声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

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ノーム編

第五十六話 土VS火

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 妖精の樹の前には、あの美丈夫のノーム王が王座に座っていた。王座は妖精の樹をくりぬいて、黄金の椅子が置かれている。とても痛めつけられていることが、それだけで分かった。可哀想で見ていられない。

 そばには逃げ込んできた宝石の精霊の王が控えていた。サラマンダーが唸るように、声を掛ける。



「ノーム、お主。何をやっておる」

「「えっ!?」」



 エルメラとわたしは驚いて、サラマンダーとノーム王の顔を見比べた。



「ノーム? あの人が? 小人のおじいさんじゃないの?」

「ノームを語る精霊使いだって話だけれど」



 どう見てもノームには見えなかった。サラマンダーはちゃんと伝承通り羽の生えた竜のような姿なのに。サラマンダーは男を睨んだまま語る。



「吾輩には分かる。奴の気配はかつて共にこの世界に生まれたノームであると」

「ふふふ。その通りだ。サラマンダー」

「しゃべった!」



 これまで話そうとしなかったノーム王がしゃべった。だけど、見た目にマッチしていない。少し甲高くしゃがれた声だ。声だけは小人のおじいさんの方がぴったりだろう。



「その姿。もしや、妖精の樹から養分を奪い取って作り出したのか」

「さてな。だが、美しいだろう」



 ノーム王は髪をかき上げた。確かに髪もキラキラでサラサラだ。ノーム王は大きく目を見開いて、主張する。



「しかも見たか、サラマンダーよ! この町の美しさを! 美しい私が君臨するにふさわしい町、そして城! 人々はわたしを崇め、ひれ伏す! 全てが完璧である! その上にこの世に美しきわたしが存在すること、この上ない喜びであろう!」

「「あはははははッ!」」



 わたしとエルメラは笑う所じゃないのに、思いっきりお腹を抱えて笑いだしてしまった。声と姿が一致しなさすぎる。まるでふざけて別の役を演じて見せる声優のお遊びのようだ。

 人の声を笑うのは声優にあるまじき行為だけど、どうしても我慢できない。おじいさんの声なのに、すっごいナルシスト発言するからだ。



「笑うでない!」



 ノーム王が岩を天井から落としてきた。



「わわわ!」



 サラマンダーが避けてくれるから平気だけれど、やっぱりあのノーム王はノームなんだ。精霊の力を使ったようには見えなかったから、精霊自身。やれやれといった雰囲気でサラマンダーが口を開く。



「まあ、ユメノたちが笑うのも仕方なかろう。ノームよ。どうしたのだ。以前のお主はもっと主張のない穏やかな性格の持ち主だったはずである」



 確かに小人のおじいさんなら、人々をひれ伏させて喜んだりしなさそう。ノームは王座から立ち上がって、こちらに笑みを浮かべながら歩いてくる。



「サラマンダーよ。わたしは気づいたのだ。わたしには力がある。土の精霊だからとなめられていたが、本来ならば恐れられる存在なのだ。花の精霊も宝石の精霊もわたしの眷属。大地のほぼ全てを手に入れる権利がある! 彼らも美しきわたしに支配される。これ以上の喜びがあるだろうか」



 一言で言うと強欲だ。わたしは強欲なノームに問う。



「だから、妖精の樹の命も自分のもの?」

「その通りだ!」



 ノームは悪びれるでもなく、すぐさま言い切った。静かな怒りが湧き上がってくる。真っ直ぐにノームを見据えて言う。



「サラマンダー、焼いてしまおう」

「奇遇だな。吾輩も同じことを考えておった」



 とはいえ、相手はサラマンダーと同じく自然界の四大精霊の王だ。宝石の精霊の王だってそばにいる。サラマンダーが戦っても、簡単に勝てるとは思えない。



「ホムラ! 出てきて!」



 わたしはホムラを呼び出した。ミラーもいるから、今だけ解放された精霊が二体使える。



「怪我は大丈夫であるか、ユメノ。ところで、焼くのは良いが妖精の樹をどうにかしなければならぬ」

「……あの。黒い花だね」



 妖精の樹から生命力を奪っているのは、どう見ても取り巻いているあの黒い花だ。



「あれを焼かねば、解放されないだろう。吾輩がノームと宝石のは引き付ける。その間に、あの花を焼くのだ。ユメノの炎ならば可能であろう」

「うん」



 わたしはしっかり頷いた。妖精の樹を傷つけずに花だけを焼く。ステラさんのときと一緒だ。きっと出来る。



「ホムラ! ミラー!」

「きゅる!」「きゅる!」

「行くよ!」



 わたしはサラマンダーの背から大きく飛び出した。あの青い炎はすぐ近くに行かないとコントロールできない。わたしは妖精の樹のすぐ近くへ行く必要があった。



「近づかせはしない」



 真っ直ぐ妖精の樹へ向かうので察したのだろう。宝石の精霊の王が壁を宝石で作る。ただ城の壁のような、ぶ厚い壁ではない。



「ホムラ! 吹き飛ばして!」

「きゅるう!」



 ホムラが火の玉を勢いよく飛ばす。すると、急ごしらえだった宝石の壁はガラガラと崩れた。しかし、崩れた宝石がわたしの方へと向かってくる。



「ミラー! 守って!」

「きゅるる!」



 ミラーが花びらの盾を作ってくれた。そのまま、守られつつ前へと突進する。



「させはしない」



 宝石の精霊の王が再びわたしの邪魔をしようとしたときだ。



「わ!」「ぐっ」



 わたしと宝石の精霊の王は同時に、突如吹き荒れた突風に吹き飛ばされた。乱れる髪を抑えながら、叫ぶ。



「一体何!?」

「ユメノ! 隠れないと!」



 エルメラが髪を引っ張るので、崩れた岩の影に隠れた。でも、ふとその岩に疑問が浮かぶ。



「あれ? なんで城の中に岩なんてあるの?」



 その理由はすぐに分かる。



「サラマンダーよ。わたしは決して弱くはないぞ」



 声の方を見上げると、いつの間にか城の天井がなくなっていた。空中を土の階段を作って駆けるノームが城の壁を操って、生み出した岩をサラマンダーに飛ばしていたのだ。



「そんなことは百も承知ぞ! ユメノが吾輩にしてくれたように、吾輩がお主の目を覚まさせてくれる!」



 サラマンダーは空を飛びながら岩を避け、ノームに向けて火を放っていた。火と言ってもただの火ではない。かなり高温なことは見ただけで分かる。その炎がノームの放った岩とぶつかって、マグマのように煮えたぎった岩が落ちてきた。



「ひぃぃぃ!」



 わたしはすぐそばに落ちてくる火の付いた岩を見て悲鳴をあげる。



「ちょっと! サラマンダー、わたしがいること忘れていない!?」

「ノーム王よ! 樹に引火してしまいます!」



 わたしも逃げることに必死だけれど、宝石の精霊の王も妖精の樹に火が燃え移らないように必死でカバーしている。

 さすがは四大精霊の王同士の戦い。あまりにも苛烈だった。



「わたしにひれ伏すがいい!」

「吾輩が負けるものか!」



 ノームの作り出した尖った岩とサラマンダーのブレスの攻撃が激突する。



「ぐぬぬぬぬ」「うぐううう」



 せめぎ合い。そして、同時に岩とブレスが破裂した。

 大きな爆発となり、サラマンダーも、ノームも大きく後ろに弾き飛ばされる。



「きゃあああああっ!」



 わたしも必死に目の前の岩にしがみついた。



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