少年王は妖艶な妃に恋をする

歌龍吟伶

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第3話

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執務室に入ってすぐ目に飛び込んできたのは、机の上に天高く積まれた書類の山。

イルヴィンドは気が遠くなるのを必死に抑えて椅子に腰掛ける。


「きょ、今日もすごい量だね…昨日片付けたのはなんだったの…」


昨日も夜遅くまでかけて、同じくらいの量の書類に目を通して判を押したはずなのだけれど。

早くも泣きそうなイルヴィンドに、宰相ケネスが表情を変えずに答える。


「昨日処理なさったのは西方の案件です。本日は南方から届いた書状などに目を通していただきます」


父の死から一年半。

混乱の中で発覚したのは、数多あまたの不正や握り潰されてきた要望書。

イルヴィンドは即位以来ずっとその処理に追われている。


「どうして父上は気づかなかったのかな」


優秀な宰相がついているというのに、未だに片付かないトラブルの山。

純粋に疑問を感じたイルヴィンドの問いに、ケネスが眉間にしわを寄せながら答えた。


「先代陛下の御代では、先代の宰相が多くの雑務をこなしておりました。その宰相が密かに玉座を狙っていたのですから、どうしようもござきませんね」


そう、ケネスの前任だった宰相バルカン。

王の腹心として信頼されていたのに、裏では不正三昧だったのだ…王の急逝で欲を出した結果、玉座を狙っていることがバレ今は地下牢にいる。


「バルカンおじさんが裏切ってたなんて…ショックだったなあ」


イルヴィンドにとって、いつも優しく頭を撫でてくれる存在だったバルカン。

第二の父とまで慕っていたのに…父の急死に加えて、その裏切りにはかなり心を抉られた。


「元宰相バルカンにとっては、貴方は操り人形にする対象でしかなかったようですね」


追い討ちをかけてくるケネス。

イルヴィンドは涙をこらえながら書類に向かった。

バルカンの息がかかった者はまだいるはず、まだ幼く人脈のないイルヴィンドは苦戦を強いられている。

妃選びも、バルカンから遠い存在であることが重要な条件の1つだった。


(歳が近いレミリアとかだと思ってたのにな)


幼馴染である伯爵令嬢を思い浮かべる。

2つ年上のレミリアは、いつか白馬の王子様が迎えにくると信じている夢見る少女だ。

イルヴィンドにしては珍しく会話しやすい相手だが、それ故に恋愛感情はない。

しかし政略結婚になることはわかりきっていたので、てっきり彼女が選ばれるものと思っていた。

だからリラフィアを妃にと言われた時は驚いたものだ…彼女は婚約者を亡くしている。

彼女の父である北方領主ケルヴィン・ハルトルトが強く売り込んできたと聞いた。
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