28 / 68
3章 握り過ぎた手
3 - 6
しおりを挟む
さて、その晩、信子はさっそくウロマからもらった角砂糖を使って夕食を作った。メニューは肉じゃがだ。定番のお袋の味だ。直春の好物でもあった。
家のキッチンでそれを作ると、ご飯や味噌汁と一緒にお盆に載せ、すぐに二階の直春の部屋に持って行った。信子の家は二階建ての一軒家で、かなりの広さだった。彼女は十八年前に夫に他界されて以来、息子と二人暮らしだったが、元々資産家だったのに加え、夫の保険金も入ったので、母と子が二人きりで生活するには何の不自由もなかった。
直春の部屋の前に行くと、昼食に出した料理の皿が廊下に出されていた。皿は全て空だ。信子は夕食のお盆を隣に置くと、それを回収した。そして、部屋の中の直春に向かって、「晩御飯、ここに置いておくわよ」と声をかけた。ややあって、部屋の中から「そういうのいちいち言うなよ。うっせーな」と、不機嫌そうな若い男の声が聞こえてきた。
信子はそのまま一階に戻った。直春はちゃんとあの肉じゃがを食べてくれるだろうか。そして、それでちゃんと心を改めてくれるだろうか。内心、少し不安もあったが、やがてもう一度二階に行くと、空の皿が廊下に出されていた。よかった。信子は上機嫌でそれらを回収した。
まあ、いきなり効果が現れるわけはないけれど、少しずついいほうに変わってくれればいいわよね……。
そう思う信子であった――が、当然、ウロマの手渡したブツがそんなやさしい効果なわけはなく。
家のキッチンでそれを作ると、ご飯や味噌汁と一緒にお盆に載せ、すぐに二階の直春の部屋に持って行った。信子の家は二階建ての一軒家で、かなりの広さだった。彼女は十八年前に夫に他界されて以来、息子と二人暮らしだったが、元々資産家だったのに加え、夫の保険金も入ったので、母と子が二人きりで生活するには何の不自由もなかった。
直春の部屋の前に行くと、昼食に出した料理の皿が廊下に出されていた。皿は全て空だ。信子は夕食のお盆を隣に置くと、それを回収した。そして、部屋の中の直春に向かって、「晩御飯、ここに置いておくわよ」と声をかけた。ややあって、部屋の中から「そういうのいちいち言うなよ。うっせーな」と、不機嫌そうな若い男の声が聞こえてきた。
信子はそのまま一階に戻った。直春はちゃんとあの肉じゃがを食べてくれるだろうか。そして、それでちゃんと心を改めてくれるだろうか。内心、少し不安もあったが、やがてもう一度二階に行くと、空の皿が廊下に出されていた。よかった。信子は上機嫌でそれらを回収した。
まあ、いきなり効果が現れるわけはないけれど、少しずついいほうに変わってくれればいいわよね……。
そう思う信子であった――が、当然、ウロマの手渡したブツがそんなやさしい効果なわけはなく。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末
松風勇水(松 勇)
歴史・時代
旧題:剣客居酒屋 草間の陰
第9回歴史・時代小説大賞「読めばお腹がすく江戸グルメ賞」受賞作。
本作は『剣客居酒屋 草間の陰』から『剣客居酒屋草間 江戸本所料理人始末』と改題いたしました。
2025年11月28書籍刊行。
なお、レンタル部分は修正した書籍と同様のものとなっておりますが、一部の描写が割愛されたため、後続の話とは繋がりが悪くなっております。ご了承ください。
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし
かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし
長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる