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第2話
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「う、ぐぅ……」
後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた男のくぐもった呻き声が漏れた。
背中まで伸ばした真っ直ぐな絹糸のような黒髪は乱れて汗に濡れた顔に張り付き、白い襦袢も帯を締めているから辛うじて肌を隠しているという有様だった。
裾からは程よく筋肉のついて締まった足が覗いている。
よほど縄を解こうともがいたのであろう、縛られた手首は縄で擦れて血を流していた。
鹿島はばたばたと暴れる男を引きずって勝重の前まで連れてくると無理矢理座らせ、上体がくずおれそうになるのを髪を掴んで顔を上げさせた。
「殿、明烏殿にございます」
「ほう、こいつがか」
勝重はにやつきながら、ねぶるように明烏を見つめた。
勝重の姿を認め、明烏の体が強張る。
鹿島は自分の前に明烏を座らせるとその体を後ろに引き倒し、ほとんどほどけかかっていた襦袢の帯を解くと、両の太腿の間に両手を差し入れて足を開かせようとする。
「んう、っ……、むぅ……!」
明烏は必死に力を込めて逆らうが鹿島の力の前には叶わず、じりじりと足が開いていった。
足が開ききると鹿島はすかさず内側に足を入れて閉じられないように押さえ込む。
隠すもののなくなった秘所が露わになる。
血管の浮き出るほどいきり立った陽根には芋茎がきつく巻かれて食い込んでいる。
先走りで陽根だけでなく、その下にある睾丸までしとどに濡れている。
後孔は太さ二寸もありそうな張型を根元まで深々とくわえ込み、勝手に抜けないように腰と股に縄をかけて固定されていた。
「ほら、明烏殿はこんなに大きな張型を入れられて、魔羅は随喜で白露の涙を流しております。俺の言ったことは真にございましょう?」
鹿島が問うと勝重は口の端を吊り上げて笑った。
「確かに。空言ではないようだ」
「ぐ、ぅ……っ」
明烏は何ともつかぬうめき声を上げて羞恥で顔を赤く染め、眦には涙が滲んでいた。
「どうしました明烏殿、苦しそうな声を上げて。ああ、これが刺さっているから苦しいのですか。抜いて差し上げましょう」
鹿島は首を曲げ、明烏の耳元で囁くように言う。
そして股縄を解くと張型に手を伸ばし勢いよく抜き去った。
「ん、んんんんぅっ……!」
血管まで精緻に彫られた張型がずるりと抜け、先ほど中に吐き出された鹿島の精がごぼりと溢れて明烏は達する。
しかしそれでは終わらなかった。
長い間張型を入れられて閉じきらなくなった後孔がひくつき、隙間から白い何かが覗いた。
「んぅ、ううんっ……ふっ、ぅ……んんっ!」
明烏は目を細めて喘ぎながら、後孔から卵の形をした性具を一つ、二つと吐き出した。
直腸と後孔を押し広げて通り抜ける感覚は排泄のそれに似ていて、明烏はびくびくと体を震わせて再び絶頂を迎える。
精に濡れた卵が畳に転がってぶつかり、こつりと音を立てる。
それを見て鹿島はわずかに口の端を上げ、未だ勢いを失わない明烏の陽根に手を伸ばして扱いた。くちゅくちゅと水音が響く。
「これは珍しい、明烏殿はこんなに立派な魔羅がついた男の子であるのに卵を産むのですか。はて、これは人の卵か、烏の卵か……。どちらでしょうね」
「んぅ、んん……!」
明烏は違うと嫌々をするように首を左右に振り、その拍子に溜まっていた涙が頬を伝って零れ落ちる。
鹿島は陽根を扱いていた手を離して卵を一つ拾うと、明烏の顔の前に持ってきた。
明烏は顔を背けようとしたが顎をぐいと掴まれて無理矢理正面を向かされる。
