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第8話:おいでませ大神殿
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金額的に大神殿の近くまでという契約だったのだが、可愛い修道女さんにサービスだよと言って大神殿まで連れてきてくれた御者の二人。
「本当にありがとうございました。お二人に神の御加護を」
「こっちこそ久しぶりに長旅ができたよ!」
「楽しかったぜ、元気でな!」
道中、リリーナが魔物を退治していたとは夢にも思っていない二人。
そして噂も知らないらしく、全く疑う様子はなかった…人の良さに感謝しながら手を振って見送り、リリーナはついに大神殿に足を踏み入れる。
「何用ですか」
大神殿の中に入れるのは関係者のみで、入り口には屈強な警備騎士が立っていた。
「ルナの村から参りました、リリーナと申します。浄化の能力者は神殿へというお達しがありましたので参りました」
のんびり徒歩移動が多かったリリーナは、呼び出された聖女候補の中でも到着が遅い方。
警備騎士は少し驚いたようだったが、確認のために神殿内に姿を消した。
そしてすぐに戻ってくる。
「…お待たせいたしました、神官長様がお待ちです。中へどうぞ」
案内され中に入ったリリーナは、白い壁と天井に銀色の燭台がズラリと並んだ美しい内装に思わず息を呑んだ。
リリーナにとって神への祈りは習慣であり、信仰心から来るわけではない。
しかしさすがは大神殿、神の気配がすると言われたら素直に信じそうな雰囲気が漂っている。
奥の部屋に通されると、そこには位の高そうな神官たちが並んでいた。
「よくぞ参られた、聖女候補の乙女よ」
「リリーナと申します」
「リリーナ、姓は?」
「拾い子でしたので、必要な時はシスター・マリーナの姓ルペスを名乗らせて頂いております」
聖女という肩書きが、魂の呼び名なら良かったのに。
幼い頃から聖書や聖女物語を読み聞かされてきたリリーナは、マリーナこそが聖女だと思っていた。
素性の知らぬ者達も疑うことなく受け入れ、自分のように親も知れぬ子供や親を失った子供達を引き取り育ててくれた。
なにより、リリーナに浄化の力があることに最初に気づきながらもそれを利用したりせず、さらには拳闘士との神託を受けた後は訓練もさせてくれて。
マリーナは母であり女神のような人物なのだ。
「リリーナよ、一つ聞くが…その、最近巷では素手でモンスターを倒す修道女が旅をしている、と聞いたのだが」
おう、神殿にまでその噂が流れていたのか。
リリーナも聞いたばかりだったので本当に自分のことなのかと思いつつ、そんな人間がそうそういるものでもないと理解していたため頷く。
「…はい、恐らくは私の事かと。私も噂を聞いたばかりで、まさか有名になっているとは思いませんでした」
「君が噂の少女だったのか…なぜモンスターを?」
そこにモンスターが居たからですとしか言いようがない。
リリーナは回答に困ってしまう。
「なぜ…それは、モンスターを倒す理由でしょうか。それとも素手で戦う理由でしょうか」
「浄化の力を持つ君が、なぜ素手で戦うのだ?」
「私が神託で示されたのが拳闘士だったからです」
神託で拳闘士。
そう聞いた神官達の間にざわめきが広がる。
つまりは神のご意志ということ…なぜ聖女になれる能力と共にそのような素質を与えたのか?
「モンスターが恐ろしくはないのか?」
リリーナは質問の意味がわからなかった。
幼い頃からモンスターとの遭遇率が高く、疫病神と呼ばれることすらあったけれど。
だからこそ出くわしたら叩きのめすのが当たり前だったのだ。
「本当にありがとうございました。お二人に神の御加護を」
「こっちこそ久しぶりに長旅ができたよ!」
「楽しかったぜ、元気でな!」
道中、リリーナが魔物を退治していたとは夢にも思っていない二人。
そして噂も知らないらしく、全く疑う様子はなかった…人の良さに感謝しながら手を振って見送り、リリーナはついに大神殿に足を踏み入れる。
「何用ですか」
大神殿の中に入れるのは関係者のみで、入り口には屈強な警備騎士が立っていた。
「ルナの村から参りました、リリーナと申します。浄化の能力者は神殿へというお達しがありましたので参りました」
のんびり徒歩移動が多かったリリーナは、呼び出された聖女候補の中でも到着が遅い方。
警備騎士は少し驚いたようだったが、確認のために神殿内に姿を消した。
そしてすぐに戻ってくる。
「…お待たせいたしました、神官長様がお待ちです。中へどうぞ」
案内され中に入ったリリーナは、白い壁と天井に銀色の燭台がズラリと並んだ美しい内装に思わず息を呑んだ。
リリーナにとって神への祈りは習慣であり、信仰心から来るわけではない。
しかしさすがは大神殿、神の気配がすると言われたら素直に信じそうな雰囲気が漂っている。
奥の部屋に通されると、そこには位の高そうな神官たちが並んでいた。
「よくぞ参られた、聖女候補の乙女よ」
「リリーナと申します」
「リリーナ、姓は?」
「拾い子でしたので、必要な時はシスター・マリーナの姓ルペスを名乗らせて頂いております」
聖女という肩書きが、魂の呼び名なら良かったのに。
幼い頃から聖書や聖女物語を読み聞かされてきたリリーナは、マリーナこそが聖女だと思っていた。
素性の知らぬ者達も疑うことなく受け入れ、自分のように親も知れぬ子供や親を失った子供達を引き取り育ててくれた。
なにより、リリーナに浄化の力があることに最初に気づきながらもそれを利用したりせず、さらには拳闘士との神託を受けた後は訓練もさせてくれて。
マリーナは母であり女神のような人物なのだ。
「リリーナよ、一つ聞くが…その、最近巷では素手でモンスターを倒す修道女が旅をしている、と聞いたのだが」
おう、神殿にまでその噂が流れていたのか。
リリーナも聞いたばかりだったので本当に自分のことなのかと思いつつ、そんな人間がそうそういるものでもないと理解していたため頷く。
「…はい、恐らくは私の事かと。私も噂を聞いたばかりで、まさか有名になっているとは思いませんでした」
「君が噂の少女だったのか…なぜモンスターを?」
そこにモンスターが居たからですとしか言いようがない。
リリーナは回答に困ってしまう。
「なぜ…それは、モンスターを倒す理由でしょうか。それとも素手で戦う理由でしょうか」
「浄化の力を持つ君が、なぜ素手で戦うのだ?」
「私が神託で示されたのが拳闘士だったからです」
神託で拳闘士。
そう聞いた神官達の間にざわめきが広がる。
つまりは神のご意志ということ…なぜ聖女になれる能力と共にそのような素質を与えたのか?
「モンスターが恐ろしくはないのか?」
リリーナは質問の意味がわからなかった。
幼い頃からモンスターとの遭遇率が高く、疫病神と呼ばれることすらあったけれど。
だからこそ出くわしたら叩きのめすのが当たり前だったのだ。
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