私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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忘れ物はペンだった

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 蓮司会長。仕事は熱心に間違いない。本来は、仕事に関しては、大原の鬼、財界の悪魔、裏の副将軍と形容されるほど、仕事中毒人間らしい。そして、その容貌のため、芸能関係の会社も傘下にあることから、いつも美女達に囲まれている。

 仕事は朝から晩の深夜まで続く事はざらだ。いつも完璧な着こなし、プレゼンテーション、社交術、そして、トップらしい会社の理念をいつも追いかけながら、進化を求める姿勢は、雑誌やテレビに多くとりあげられた。最近は、女性ファンが急増し過ぎるという理由で、顔出しは無いようだ。そう真田さんから聞かされた。

 本当にあの容姿で、この肩書き……ありえない。

 幸い、私の就労時間は夜の6時まで(まあたまに7時を過ぎてしまう事もあるけど)忘れ物を届けるだけなので、超楽ちんだ。一応、大学の講義にかからないよう考慮してもらってる。

 こんなふざけた雑用係がこんな同じ人間とは思えない超サラブレットの為に働いているとは、なんとも言えない気持ちになる。
 でも、だんだん仕事に慣れてくると、彼の仕事の質が、なぜ超一流かがよくわかる。毎日忘れ物を届けながら、たった5分程度しか、顔を見かけないが、その勤勉さや貪欲にプランを練り上げる姿をよく目撃するからだ。

 でも、わかっているが、声を大にして言いたい!!
 まあとにかく忘れ物が多いのだ。
 どういうことでしょうか?

 すべて『最初から入れとけよっ』と思うが、過去1ヶ月の忘れ物を並べてみよう。

 お気に入りのペン
 携帯(2種類)
 パソコン
 パスポート
 書類
 ファイルホルダー
 財布? ありない……があった
 サングラス
 花粉症の薬
 ハンカチ

 などなど切りがない。

 そして、忘れてならないのが、この携帯の電源入れ忘れである。

 どうやら、マナーモードが嫌いな蓮司会長は、思いっきり会議などで電源をオフにするらしい。それで、多くの伝言が埋もれるケースが続失し、秘書などがその伝言を受けてチェックはしているのだが、それにより、秘書たちの間で、誰がその役を受けるのかが戦いになってしまい、混乱を生み出したらしい。

 女って怖いね。
 しかも、一回目のペンの忘れ物がすごかった。

 なにがすごいかって……ペンがすごいわけじゃーない。
 そりゃー届けてびっくり仰天だった。

 その日、とにかく、真田さんが急いでペンを会社に持っていけという。仕方がないので用意してもらった配達員のつなぎを着衣し、速攻で本社がある株式会社大原に連れて行かれた。みんなの視線をかわすため、配達員の設定だ。

 ようやく最上階の会長室があるところに着くが、秘書がいま、会長が来客中ですので、入れないと言う。
 それを真田さんに電話で連絡すると、『ダメです。強行突破でもいま入ってください! 直接渡すんです!』という指示だ。
 おい、鬼のような指示だな。不審者で捕まるのは、わたしだぞ!っと思うが、まあ訴える本人たちが入れって言うんだから、しょうがない。
 秘書が引き止める中、突進しながらどんどんと中に入り込み、一番奥の重厚な観音開きのドアを思いっきり開ける。鍵をかけていないから助かった。

 だが、見える位置には誰もいない。音の方向に体が向く。たぶん、会長の部屋専用の応接間だろうっと思った。後ろから私を止めようとやってきた秘書が悲鳴をあげた。

 なぜなら、その会長室で来客中のはずの蓮司会長が、来客用の応接間のソファの上で、顔中を口紅べったりのキスだらけにされて、その来客の女性から襲われていた。

ーーええ、お取込み中??

 と思っていると、
 「ち、ちがうぅ……」
と野太い声が女性の下から、唸っている。
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