「よく見てください明烏殿、あなたの産んだ卵ですよ。こんなに大きな卵が、二つも」
「ぐ、むぅっ……!」
明烏は呻き声を上げるが鹿島は素知らぬ顔をしている。
それから飽きたというように卵から手を放してその場に落とすと、今度は明烏の尻に手を添わせた。
「偽物の魔羅では足りぬと物欲しそうにひくついている尻穴を、殿によく見てもらいなさい」
後孔を指し示すように指を尻に添えた。
勝重は丸見えになった明烏の秘所を身を乗り出してまじまじと見た。
「おお、よく見えるぞ明烏。そんなに魔羅が欲しいか」
「うぅ、ん……っ! んん…っ!」
猿轡で口を塞がれてさえいなければ、見るなと叫ぶことも、舌を噛み切って死ぬこともできたが、今の明烏にはそれさえ叶わない。
鹿島は、つ、と後孔に太い指を二本差し入れると明烏は小さく呻いた。
鹿島はわざとくちゅくちゅと音を立てるように指を抜き差しする。
「こんなにいやらしい音を立てて……。皆が聞いていますよ」
「ぐ、うぅ……っ」
「おや、指では物足りない様子。そうですね、そろそろ本物の魔羅を入れて差し上げましょう……」
言うと鹿島はつっかえにしていた足を抜き去り、明烏の背を押して前に倒した。
前につんのめる形になり尻が持ち上がる。
汗で濡れて張り付く襦袢の上から形の良い尻が見て取れた。
鹿島は膝立ちになり袴の紐を解くと、怒張した己の陽根を露わにした。
先ほど明烏に埋まっていた張型より一回り大きく、先走りがてらてらと光っている。
明烏の腰を掴み、ぐいと持ち上げて膝立ちにさせると襦袢をまくり上げ、一気に後孔を貫いた。
「んんんんっ!」
最奥まで突かれて明烏は再び達した。
鹿島はそれにも構わず腰を打ちつける。
鹿島の太い陽根は有無を言わせず中を押し広げ、腸壁を擦り上げる。
突かれる度に明烏はくぐもった声を漏らした。
「本物の魔羅ですよ。嬉しいですか。明烏殿の中はきゅうきゅうとよく締まって気持ちいいですね。名器とはこのことかと」
「ぐううっ……、ふぅっ、むぐ……っ!」
「聞くところによると、明烏殿の幼名は千代丸であったとか。千代丸、啼きなさい」
言うと鹿島は明烏の口を戒めていた猿轡に手を伸ばし解いた。
口の中にあった布が取られて、明烏は溜まっていた唾を吐き出そうとしてげほげほとむせた。
口の端から唾が伝い、顎まで垂れ落ちる。
「啼かないのですか、千代丸」
「呼ぶ、な……っ! その名は、景光様だけが……ぁああっ!」
漸く紡いだ明烏の言葉は、途中で奥を突かれて喘ぎ声に変わった。
「どうしてこのような目に遭っているかわかりますか、千代丸」
「どうして、だと……う、んっ……、あっ、は、ぁっ……!」
「弱いからです。千代丸が俺より弱かったから辱めを受けているのですよ」
「貴、様ぁ……っ!」
鹿島の言葉に明烏は怒り狂ったようにもがくも、鹿島に穿たれ、手を戒められたままではどうにもならなかった。
「ぐっ……、敗残の将を辱めるとは、鶴木は恥を知らぬか……っ!」
明烏の口から溢れた怨嗟の声に、鹿島は口をゆがめて笑った。
「悪鬼!」
「然り」
「餓鬼畜生にも劣る、下輩生想!」
「然り」
「極悪非道、衣冠禽獣の奴輩めが!」
「然り」
「天が許しても俺が許さぬ! おのれ遊佐勝重! おのれ鹿島千樫! 鶴木の国に呪いあれ!」
明烏が地獄の底から漏れ出たような呪詛を言い終えると共に、鹿島は一層深く奥を穿って精を吐いた。
明烏が体を震わせて絶頂を迎えるのと、鹿島が明烏の首を掴み、それをへし折ったのは同時だった。
力を失った明烏の体は糸が切れたように崩れ落ち、ずるりと鹿島の陽根が抜ける。
「負け犬の吠える様を見るのは何より愉快なものですね。おっと失礼、烏でしたか」
