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第三十四話
しおりを挟むリモート飲み会は十二時を過ぎても続いた。
いつ終わったのか爽次郎は覚えていない。しかし、気づいたら窓の外が白じむ朝だった。小さくチュンチュンと鳥が鳴く声も聞こえる。
「真咲さんは……」
隣をみると少し離れた場所に布団にグルグルにくるまっている真咲がいた。
健やかに寝息を立てているようで、何もかぶっていなかった爽次郎とは対照的だ。
スマートフォンで時間を見ると、まだ七時前。起こすには早い。爽次郎は先に朝風呂に行くことにした。
二時間後。
「どうして起こしてくれなかったの。わたしもお風呂行きたかったのにさ」
箸を動かしながら真咲はそう愚痴をこぼす。
真咲が起床したのは既に九時前でチェックアウトの時間を考えると、真咲が風呂に行く時間はなかった。
「いや、気持ちよく寝ているようだったから。はは」
爽次郎はみそ汁をすすりながらから笑いをした。二人は旅館の朝食会場で焼き鮭やご飯、焼きのりなどの充実した朝食を頂いている。
結局、カナデがスマートフォンの向こうにいるとはいえ、同じ部屋で一晩過ごしても何も起きなかった。
真咲さん、やっぱり僕のことを男として見ていないんだな。なんのためらいもなく同じ部屋で過ごそうとするんだから。
まぁ、イケメンではないからと、爽次郎は納得した。
大分、酒を飲んでしまったが、ちゃんとカナデが言ったことは覚えている。
何となく分かっていたが、自分は真咲の眼中にないらしい。別に編集者と漫画家と言う関係なのだから、それで全く構わない。
しかし、何となく心に置かれた漬物石がゴロゴロと心の居心地悪くさせる。
爽次郎は無理やり笑顔を作って真咲に話しかけた。
「それで、今日はどこに行きましょうか」
新幹線で東京に帰るのは夕方だ。それまでの時間何箇所か見て回る時間は十分にあった。
「今日はお土産を中心に見て回りましょう。あ。でも、伏見稲荷には行ってみたいかな」
「伏見稲荷? ああ。あの鳥居がたくさん並んでいる神社ですね」
有名なところだ。漫画の資料としても押さえておきたいところでもある。
「なら、最初に行きましょう」
二人は朝食を平らげると伏見稲荷大社に向かうことにした。
電車で稲荷駅まで行き降りると、すぐの所に入り口があった。
「伏見稲荷大社。お稲荷様って商売繫盛、五穀豊穣の神様なんだって」
鳥居の前で真咲がスマートフォンで伏見稲荷大社の情報を調べている。
「いいですね。商売繫盛! ヒット作が出るようにお願いしておかないと」
「なんだか、がめつい」
真咲のジトッとした呆れたような目線が爽次郎を刺す。
「いや、僕一人のことではないですからね」
ヒット作が一つでることでもちろん編集部は喜ぶし、その分新人にもチャンスが回って来る。挑戦的な作品を作ることが出来るのだ。
大きな鳥居をくぐり、広々とした参道を二人で並んで歩く。
進んでいくと楼門があり狐の像が狛犬のように置かれていた。真咲はパシャパシャとカメラのシャッターを切る。
「やっぱり狐が眷属と言われているだけあって、たくさん置かれていますね。入り口のところにもありましたし」
「え! そうなの!? なんで言わないのよ!」
どうやら真咲は気づいていなかった様子だ。
「あ。すみません。でも、また帰るときに写真は取れますよ」
また入り口の方へ戻って行きそうな真咲を爽次郎は慌てて止める爽次郎。
「それより、千本鳥居が目的なんでしょう。本殿にお参りしたら、行けるみたいですよ」
「ふーん、お参りが先なんだ」
そこは爽次郎も初めて知った。てっきり鳥居をたくさん通らないとお参りは出来ないのかと思っていた。
本殿に二人で手を合わせて、案内板に従って歩く。
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