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第1話

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「イルヴィンド陛下。リラフィア嬢を王妃として向かえて頂くこととなりました」


突然父を亡くし王位を継いだイルヴィンド。

慌ただしさのなかいつのまにか喪が明けたと思ったら、勝手に妻が決まったあの時から彼の落ち着かない日々は終わりを知らない。

今日も鳥のさえずりを聞きながら目を覚ます。

気温も丁度良い、のどかでさわやかな朝。

父が生きていた頃ならそう思っただろう。 

イルヴィンドが目を開けると、


「おはようございます、陛下」 


隣で寝ていた王妃が声をかけてきた。 

寝起きでも美しさを失わない彼女、リラフィアは現在21歳。


「・・・おはよう、リラフィア」 


目をそらしながら小さく返事をしたイルヴィンドは、12歳を向かえたばかり。

年の差9歳のこの二人は、結婚をして半年が経った新婚夫婦。

喪が明けてすぐに大々的な結婚パレードをし、神前で誓い合い夫婦となった。


「誰か。陛下がお目覚めです」


リラフィアが声を掛けると、控え室にいた女官たちが姿を見せる。


「おはようございます、国王陛下、王妃陛下」


女官たちは慣れた手つきでイルヴィンドとリラフィアの髪など身だしなみを整え、その間に朝食が運ばれてきた。

朝食の支度が済んだところでようやく寝台から降りる2人。

素早く寝台を整えていた女官の1人が小さく溜息をついたのを、イルヴィンドは見逃さなかった。


(うぅ…また何もしてないってバレて呆れられてる…)


そう、夫婦となって半年が経ったが夜の営みはまだなのである。

12歳になったばかりのイルヴィンドには、リラフィアに手を出すことなどできないのだ…

初夜、初めて寝台を共にした時のこと。


「ご、ごめんリラフィア…僕…」


顔を真っ赤にして俯き、半泣きのイルヴィンドを見てリラフィアは優しく微笑みながらこう言った。


「構いませんわ、陛下。ご無理なさらず…わたくしは待てますから。でも、年増だと言われる前までにはお願いしますね」


そんなこんなで半年、未だに手を出すことができない。

まだ若いどころか幼いとも言えるイルヴィンドだが、すでに世継ぎを求める声も上がっている。

他に直系の王族がいないこともあり、一刻も早い世継ぎの誕生が望まれているのだ。

だからこそ、すぐにでも産めそうな9歳も年上のリラフィアが選ばれた。

しかし問題はイルヴィンドの内向的な性格にあった。

内気で恥ずかしがり屋な彼は、王としての仕事は必死にこなしているが男としてはまだまだである。

幸いなことにリラフィアが理解を示してくれているためなんとか過ごせているが、きっと彼女も周囲から急かされて肩身が狭いだろう。
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