9 / 35
ヤドリギは芽を伸ばす
9
しおりを挟む
紙の擦れる音、くたびれた木の匂い、日差しに反射する埃。
普段は外界から隔絶されたこの空間も、今日は珍しく外界からの声が微かに入り込んでいた。
トッタッタッ
そんな外界との境目をかき消すように階段から軽やかな足音が近づき、扉をガラガラっと勢いよく開けた。
「図書室では静かにお過ごしください」
「あっわりぃ」
私が本から顔を上げると、真っ赤なクラスTシャツを着た茶髪の男の子が軽く息を切らして立っていた。
「なぁ、それ何て本読んでるん?」
入口近くの椅子を受付前に持って来てそのまま座った。
「祭歌」
私は無表情に冷たく彼をあしらった。
「へぇ~どんな内容?」
「結婚式とかの行事の本」
「へー好きなの?」
私の注意も近寄らせない態度も一切気にせずそう何度も聞いてきた。
—————————
「よっ、また来たぜ」
「全く、ここは本を読む場所よ?」
私は軽く顔を上げてそう苦言を呈した。
初めて会った時にはまだ残っていた緑も今はもう茶色に染まって、彼の制服は長袖の白シャツに変わっていた。
—————————
「今日は友達連れて来たんだ」
学ランに変わった彼の後ろには長い黒髪の女の子と、顔に絆創膏や擦り傷のついた男の子が立っていた。
彼が連れて来た2人は私にとって高校で出来た数少ない友達だった。
—————————
「今日はありがとう」
「青園……」
「どうかした?」
「いや、何でもない、じゃあな!」
買い物に行った帰り、家の前で紙袋を持った私にそう言って、彼は俯いたまま走って行ってしまった。
何だっんだろうと思ったが、明日聞けば良いだろうと私は玄関の扉を閉めて家に入った。
しかし次の日、彼は学校に来なかった。
その次の日も、次の日も次の日も。
何度も朝が来ては彼が教室に居ない事。図書室に来ない事を確認してはまた朝になっていく。
次の日も、次の日も。
ジリリリリリリ!!!!
けたたましく叫ぶ目覚ましの声で私は本当の朝を迎えた。
「またこの夢。いい加減嫌になるわ」
私はアラームを止め額の汗を拭うと、この嫌悪感を洗い流すべく洗面所へ向かった。
『小惑星ルマネに向かう調査機レイの発射からもう早3年の月日が経とうと———』
私はシャワーを終えると点けていたテレビを切って、スーツに着替え、ポストに届いていた封筒を握りつぶし、玄関で黒いコートを羽織って式場へ出掛けた。
普段は外界から隔絶されたこの空間も、今日は珍しく外界からの声が微かに入り込んでいた。
トッタッタッ
そんな外界との境目をかき消すように階段から軽やかな足音が近づき、扉をガラガラっと勢いよく開けた。
「図書室では静かにお過ごしください」
「あっわりぃ」
私が本から顔を上げると、真っ赤なクラスTシャツを着た茶髪の男の子が軽く息を切らして立っていた。
「なぁ、それ何て本読んでるん?」
入口近くの椅子を受付前に持って来てそのまま座った。
「祭歌」
私は無表情に冷たく彼をあしらった。
「へぇ~どんな内容?」
「結婚式とかの行事の本」
「へー好きなの?」
私の注意も近寄らせない態度も一切気にせずそう何度も聞いてきた。
—————————
「よっ、また来たぜ」
「全く、ここは本を読む場所よ?」
私は軽く顔を上げてそう苦言を呈した。
初めて会った時にはまだ残っていた緑も今はもう茶色に染まって、彼の制服は長袖の白シャツに変わっていた。
—————————
「今日は友達連れて来たんだ」
学ランに変わった彼の後ろには長い黒髪の女の子と、顔に絆創膏や擦り傷のついた男の子が立っていた。
彼が連れて来た2人は私にとって高校で出来た数少ない友達だった。
—————————
「今日はありがとう」
「青園……」
「どうかした?」
「いや、何でもない、じゃあな!」
買い物に行った帰り、家の前で紙袋を持った私にそう言って、彼は俯いたまま走って行ってしまった。
何だっんだろうと思ったが、明日聞けば良いだろうと私は玄関の扉を閉めて家に入った。
しかし次の日、彼は学校に来なかった。
その次の日も、次の日も次の日も。
何度も朝が来ては彼が教室に居ない事。図書室に来ない事を確認してはまた朝になっていく。
次の日も、次の日も。
ジリリリリリリ!!!!
