゥリアの好みの年齢に達していないヴィンセント。
分かっているだろうと問うトゥリアに、ヴィンセントは笑顔で答える。
「誓いの一つを果たすため、ですよ」
すぐに歳を取ることはできないから、まずは力をつけて国に戻るという誓いを果たしにきたのだと語るヴィンセント。
「トゥリアさんが隣国ラースラに逃がしてくれたおかげで、国を追われた仲間達に出会うことができ、ヴァリスに戻ってくることができたのです」
ついにこの時が来たのだ、国民を道具としか思わない国王…父親を倒す時が。
仲間達は森の近くで待機しており、王都へ攻め込む準備はできている。
「戦争を始める前にどうしても会いたくて来てしまいました。顔を見れてよかったです、相変わらず美しいですね」
「そう、戦争するんだね。騒がしくなるかしら…ま、あたしは周辺の村を守るだけだけどね」
心優しいヴィンセントならば良い王になるだろうが、国王は自分たちだけ食料をしっかり確保し贅沢な暮らしをしており、軍隊も揃っているため誰も暴動を起こさずにいるのだ。
「大丈夫なのかい?」
「必ず勝ちます。人数では劣りますが、気を抜いている彼らに負けたりしない」
死ぬ覚悟で集まってくれた仲間たち、そして苦しみ続けている国民たち。
もう誰も死なせたくないのだと力強く話すヴィンセントに、迷いはなかった。
「そう…なら餞別をくれてやるよ」
トゥリアは地下室から薬をいくつか持ってくると、ヴィンセントに渡す。
「これは強力な痺れ薬だ、自分たちが吸い込まないように気をつけるんだよ」
「ありがとうございます。絶対に勝利して、また会いに来ます」
生きたい理由があるから彼は強くなったのだ。
ヴィンセントはトゥリアの手を取り、その指先にそっと口づけをし森を後にした。
「強い男にはなれたようだね」
この七年間彼がどうしていたかは知らない。
しかし見違えるように成長した姿を見れば、その努力が分かる。
ヴィンセントが勝つ事を願い、トゥリアは空を見上げた。
秋の空は澄み渡り、高い位置で雲が流れていく。
「人間ってのは、面白いね」
愚かで醜い者たちを数え切れないほど見てきたけれど、たまに面白い人間がいるから嫌いになれないのだ。
「さーて、たまには他の魔女たちと連絡とってみようかねえ」
ちょうど魔女会議の招待状が来ていたはず。
トゥリアは他の魔女と折り合いが悪いので滅多に関わらないが、所属している国の一大事ならば話くらいしても良いだろうと考えたのだ。
会議への参加表明を使い魔に託し、トゥリアは屋敷に戻る。
もしも国が滅ぶようなことがあったとしても、この森だけは守らなくては。
もう200年以上暮らしてある愛着のある森を思いながら、トゥリアは出かける支度をするのであった。
3
あなたにおすすめの小説
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
【完結/番外追加】サリシャの光 〜憧れの先へ〜
ねるねわかば
恋愛
彼女は進む。過去に囚われた者たちを残して──
大商会の娘サーシャ。
子どもの頃から家業に関わる彼女は、従妹のメリンダと共に商会の看板娘として注目を集めていた。
華々しい活躍の裏で、着実に努力を重ねて夢へと向かうサーシャ。しかし時には心ないことを言う者もいた。
そんな彼女が初めて抱いた淡い恋。
けれどその想いは、メリンダの涙と少年の軽率な一言であっさり踏みにじられてしまう。
サーシャはメリンダたちとは距離をおき、商会の仕事からも離れる。
新たな場所で任される仕事、そして新たな出会い。どこにあっても、彼女が夢を諦めることはない。
一方、光に囚われた者たちは後悔と執着を募らせていき──
夢を諦めない少女が、もがきながら光を紡いでいく軌跡。
※前作「ルースの祈り」と同じ世界観で登場人物も一部かぶりますが、単体でお読みいただけます。
※作中の仕事や制作物、小物の知識などは全てフィクションです。史実や事実に基づいていないことをご理解ください。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
【完】まさかの婚約破棄はあなたの心の声が聞こえたから
えとう蜜夏
恋愛
伯爵令嬢のマーシャはある日不思議なネックレスを手に入れた。それは相手の心が聞こえるという品で、そんなことを信じるつもりは無かった。それに相手とは家同士の婚約だけどお互いに仲も良く、上手くいっていると思っていたつもりだったのに……。よくある婚約破棄のお話です。
※他サイトに自立も掲載しております
21.5.25ホットランキング入りありがとうございました( ´ ▽ ` )ノ
Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.
ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)
十年間虐げられたお針子令嬢、冷徹侯爵に狂おしいほど愛される。
er
恋愛
十年前に両親を亡くしたセレスティーナは、後見人の叔父に財産を奪われ、物置部屋で使用人同然の扱いを受けていた。義妹ミレイユのために毎日ドレスを縫わされる日々——でも彼女には『星霜の記憶』という、物の過去と未来を視る特別な力があった。隠されていた舞踏会の招待状を見つけて決死の潜入を果たすと、冷徹で美しいヴィルフォール侯爵と運命の再会! 義妹のドレスが破れて大恥、叔父も悪事を暴かれて追放されるはめに。失われた伝説の刺繍技術を復活させたセレスティーナは宮廷筆頭職人に抜擢され、「ずっと君を探していた」と侯爵に溺愛される——
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる