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第四章 学園祭編
第十六話 答え合わせ
しおりを挟む予定通り午後五時になると閉会式が始まった。学園長の挨拶があり、そのあと賞の発表がある。
「スポンサー賞は園芸部と野球部合同のアジアン屋台フェスタです!」
わっと体育館が沸く。
小内先輩と東野先輩が舞台に上がり、二人で目録を授与される。二人で振り返ると、一斉に拍手が鳴った。もちろん美味しい料理に大満足で、みんなが祝福しているのだ。
他にもユーモア賞やカルチャー賞の授与がある。残念ながら僕らトレジャーハンター部は受賞を逃した。
でも、みんな満足そうな顔をしている。
「賞は来年に持ち越しかな」
「そのときこそ、トレジャーハンター部が本領発揮する」
本領を発揮できるかどうかは置いておいて、確かに模擬店での受賞より何かトレジャーハンター部らしい謎かけや宝探しの企画で受賞した方が一目置かれるというものだろう。
「続きまして、今回の学園祭の特別企画に移りたいと思います」
体育館内がざわつく。特別企画というと、有名人たちの仮装クイズの答え合わせだろう。
さらに出て来た人物にわっと沸く。
「みなさん、お待たせしました! お待ちかねの答え合わせです! 司会はもちろん、曲がったこと嫌いなユーチューバーこと、僕チャーリン! 答えはもちろん警察官でした!」
警察官の帽子を脱いで、恭しく頭を下げるチャーリン。
大きな拍手がなる。チャーリンは僕たちのカフェだけでなく、学園のいたるところに現れては盛り上げていたそうだ。
「続きましては、こちら現在成長中のマルチタレント西尾涼!」
キャーッと完成が上がる。そして、僕はその姿に驚いてしまった。
「みなさん、正解できたかな。僕、西尾涼の仮装は吸血鬼でした!」
マントを翻してその場でターン、極めつけにウインクをして見せた。顔が良く見えるように前髪を後ろになでつけてセットしている。
お宝カフェで僕たちの展示を見つめていた吸血鬼のあの人に間違いない。
「そっかぁ。現在成長中、つまり何でも吸収する吸血鬼って意味だったのかぁ」
「あ、僕正解だ」
僕の横でちゃっかりピースサインを作る水上くん。さすがに二人吸血鬼ということはないだろうから、もう二人不正解が僕は確定している。
「続きまして、変幻自在のカメレオン女優宮島晴真!」
出て来たの人を見て、可愛いとざわめく声がする。確かに可愛かった。パンダのきぐるみを着たのだから。顔が出ているパジャマのタイプのきぐるみだけど、あれ?とつい思ってしまう。宮島晴真さんがマイクを持って話す。
「本当はこういったきぐるみではなくて、ちゃんと顔の隠れるきぐるみを何着か着ていました。だましたみたいでごめんなさい。騒ぎになるといけないと言われてしまって」
それでは分からないじゃないかという不満の声が出る。
でも、僕らトレジャーハンター部は顔を見合わせていた。
「まさか、違うよね。あのリスとか」
「はは、意外とああいう演技かもしれないよ」
津川先輩がそういうけど、リスとパンダと河童は全部同一人物だと思う。河童は演技をしているようには見えなかった。
「今の理事長は大学の演劇サークルの先輩です。招待されて今日は相談も出来たし、軽い運動も出来ました。とても充実した一日だったと思います」
キラキラした笑顔でいうけれど、この内容だったら河童のきぐるみの人確定じゃないか。……やっぱり、芸能界って大変なんだな。
「さて、最後は幻想世界の歌姫メロー!」
チャーリンがそう叫ぶと、体育館内が薄暗くなる。そして、音楽が鳴り始めた。
「メローの曲だ!」「えっ、じゃあ本人登場だけじゃなくて、生歌披露!?」
舞台上からまぶしい光が発せられる。
「うしろだ!」
振り返ると、後ろの二階の部分には白い幕が張ってあり、そこには女性の影が映し出されていた。
「やっぱり、アリスの仮装だ」
大きなリボンを付けたアリスの仮装は、間違いなく今日行動を共にしたアリスのお姉さんのものだった。
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