けたたましく叫ぶ目覚ましの声で私は本当の朝を迎えた。
「またこの夢。いい加減嫌になるわ」
私はアラームを止め額の汗を拭うと、この嫌悪感を洗い流すべく洗面所へ向かった。
『小惑星ルマネに向かう調査機レイの発射からもう早3年の月日が経とうと———』
私はシャワーを終えると点けていたテレビを切って、スーツに着替え、ポストに届いていた封筒を握りつぶし、玄関で黒いコートを羽織って式場へ出掛けた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
俺の可愛い幼馴染
SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。
ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。
連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。
感想もご自由にどうぞ。
ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。
疎遠だった幼馴染が彼女と別れて私に会いに来るようになったのだけど
くじら
恋愛
図書館の定位置には、いつも黒縁メガネの女生徒がいる。
貴族同士の見栄の張り合いや出世争いから距離を置いて穏やかに過ごしていたのに、女生徒の幼馴染が絡んでくるようになって…。
嘘コクのゆくえ
キムラましゅろう
恋愛
アニーは奨学金とバイトで稼いだお金で魔法学校に通う苦学生。
生活は困窮、他の学生みたいに愛だの恋だのに現を抜かしている暇などない生活を送っていた。
そんな中、とある教授の研究室で何らかの罰としてアニー=メイスンに告白して来いと教授が学生に命じているのを偶然耳にしてしまう。
アニーとは自分のこと、そして告白するように言われていた学生は密かに思いを寄せる同級生のロンド=ハミルトンで……
次の日、さっそくその命令に従ってアニーに嘘の告白、嘘コクをしてきたロンドにアニーは……
完全ご都合主義、ノーリアリティノークオリティのお話です。
誤字脱字が罠のように点在するお話です。菩薩の如き広いお心でお読みいただけますと幸いです。
作者は元サヤハピエン主義を掲げております。
アンチ元サヤの方は回れ右をお勧めいたします。
小説家になろうさんにも時差投稿します。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
たとえ夜が姿を変えても ―過保護な兄の親友は、私を逃がさない―
佐竹りふれ
恋愛
重なる吐息、耳元を掠める熱、そして——兄の親友の、隠しきれない独占欲。
19歳のジャスミンにとって、過保護な兄の親友・セバスチャンは、自分を子供扱いする「第二の兄」のような存在だった。
しかし、初めてのパーティーの夜、その関係は一変する。
突然降ってきた、深く、すべてを奪うような口づけ。
「焦らず、お前のペースで進もう」
そう余裕たっぷりに微笑んだセバスチャン。
けれど、彼の言う「ゆっくり」は、翌朝には早くも崩れ始めていた。
学内の視線、兄の沈黙、そして二人きりのアパート――。
外堀が埋まっていくスピードに戸惑いながらも、ジャスミンは彼が隠し持つ「男」の顔に、抗えない好奇心を抱き始める。
「……どうする? 俺と一緒に、いけないことするか?」
余裕の仮面を被るセバスチャンに、あどけない顔で、けれど大胆に踏み込んでいくジャスミン。
理性を繋ぎ止めようとする彼を、翻弄し、追い詰めていくのは彼女の方で……。
「ゆっくり」なんて、ただの建前。
一度火がついた熱は、誰にも止められない。
兄の親友という境界線を軽々と飛び越え、加速しすぎる二人の溺愛ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる