お父さん

さたひろ

文字の大きさ
1 / 1

お父さん

しおりを挟む
小さい頃から嫌いだった父親。
友達に自分の父親だとバレるのが嫌だった。
いつか殺してやろうとも思っていた。
そんな父親は、自分の友達からは評価が高かった。
いつも父親の子供と呼ばれるのが嫌だった。
酒を飲んでは暴れる。私、母親を叩く。
それでも世間での評価は高く、逆に私は評価が低かった。
父親のように振舞ってもみたが何も変わらなかった。
勉強をして良い高校に入っても比較された。父親よりも良い高校なのに世間での評価は変わらなかった。
私は勉強する事をやめた。
学歴があっても父親には勝てない。
不良になっても父親には勝てない。
父親のようにいつか自分もなると思っていたが、どうやら自分は父親よりも劣っているようだ。
親父と呼びたかったが、お父さんと呼んでしまう。
嫌いな父親よりも劣っている自分は、いったいなんなのだろうか。
大人になって父親から定期的にLINEがくる。
またどうせいつもの「強制」だろう。
働くところも、結婚も、住む場所も全部「強制」される。
些細な抵抗でLINEの返事は「了解」か「無視」。
自分からメッセージを送る事はなかった。
ある日、父親と同じことをする事になった。
彼らの評価もきっとまた今までと同じなのだろう。
それでも自分は「父親の強制」ではないと思いたかった。
これは自分の意思なのだと思いたかった。
最後のチャンスなのだとも思った。
でも、まわりから比較されるのが怖くなって、自分の意思ではないフリをした。私は臆病者だ。
そんな私についてくる人間はいないのだろうと思っていたが、私にも協力者が現れた。
じきに父親と比較されなくなった。
母親からは「あなたの協力者を探しなさい」と言われた。
なんだろう、この喪失感は・・・
私は計算が苦手だ。
営業もうまくない。
人徳もないだろう。
情熱も少ない。
すべて父親には勝っていない。
それでも、なんでみんな父親を忘れるのだろうか。
父親へ定期的にメッセージを送ることにした。
あんなに嫌いだった父親なのに、なぜメッセージを送るのだろうか。もう返事は返ってこないのに。
強制がなくなったのに、なぜ嬉しくないのだろう。
自分なりにたくさんの決断をしてみた。
父親ならこうするだろうな?と考えながら自分なりに決断をしてみた。
正しいのか分からない。批判もあるだろう。私から離れる人もいるだろう。
でも、これが最後のチャンスなのだ。
私は自分で決断する。
それが親父の最後の「強制」なのだろう。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...