目を見開いたまま事切れている明烏の死体を見て、眉一つ動かさずに鹿島は言った。
「いった瞬間に死んだのですから、悔いもないでしょう」
見世物は終わったと鹿島は身を整え、勝重に向き直った。
「殿、薬師寺は明烏殿の亡骸を欲しがっていましたね。ここにございます」
何事もなかったような顔をして鹿島が明烏の死体を示すと、勝重は肩を震わせ、声をあげて笑った。
「鹿衛、お前という奴は……」
勝重はひとしきり笑うと、目の前で行われる蛮行にひたすら顔を伏せて耐えていた角解に声をかけた。
護国寺、鷹羽、八角、伊角の四名は最中、表情一つ変えず微動だにしなかった。
「 角解、これを薬師寺に持っていけ。高瀬には鹿衛を行かせる」
角解は悔しそうに俯いた後、意を決して顔を上げた。その顔には怒りが滲んでおり、膝の上で白くなるほど力を込めてこぶしを握っていた。
「殿! いくら武勲を立てているとはいえ、鹿島殿の行いは目に余ります! 武人にあるまじき行い、敵将を辱めて殺すなど要らぬ争いの種を撒いているのと同じ! このような振舞いを許すのですか! それを見て見ぬふりの皆様方とて同罪、鶴木に義はあらぬのですか!」
言ってから角解は四人に目をやった。
「これはこれは、角解殿は異なことを申されますな」
口を開いたのは護国寺だった。
真っ黒な小袖紬に肩衣、長い黒髪を伸ばし、前髪で右目を隠している男である。
微笑を浮かべながら角解に顔を向ける。
「我々は見て見ぬふりなどしておらん。しかと見た上で関わらぬと決めておるのじゃ。鹿島殿は鹿島大明神の化身なれば、御身の為されることも神の戯れ。嵐が過ぎ去るのを待つしかできぬのと同じ、満足されるまで待つだけじゃ」
それを受けて鷹羽が言う。
長く伸ばした薄茶の髪を首元で束ね、黄金色の瞳はその名の通りに鷹のように鋭かった。
鷹羽は角解のほうを見もしなかった。
「強きが弱きから奪うのは世の習い。命、名誉とて例外にござらん。争いの種を撒いて芽吹いたならば、我らが刈り取ればよい」
次いで八角が言った。
絹糸のような真っ白の髪を結い上げ、同じく白の小袖袴に白の肩衣姿は鶴のようだった。
「我が身は槍。義もなし悪もなし。人を刺すばかりが務めなり。人が惨めに死のうと些末事」
残った伊角は青緑の小袖袴に薄緑の肩衣姿で、桃色の髪を結い上げている。
童のするように拗ね、口を尖らせながら言う。
「角解殿が言うのは綺麗事ばかりで面白くありませぬ。人が義を重んずるのは人が義を備えていないからでありまーす。手に入らぬ月をこそ美しく思うのと同じ」
それから一転、伊角は無邪気に笑った。
「この世は地獄、生きる者は並べて鬼! 他人の苦こそ美味なる糧!」
そこでやっと伊角は角解のほうを見やり、にやにやと笑いながら言う。
「角解殿も優れた軍師であるなら覚えがあるのではないですかぁ? 敵を策に嵌め謀略で陥れたとき、何にも代えがたい悦楽を抱くはず。それによって人が沢山死んでいるというのに……」
伊角は言いながら大袈裟に泣き真似をして俯き袖で涙を拭うふりをすると、今度は背筋を伸ばして前を見据え顔からすっと表情を失くし、声を低くして冷たい声色で言った。
「槐は木に鬼と書くように、鬼がいるのですよ、義を謳う角解殿の心の裡にも。殿の為すことが気に食わぬのなら弓引くがよろしい。角解殿には他愛もなきことのはず……」
「伊角」
伊角を隣の八角が諫めると、伊角はしょぼくれながら、はーい、と返事をした。
各々が自分の考えを言い場が静まった。角解は怒りに震える自身を押さえつけるように俯いていた。
「角解」
勝重は目を細めて角解を見た。角解が顔を上げて勝重を見ると視線がかち合い、びくりと体を震わせた。
「同じことを二度言わせる気か」
