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41.女神様のお節料理を味見するだけの簡単なお仕事
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去年も同じようなことを考えていた気もするが、クリスマスが終わったと思ったら、すぐに年末、年の瀬がやってきた。
今年は体感的にも暖かくて、まだ雪が降るようなこともない。天気予報通り暖冬なのだろうと思う。
そして、我が家の女神様はというと、今年も去年に引き続きお節料理を作っていた。ただ、去年と違うところと言えば、俺も台所に立っているという事だ。
お節料理を作る手伝いを俺がしている。浩介達がその言葉を聞いても、絶対に信じないだろう。一年前までの俺は、本当に何にもできなかった。穂香は全部するからいいとは言ってくれていたが、完全に甘えてしまうのもどうかと思っていた。
俺自身が何もできないままというのも嫌だったので、少しずつではあるが手伝いをしてきた。まだ、一人で料理を作れるところまではいってないが、補助的に言われたことくらいはできるようになったと思っている。
「はい、あ~ん」
台所に立つ俺の口に、穂香の持つ箸でつままれた黒豆が迫っていた。それに合わせて、俺も口を開ける。口の中に放り込まれた黒豆は、ふっくらと仕上がっていて噛まなくても潰せそうなくらい軟らかく煮られている。俺が軟らかめがいいと言ったので、それに合わせてくれたようだ。味も俺好みの甘さになっていて、文句のつけようがない。
「美味しい?」
「ああ、最高に美味い。一鍋分くらい食べられそうだ」
「良かった~……でも、全部食べたらだ~め。じゃあ、次はこっちね。はい、あ~ん」
次は栗きんとんが俺の口に運ばれてくる。
そう、今回俺に与えられた仕事は、お節料理を食べさせてもらって味見をするという簡単なお仕事だ。簡単というのも、味の基準は俺好みだったらいいというものだから。
このためなのかはわからないが、これらの料理は時々食卓に並んでいた。毎回ちょっとずつ味付けが違っていて、感想を聞かれたりしていた。今更ながら、あれらはこのためだったんだなと思う。
元々美味い穂香の料理を、そこから更に俺好みにしてくれているという、俺だけに許された最高の贅沢だろう。
ただし、極端に塩辛くしたりなど、栄養バランスを損なうものについては容赦なく却下される。その辺りもしっかり考えていてくれるのは非常にありがたい。
「美味しい?」
「ああ、この甘さがちょうどいい」
「えへへ……私もこれくらいが好きかな~」
俺と穂香は好みの味付けが結構似ている。どちらかと言うと薄目の味付けが好きだし、外食しても同じような感想になる。元々味付けについて意見が食い違うことも少ないのだ。
「なぁ、これって、俺は食べさせてもらわないといけないのか?」
当たり前だが、味見をするだけなら、わざわざ食べさせてもらう必要はないのだ。今日になって箸が持てなくなったとか、手を怪我したとかそういうことは何もない。俺は至って健康体である。
「えっ?もちろんそんなことはないけど、私がしたいの。それとも……ユウ君は私に食べさせてもらうのは嫌なの?」
そう言って、上目遣いで訴えてきた。ちょっと待ってくれ。それは反則だ。どれだけ控えめに言っても可愛いのだ。惚れた弱味もある。俺がそんな風にされて嫌と言えるわけがない。
「そんなことはないが、こういうのはちょっと恥ずかしいからな」
「じゃあいいじゃない。私達しかいないんだし。次はこれかな……はい、あ~ん。大きいから半分だけくわえてね」
有無を言わさぬように次は伊達巻を差し出された。言われた通り、一口で食べるにはちょっと大きい。
半分だけくわえて、残りは引き上げてもらえると思っていたのだが、そのまま穂香が顔を近付けてきた。そして、伊達巻を俺の唇ごとパクっと食べていった。
「えへへ……こうやって食べると、更に甘いかな。美味しい?」
「ああ、美味い。ただ、追加の味付けが甘過ぎるかもしれん」
「そう?そっちの甘い方ならたくさんおかわりしてくれていいよ?」
「そうか?それなら遠慮なく……」
というわけで、穂香の言う甘い方をおかわりすることにした。たくさんおかわりしていいそうなので、たくさんいただくとしよう。おかわり中の穂香は、目を閉じていて少し頬に赤みが差している。非常に美味しそうなトッピングが追加されてなによりだ。
「はぁ……はぁ……ユウ君、一口でおかわりしすぎ。そんなに一気に食べなくても、なくなったりしないのに……もう……食いしん坊なんだから……」
「いや、ちょっと美味すぎてつい……」
ちょっと呼吸が乱れたまま、頬をぷくっと膨らませて抗議してくる。だが穂香は、それが俺にとってはご褒美だということに気付いていない。可愛いからな。
その時、ちょうどいい位置に頭があったから、優しく撫でてみることにした。相変わらず綺麗な髪だ。長いのに全く引っ掛からないし、フワッといい匂いがする。
「あ、それで誤魔化そうとしてるでしょ?」
「そ、そんなことはない。やめた方がいいか?」
「ダメ……それは続けて……やめたら甘さが減るから」
そんなことはないだろと思いながらも、こうやって甘えてくる穂香に対して甘い俺がいるのも事実だ。
「じゃあ、このままで甘いのをおかわりしてもいいか?」
「いいけど……今度は少しずつ味わってね?」
「ああ、わかったよ」
こんなことを繰り返しながら、俺のお節料理を食べさせてもらって味見をする、という簡単なお仕事は無事終わった。
