私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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蓮司、下僕に喜んで成り下がる。

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 なぜか蓮司会長が持っていた紙を奪い取り、ビリビリに破いて捨てる歩美を見ながら、
「案外、仲いいんだね。初対面なのに……」
とぽろっと言葉がでてしまう。だって、二人だけ見ていたら、ちょっと喧嘩しながらじゃれている美男美女だ。
 その切られた紙をなぜかまた奪い取ろうとしている蓮司とそれを止めようとしている歩美が、二人とも一瞬顔を歪ませて美代を見つめる。
 「いや、そういうことではなくて……」
 「美代。そんなんじゃないから!! この変態野郎!」
 歩美の言葉にぶっと声を吹き出す。こんなはっきりこの御曹司に言えるのは歩美ぐらいだろう。
 気分がちょっと軽くなったので、みんなにさあ歩いて行こうよという。なぜなら、ここが美代の初詣の最大の楽しみなのだ。この境内には溢れんばかりの屋台のお店が溢れている。たこ焼き、焼き鳥、綿菓子、飴屋、りんご飴、ぶどう飴、イカ焼き、甘栗……

 あああ! ビバ屋台!この感じが大好きだ。ワクワクする。この匂いに、雰囲気。

 「あーもしかしたら、会長にはちょっとハードルが高いかもしれませんね。美味しいんですよ。屋台の食べ物って!」
とフッフッフッと笑みを浮かべて説明する。

 そんな様子をさも愛おしそうに眺める蓮司がいた。

 「美代は何が食べたいんだ?」

 突然の質問に、えっと思うが考えていた事を口にした。

 「私は絶対、粉もの食べたいんですよね。でもいつもお腹いっぱいになっちゃうから……たこ焼きかお好み焼きでいつも迷うんです。はぁーーー」
 「じゃー、二つ買って半分こするか?」
 「え? いいんですか? 蓮司会長!」
 「あ、美代。今日はプライベートだから、蓮司って呼んではくれないか?」

 かなり顔を近づけて質問される。ちょっと近すぎる!!

 「……無理です。ごめんなさい。」
 「そうか。無理はしなくていい。ちょっとなんだか寂しくてな」

 ちょっとほっとかれぎみだった歩美が近すぎる二人のなかに強引に入ってきた。

 「蓮司、蓮司、蓮司、どいてください。私もいれてください、蓮司、蓮司!」
 
 ニンマリ顏の美少女が微笑んでいる。

 「私がいくらでもよんで差し上げますよ。蓮司。今日だけ、呼び捨てにしてあげます。蓮司!」
 「「!!!!!」」

 蓮司と美代はそれぞれ違う意味で唖然としている。
 歩美ちゃんは、美代と同じぐらいのどちらかといえば、身長が小さい女の子だ。でもなんだろう。彼女は時々その小さな背からは考えられないような女王のオーラが出ている。ちょっとS系???

 「いいのよ。美代。このお坊ちゃん、今日は美代に呼び捨てにされたいっていうんだから、すきなだけ呼び捨てにしましょう。でも、蓮司。呼び捨てにされたからには、私たちの言うこと聞かないとね! 私たちの下僕になりなさい!!」

 キラっと歩美の目が光る。

 「ふふふっ。わはははーーーーーっ。」

 蓮司が豪快に笑いだした。腹を抱えながら笑っている。

ーーこんなに表情豊かに笑う蓮司会長をみるのは初めてだ。歩美ちゃんってやっぱりすごい。

大笑いしてせいせいしたのか、蓮司が呼吸を整えて話し始めた。

 「なるほど。さすが美代の友達だ。手強いな。まて、お前もしかして、真田となんか話しをしたな?」
 「……ええ、すこしばかり……とても執着が強い上司のお話を伺いました」
 「……なるほどな」

 ちょっと頭を掻きながら、考え事をしていたかと思うと、いきなり、

 「では、今日はこの日が終わるまで、この二人のプリンセスの下僕になろう。いいかもしれん。下僕でも、執事でもなってやろう」と蓮司が言い出した。

 ニヤリっとフェロモンが漂う笑みを浮かべ、まるで執事が会釈をするように蓮司が二人に礼をする。

 「では姫たち。何をご所望で?」

 なぜか執事なはずなのにかなり偉そうというか、オーラが半端じゃないところはしょうがない感じがする。だって、蓮司会長だし……

 でも、そんなことはお構いなしにちっさいS系将棋オタク美少女は蓮司に命令をする。

 「蓮司、美代はたこ焼きとお好みやきが食べたいそうだから、買ってきなさい。私たちは適当に席みつけているから!」

 蓮司が美代に真正面から覗きこんできた。

「……美代。それだけでいいのか?」

 なんだかおかしなことになってきた。蓮司会長は確かに変人だが、こんな従事してる姿なんて見たことがない。が、話しがどんどん進んでしまい、もうここは乗るしかないと思った。

 「あと、私りんご飴がたべたいです。」と、いつも自分が屋台で食べるコースの定番を教える。
 「おれの名前を……呼んでくれ……」

 流れる髪から切れ長の目が美代を覗く。ちょっと恥ずかしいが仕方がない。

 「蓮司……お願い……」

 一瞬、蓮司が固まった。直立不動のまま固まり、動けないでいる。
 顔を下にさげているため、その表情までは読み取れない。肩さえ震えている。
 蓮司は心の中で叫んだ。

ーーいい!下僕万歳!

 まさか名前だけでもかなり、悶絶、やばい系なのに、お願いプラス上目目線だ。

 「…………い……い!!」

 なにか言っているが全然聞こえない。美代が大丈夫かと不安になっていると、

 「こら、蓮司!! たこ焼きもお好み焼きも一番美味しそうなところ買ってくるのよ。まずかったら、美代からお仕置きされるわよ!!」
 歩美ちゃんから叱咤される。
 「!!!!!!!」
 蓮司がなぜかもう涙目でいる。そんなばかげたお仕置きなんてしないから!!
 「もう変態!早く行け!」
 歩美ちゃんがその美少女オーラで、蓮司会長に命令する。しかし、下僕宣言をした執事会長様は動かない。

「……美代に言われたい」

 え、わたし?わたしがまたお願いするの?なんだか二人の変な寸劇に巻き込まれている。仕方がない。

 「……蓮司……はやく……おねがい」

 美代にそういわれて、蓮司は超特急で走り出した。
 それを美代はただ唖然としながら、走り去る蓮司会長を見ていた。

 なんだろう!! 歩美ちゃん!! あなたすごすぎる!!
 忘れ物お届け係として、あなたをスカウトしたいです!!!

 ただ、このおかしな状況を一緒に大原家からきていたSPたち6人、そして現地で合流のほか10人、計16名の護衛たちが、この下僕に成り下がって二人の可愛い女の子のパシリをしてる様子を見ながら、
 「どうすんだ? この状況……」
 「護衛するだけだよ。俺たちは……」
 「春なのか? それとも、あの歩美ちゃんってのがすげーのか?」
 「いや、美代様だろ。それしかありえんな」
とか、いちいちトランシーバーで交信していた。

 「01、ただいまイーグル(これ蓮司のコードネーム)一軒目、たこ焼き屋、実演観察中。異常なし」
 「02、イーグル、一軒目、クオリティーに不満があるようで、二軒めを検討中のため、移動……周り特に異常なし」

こんな会話がしばしSPの間で進んだらしい。
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