角解はしばらく黙っていたが、やがて顔を俯けて頭を下げ、床に手をついて礼をした。
「……御意に」
後ろ手に縛られ、猿轡を噛まされた男のくぐもった呻き声が漏れた。
背中まで伸ばした真っ直ぐな絹糸のような黒髪は乱れて汗に濡れた顔に張り付き、白い襦袢も帯を締めているから辛うじて肌を隠しているという有様だった。
裾からは程よく筋肉のついて締まった足が覗いている。
よほど縄を解こうともがいたのであろう、縛られた手首は縄で擦れて血を流していた。
鹿島はばたばたと暴れる男を引きずって勝重の前まで連れてくると無理矢理座らせ、上体がくずおれそうになるのを髪を掴んで顔を上げさせた。
「殿、明烏殿にございます」
「ほう、こいつがか」
勝重はにやつきながら、ねぶるように明烏を見つめた。
勝重の姿を認め、明烏の体が強張る。
鹿島は自分の前に明烏を座らせるとその体を後ろに引き倒し、ほとんどほどけかかっていた襦袢の帯を解くと、両の太腿の間に両手を差し入れて足を開かせようとする。
「んう、っ……、むぅ……!」
明烏は必死に力を込めて逆らうが鹿島の力の前には叶わず、じりじりと足が開いていった。
足が開ききると鹿島はすかさず内側に足を入れて閉じられないように押さえ込む。
隠すもののなくなった秘所が露わになる。
血管の浮き出るほどいきり立った陽根には芋茎がきつく巻かれて食い込んでいる。
先走りで陽根だけでなく、その下にある睾丸までしとどに濡れている。
後孔は太さ二寸もありそうな張型を根元まで深々とくわえ込み、勝手に抜けないように腰と股に縄をかけて固定されていた。
「ほら、明烏殿はこんなに大きな張型を入れられて、魔羅は随喜で白露の涙を流しております。俺の言ったことは真にございましょう?」
鹿島が問うと勝重は口の端を吊り上げて笑った。
「確かに。空言ではないようだ」
「ぐ、ぅ……っ」
明烏は何ともつかぬうめき声を上げて羞恥で顔を赤く染め、眦には涙が滲んでいた。
「どうしました明烏殿、苦しそうな声を上げて。ああ、これが刺さっているから苦しいのですか。抜いて差し上げましょう」
鹿島は首を曲げ、明烏の耳元で囁くように言う。
そして股縄を解くと張型に手を伸ばし勢いよく抜き去った。
「ん、んんんんぅっ……!」
血管まで精緻に彫られた張型がずるりと抜け、先ほど中に吐き出された鹿島の精がごぼりと溢れて明烏は達する。
しかしそれでは終わらなかった。
長い間張型を入れられて閉じきらなくなった後孔がひくつき、隙間から白い何かが覗いた。
「んぅ、ううんっ……ふっ、ぅ……んんっ!」
明烏は目を細めて喘ぎながら、後孔から卵の形をした性具を一つ、二つと吐き出した。
直腸と後孔を押し広げて通り抜ける感覚は排泄のそれに似ていて、明烏はびくびくと体を震わせて再び絶頂を迎える。
精に濡れた卵が畳に転がってぶつかり、こつりと音を立てる。
それを見て鹿島はわずかに口の端を上げ、未だ勢いを失わない明烏の陽根に手を伸ばして扱いた。くちゅくちゅと水音が響く。
「これは珍しい、明烏殿はこんなに立派な魔羅がついた男の子であるのに卵を産むのですか。はて、これは人の卵か、烏の卵か……。どちらでしょうね」
「んぅ、んん……!」
明烏は違うと嫌々をするように首を左右に振り、その拍子に溜まっていた涙が頬を伝って零れ落ちる。
鹿島は陽根を扱いていた手を離して卵を一つ拾うと、明烏の顔の前に持ってきた。
明烏は顔を背けようとしたが顎をぐいと掴まれて無理矢理正面を向かされる。
「よく見てください明烏殿、あなたの産んだ卵ですよ。こんなに大きな卵が、二つも」
「ぐ、むぅっ……!」
明烏は呻き声を上げるが鹿島は素知らぬ顔をしている。