結果的にお節料理を作る方の手伝いは何もしていない。色々と美味しく食べただけだった。
今年は体感的にも暖かくて、まだ雪が降るようなこともない。天気予報通り暖冬なのだろうと思う。
そして、我が家の女神様はというと、今年も去年に引き続きお節料理を作っていた。ただ、去年と違うところと言えば、俺も台所に立っているという事だ。
お節料理を作る手伝いを俺がしている。浩介達がその言葉を聞いても、絶対に信じないだろう。一年前までの俺は、本当に何にもできなかった。穂香は全部するからいいとは言ってくれていたが、完全に甘えてしまうのもどうかと思っていた。
俺自身が何もできないままというのも嫌だったので、少しずつではあるが手伝いをしてきた。まだ、一人で料理を作れるところまではいってないが、補助的に言われたことくらいはできるようになったと思っている。
「はい、あ~ん」
台所に立つ俺の口に、穂香の持つ箸でつままれた黒豆が迫っていた。それに合わせて、俺も口を開ける。口の中に放り込まれた黒豆は、ふっくらと仕上がっていて噛まなくても潰せそうなくらい軟らかく煮られている。俺が軟らかめがいいと言ったので、それに合わせてくれたようだ。味も俺好みの甘さになっていて、文句のつけようがない。
「美味しい?」
「ああ、最高に美味い。一鍋分くらい食べられそうだ」
「良かった~……でも、全部食べたらだ~め。じゃあ、次はこっちね。はい、あ~ん」
次は栗きんとんが俺の口に運ばれてくる。
そう、今回俺に与えられた仕事は、お節料理を食べさせてもらって味見をするという簡単なお仕事だ。簡単というのも、味の基準は俺好みだったらいいというものだから。
このためなのかはわからないが、これらの料理は時々食卓に並んでいた。毎回ちょっとずつ味付けが違っていて、感想を聞かれたりしていた。今更ながら、あれらはこのためだったんだなと思う。
元々美味い穂香の料理を、そこから更に俺好みにしてくれているという、俺だけに許された最高の贅沢だろう。
ただし、極端に塩辛くしたりなど、栄養バランスを損なうものについては容赦なく却下される。その辺りもしっかり考えていてくれるのは非常にありがたい。
「美味しい?」
「ああ、この甘さがちょうどいい」
「えへへ……私もこれくらいが好きかな~」
俺と穂香は好みの味付けが結構似ている。どちらかと言うと薄目の味付けが好きだし、外食しても同じような感想になる。元々味付けについて意見が食い違うことも少ないのだ。
「なぁ、これって、俺は食べさせてもらわないといけないのか?」
当たり前だが、味見をするだけなら、わざわざ食べさせてもらう必要はないのだ。今日になって箸が持てなくなったとか、手を怪我したとかそういうことは何もない。俺は至って健康体である。
「えっ?もちろんそんなことはないけど、私がしたいの。それとも……ユウ君は私に食べさせてもらうのは嫌なの?」
そう言って、上目遣いで訴えてきた。ちょっと待ってくれ。それは反則だ。どれだけ控えめに言っても可愛いのだ。惚れた弱味もある。俺がそんな風にされて嫌と言えるわけがない。
「そんなことはないが、こういうのはちょっと恥ずかしいからな」
「じゃあいいじゃない。私達しかいないんだし。次はこれかな……はい、あ~ん。大きいから半分だけくわえてね」
有無を言わさぬように次は伊達巻を差し出された。言われた通り、一口で食べるにはちょっと大きい。
半分だけくわえて、残りは引き上げてもらえると思っていたのだが、そのまま穂香が顔を近付けてきた。そして、伊達巻を俺の唇ごとパクっと食べていった。
「えへへ……こうやって食べると、更に甘いかな。美味しい?」
「ああ、美味い。ただ、追加の味付けが甘過ぎるかもしれん」
「そう?そっちの甘い方ならたくさんおかわりしてくれていいよ?」
「そうか?それなら遠慮なく……」
というわけで、穂香の言う甘い方をおかわりすることにした。たくさんおかわりしていいそうなので、たくさんいただくとしよう。おかわり中の穂香は、目を閉じていて少し頬に赤みが差している。非常に美味しそうなトッピングが追加されてなによりだ。
「はぁ……はぁ……ユウ君、一口でおかわりしすぎ。そんなに一気に食べなくても、なくなったりしないのに……もう……食いしん坊なんだから……」
「いや、ちょっと美味すぎてつい……」
ちょっと呼吸が乱れたまま、頬をぷくっと膨らませて抗議してくる。だが穂香は、それが俺にとってはご褒美だということに気付いていない。可愛いからな。
その時、ちょうどいい位置に頭があったから、優しく撫でてみることにした。相変わらず綺麗な髪だ。長いのに全く引っ掛からないし、フワッといい匂いがする。
「あ、それで誤魔化そうとしてるでしょ?」
「そ、そんなことはない。やめた方がいいか?」
「ダメ……それは続けて……やめたら甘さが減るから」
そんなことはないだろと思いながらも、こうやって甘えてくる穂香に対して甘い俺がいるのも事実だ。
「じゃあ、このままで甘いのをおかわりしてもいいか?」
「いいけど……今度は少しずつ味わってね?」
「ああ、わかったよ」
こんなことを繰り返しながら、俺のお節料理を食べさせてもらって味見をする、という簡単なお仕事は無事終わった。
結果的にお節料理を作る方の手伝いは何もしていない。色々と美味しく食べただけだった。
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