とある一般人女性の日常

歌龍吟伶

文字の大きさ
上 下
12 / 25

イワシ恐怖症

しおりを挟む
家族で水族館に行くと思い出す、子供の頃のトラウマ。

あれは小学校低学年の頃だっただろうか。

父と二人で水族館へ行った時のことだ。

一通り見て回り、さあ昼食をとろうとレストランに入った時に起きた事件。

メニューを開くと、いわしフェアー開催中!と書かれていた。

イワシハンバーグ、いわしのつみれ汁、イワシソフトクリーム(灰色)などなど…

展示されているイワシの群れを見てきたというのに、メニュー全てにイワシが入っているらしい。

私の父は短気な人間のため、機嫌を損ねたくなかった私は早くメニューを決める必要があった。

しかし、どれもこれもイワシ入り…当時は好きでも嫌いでもなかったが、何にでも入っていればいいというわけではない。

ふと目に入ったパンケーキにはイワシの表記がなかったため、流石にこれには入っていないのだと思い私はそれを選んだ。

そして運ばれてきたのは、灰色のパンケーキ。

そう、ソフトクリームにすら入っているのだから気づくべきだったのだ…デザート系にもイワシが練り込まれているということに。

幼かった私にそこまでの考えがあるはずもなく、ショックで固まっていると父が嫌そうな顔をした。


「…なに、食べないの?」

「…食べる」


選んだものを食べないなど許されない。

私は、見たこともない灰色のパンケーキを必死に食べた。

それ以来イワシ恐怖症となり、その名前を見聞きすると拒絶感を抱くようになってしまったのだったーーー
しおりを挟む

処理中です...