それから飽きたというように卵から手を放してその場に落とすと、今度は明烏の尻に手を添わせた。
「偽物の魔羅では足りぬと物欲しそうにひくついている尻穴を、殿によく見てもらいなさい」
後孔を指し示すように指を尻に添えた。
勝重は丸見えになった明烏の秘所を身を乗り出してまじまじと見た。
「おお、よく見えるぞ明烏。そんなに魔羅が欲しいか」
「うぅ、ん……っ! んん…っ!」
猿轡で口を塞がれてさえいなければ、見るなと叫ぶことも、舌を噛み切って死ぬこともできたが、今の明烏にはそれさえ叶わない。
鹿島は、つ、と後孔に太い指を二本差し入れると明烏は小さく呻いた。
鹿島はわざとくちゅくちゅと音を立てるように指を抜き差しする。
「こんなにいやらしい音を立てて……。皆が聞いていますよ」
「ぐ、うぅ……っ」
「おや、指では物足りない様子。そうですね、そろそろ本物の魔羅を入れて差し上げましょう……」
言うと鹿島はつっかえにしていた足を抜き去り、明烏の背を押して前に倒した。
前につんのめる形になり尻が持ち上がる。
汗で濡れて張り付く襦袢の上から形の良い尻が見て取れた。
鹿島は膝立ちになり袴の紐を解くと、怒張した己の陽根を露わにした。
先ほど明烏に埋まっていた張型より一回り大きく、先走りがてらてらと光っている。
明烏の腰を掴み、ぐいと持ち上げて膝立ちにさせると襦袢をまくり上げ、一気に後孔を貫いた。
「んんんんっ!」
最奥まで突かれて明烏は再び達した。
鹿島はそれにも構わず腰を打ちつける。
鹿島の太い陽根は有無を言わせず中を押し広げ、腸壁を擦り上げる。
突かれる度に明烏はくぐもった声を漏らした。
「本物の魔羅ですよ。嬉しいですか。明烏殿の中はきゅうきゅうとよく締まって気持ちいいですね。名器とはこのことかと」
「ぐううっ……、ふぅっ、むぐ……っ!」
「聞くところによると、明烏殿の幼名は千代丸であったとか。千代丸、啼きなさい」
言うと鹿島は明烏の口を戒めていた猿轡に手を伸ばし解いた。
口の中にあった布が取られて、明烏は溜まっていた唾を吐き出そうとしてげほげほとむせた。
口の端から唾が伝い、顎まで垂れ落ちる。
「啼かないのですか、千代丸」
「呼ぶ、な……っ! その名は、景光様だけが……ぁああっ!」
漸く紡いだ明烏の言葉は、途中で奥を突かれて喘ぎ声に変わった。
「どうしてこのような目に遭っているかわかりますか、千代丸」
「どうして、だと……う、んっ……、あっ、は、ぁっ……!」
「弱いからです。千代丸が俺より弱かったから辱めを受けているのですよ」
「貴、様ぁ……っ!」
鹿島の言葉に明烏は怒り狂ったようにもがくも、鹿島に穿たれ、手を戒められたままではどうにもならなかった。
「ぐっ……、敗残の将を辱めるとは、鶴木は恥を知らぬか……っ!」
明烏の口から溢れた怨嗟の声に、鹿島は口をゆがめて笑った。
「悪鬼!」
「然り」
「餓鬼畜生にも劣る、下輩生想!」
「然り」
「極悪非道、衣冠禽獣の奴輩めが!」
「然り」
「天が許しても俺が許さぬ! おのれ遊佐勝重! おのれ鹿島千樫! 鶴木の国に呪いあれ!」
明烏が地獄の底から漏れ出たような呪詛を言い終えると共に、鹿島は一層深く奥を穿って精を吐いた。
明烏が体を震わせて絶頂を迎えるのと、鹿島が明烏の首を掴み、それをへし折ったのは同時だった。
力を失った明烏の体は糸が切れたように崩れ落ち、ずるりと鹿島の陽根が抜ける。
「負け犬の吠える様を見るのは何より愉快なものですね。おっと失礼、烏でしたか」
目を見開いたまま事切れている明烏の死体を見て、眉一つ動かさずに鹿島は言った。
「いった瞬間に死んだのですから、悔いもないでしょう」
見世物は終わったと鹿島は身を整え、勝重に向き直った。
