声優召喚!~異世界に召喚された声優は最強の精霊使いです~

白川ちさと

文字の大きさ
37 / 113
ノーム編

第三十七話 妖精の樹

しおりを挟む


 深い森はずっと緑の葉の大木が続く。けれど、いきなり森が開ける。木陰を通さずに直接浴びる陽の光が眩しい。精霊の海を囲う森はずっと円形に続いているはずだ。だけど、そこには森はない。横に立つイオがつぶやく。



「これは酷い……」



 わたしも正面を見て声を失った。そこにはヒビの入った地面には乾いた土だけが広がっていた。見える限り、緑の茂った木々はない。



「ねえ、エルメラ。精霊の海の周りは全部森だって言っていたよね」

「う、うん。そのはずだけど……」



 地図にも確かに森が描かれていた。イオは首を横に振る。



「あの地図は古い。森がこのようになったのはこの十年ほど前からノームが森を統治しはじめたからだ」



 わたしはイオを見上げた。



「ん? 統治って、元々ノームは土の精霊の王で森にいたって……」

「ああ、元々ノームはこの森に住んでいたらしい。森を移動しながら、平和に暮らしていたそうだ。だが、あるときから自ら王と名乗り出て、実際に精霊や人々を連れて侵略を始めた」

「でも、侵略したらって、なんで森がこうなるの?」

「ここはノームの森があった跡地だ。カカ」



 イオがカカの名前を呼ぶ。心得ている様子でカカは頷く。先を飛んでいたカカは、戻ってきて先を指さした。



「あっちだ。行こう」



 イオが走っていく。わたしも無言でその後に続いた。










 乾いた土地だ。たまに木が化石のように残っている。だけど、それも触れるとパラパラと風化して崩れてしまう。



「酷いものだ。これを本当にノームがやったのか?」



 サラマンダーがわたしの精霊石を通して話す。



「そうだって、イオは言っているよ」

「ふむ。あの、小心者のじじぃがのう」



 やっぱりサラマンダーの頭の中では、ノームはこんなことをしそうにないおじいさんのようだ。ザクザクと乾いた地面を進んでいると、あるものが見え始めた。



「なんだろう? すごく、大きな影?」



 少し近づくと影の正体が分かる。



「わ……」



 それは巨大な黒い樹だった。空に届きそうなほど大きい。わたしとイオが手を繋いで幹を囲んでも、全く手は届かないだろう。だけど、この樹もやはり枯れているようで葉や枝はなく、幹だけが立っていた。



「やっぱり駄目か……」



 カカの声が寂しく響く。エルメラが困惑した様子で尋ねた。



「この樹……」

「ああ、エルメラは初めて見るのか。これは妖精の樹のなれの果てだ」

「「妖精の樹!?」」



 わたしとエルメラは声を揃えた。村で聞いた歌では誰も知らない森深くと歌われていた。こんな簡単に見つかるなんて、思いもしない。でも、これだけ周りの森も、無くなっているから不思議ではないのかもしれない。

 わたしたちは枯れた妖精の樹に近づいていく。イオが歩きながら話した。



「妖精の樹は精霊の海を囲う森に点在している。だが、ノームの侵略により森は枯らされ、この有様だ。それも、ここだけじゃない。おそらく森を移動するときに養分を丸ごと奪っていくのだろう」

「俺たちが把握しているだけでも、三本もの妖精の樹が枯らされているんだぞ!」



 カカがイオの肩で目をつり上げている。イオも頷く。



「ノームは自分のために妖精の樹の生命力を利用している。そして」

「枯れてしまったら、ポイっと捨ててしまうんだ!」



 使い捨てというやつだ。だから、ノームは森を移動しているんだ。



「そもそも、その生命力は妖精の樹が子供の妖精を生むために使うはずの生命力」

「そういえば、妖精の樹はお母さん。そう子供たちは歌っていたよね。じゃあ、それを奪われたら妖精は生まれてこない?」

「そうだ」

「その生命力だって、妖精たちが旅をして集めた……なんだ?」



 話していたカカが途中で顔を上げる。



「何か聞こえるな」



 イオの言う通り、耳を澄ますと音が聞こえてくる。ポロンポロンと何故だか懐かしいような優しい旋律だ。誰かがいる。音楽は樹の裏から聞こえてきていた。わたしたちは警戒しながら裏に回ろうとする。

 そのときだ。



「何奴!」

「わっ!」



 目の前に現れたのは杖を構えたおじいさんだ。ただのおじいさんじゃない。小さな羽根の生えた妖精だ。



「人間がこのような所に何の用だ! このような所に用があるのは、故郷を訪ねて来た妖精ぐらい……ん? 妖精?」



 おじいさん妖精は、わたしとイオの肩にいるエルメラとカカを見比べた。カカが元気よく手を上げる。



「おっす! 故郷じゃないけれど、妖精の樹の様子を見に来たカカだ」

「わたしはエルメラ……」



 二人を見て、気を抜いたおじいさん妖精は杖を引っ込めた。



「なんだ。妖精と一緒だったか。しかし、どちらにしても、ここに来ても手遅れ。妖精の樹は死んでいる。出来ることと言えば、弔うことだけ」



 なるほど、弔いの音楽だったんだ。



「でも、あなたが弾いていたの?」

「いや」

「わたしです」



 今度は女性のしっとりと落ち着いた声がした。妖精の樹の陰から出てきたのは、白いローブのような衣装を着た女性だ。その手にはたて琴を持っている。背後には女の子の妖精が隠れてこっちを見ていた。



「わたしはムウと申します。二人の妖精たちをここに送り届けにきた精霊使いです」



 精霊使い。よく見ると、たて琴には精霊石がはめ込まれている。薄い桃色だ。わたしも自己紹介しようとする。



「わたしは……ブッ」

「まだ小さい方ですのね」



 ムウさんに頬を両手で挟まれた。しばらくされるがままにしておく。なぜなら、ムウさんは目に布を巻いていたからだ。きっと目が見えないのだろう。目元は見えないけれど、他の顔のパーツからとても上品な美人だと分かる。



「まあ、お肌すべすべのもちもちだわ」



 十二歳に若返っているからに違いなかった。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

処理中です...