「殿、薬師寺は明烏殿の亡骸を欲しがっていましたね。ここにございます」
何事もなかったような顔をして鹿島が明烏の死体を示すと、勝重は肩を震わせ、声をあげて笑った。
「鹿衛、お前という奴は……」
勝重はひとしきり笑うと、目の前で行われる蛮行にひたすら顔を伏せて耐えていた角解に声をかけた。
護国寺、鷹羽、八角、伊角の四名は最中、表情一つ変えず微動だにしなかった。
「 角解、これを薬師寺に持っていけ。高瀬には鹿衛を行かせる」
角解は悔しそうに俯いた後、意を決して顔を上げた。その顔には怒りが滲んでおり、膝の上で白くなるほど力を込めてこぶしを握っていた。
「殿! いくら武勲を立てているとはいえ、鹿島殿の行いは目に余ります! 武人にあるまじき行い、敵将を辱めて殺すなど要らぬ争いの種を撒いているのと同じ! このような振舞いを許すのですか! それを見て見ぬふりの皆様方とて同罪、鶴木に義はあらぬのですか!」
言ってから角解は四人に目をやった。
「これはこれは、角解殿は異なことを申されますな」
口を開いたのは護国寺だった。
真っ黒な小袖紬に肩衣、長い黒髪を伸ばし、前髪で右目を隠している男である。
微笑を浮かべながら角解に顔を向ける。
「我々は見て見ぬふりなどしておらん。しかと見た上で関わらぬと決めておるのじゃ。鹿島殿は鹿島大明神の化身なれば、御身の為されることも神の戯れ。嵐が過ぎ去るのを待つしかできぬのと同じ、満足されるまで待つだけじゃ」
それを受けて鷹羽が言う。
長く伸ばした薄茶の髪を首元で束ね、黄金色の瞳はその名の通りに鷹のように鋭かった。
鷹羽は角解のほうを見もしなかった。
「強きが弱きから奪うのは世の習い。命、名誉とて例外にござらん。争いの種を撒いて芽吹いたならば、我らが刈り取ればよい」
次いで八角が言った。
絹糸のような真っ白の髪を結い上げ、同じく白の小袖袴に白の肩衣姿は鶴のようだった。
「我が身は槍。義もなし悪もなし。人を刺すばかりが務めなり。人が惨めに死のうと些末事」
残った伊角は青緑の小袖袴に薄緑の肩衣姿で、桃色の髪を結い上げている。
童のするように拗ね、口を尖らせながら言う。
「角解殿が言うのは綺麗事ばかりで面白くありませぬ。人が義を重んずるのは人が義を備えていないからでありまーす。手に入らぬ月をこそ美しく思うのと同じ」
それから一転、伊角は無邪気に笑った。
「この世は地獄、生きる者は並べて鬼! 他人の苦こそ美味なる糧!」
そこでやっと伊角は角解のほうを見やり、にやにやと笑いながら言う。
「角解殿も優れた軍師であるなら覚えがあるのではないですかぁ? 敵を策に嵌め謀略で陥れたとき、何にも代えがたい悦楽を抱くはず。それによって人が沢山死んでいるというのに……」
伊角は言いながら大袈裟に泣き真似をして俯き袖で涙を拭うふりをすると、今度は背筋を伸ばして前を見据え顔からすっと表情を失くし、声を低くして冷たい声色で言った。
「槐は木に鬼と書くように、鬼がいるのですよ、義を謳う角解殿の心の裡にも。殿の為すことが気に食わぬのなら弓引くがよろしい。角解殿には他愛もなきことのはず……」
「伊角」
伊角を隣の八角が諫めると、伊角はしょぼくれながら、はーい、と返事をした。
各々が自分の考えを言い場が静まった。角解は怒りに震える自身を押さえつけるように俯いていた。
「角解」
勝重は目を細めて角解を見た。角解が顔を上げて勝重を見ると視線がかち合い、びくりと体を震わせた。
「同じことを二度言わせる気か」
角解はしばらく黙っていたが、やがて顔を俯けて頭を下げ、床に手をついて礼をした。
「……御意に」
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