私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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銀座クラブのホステス騒動1

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 蓮司サイドの話

 最近の美代は一段と可愛らしく美しくなっていく。
 そのなに気ない香り、たぶん使っているシャンプーや何かの匂いだろう。その匂いを嗅いでいるだけで、この腕に閉じ込めて抱きしめたいという気持ちが溢れてくる。寒さのなかで頬を赤らめる美代は本当に可愛らしく、あの唇さえもまるで熟れた桃のようだ。

 そのあの愛らしい姿を抱きしめ、色々な妄想してしまう自分が情けない。

 わかっている。真田やあの美代の親友と言われるものまでに『変態』と罵られ、普通なら激昂してもおかしくないに、それでも、そんな罵倒を言われてまでも美代と一緒にいたいと思う自分が信じられない。

 『下僕になれ!』とまであの歩美に言われた。さすが美代の親友だ。俺のタイプでは全くないが、あのような友を選んだ、いや、美代が選んだ友だと感じた。二人の絆はまあ、尊重しなくてはならない。

 でも、問題がある。

 真田も歩美も、なんというか、ガード固すぎないか?
 あまり恋愛物のドラマなどには興味がないが、恋愛ものでイヤっと言いながらも、男に迫られ好きになるケースもあるんではないかと考えた。女性はそういうがすきではないのかっと疑問が浮かぶ。

 それを真田に言ってみたが、
 「嫌われて男が捨てられるケースもたくさんありますよ!ただし、そういうのはドラマとして成立しないんで、ないんですよ。それか、新しい男がでるための当て馬ですね」
とはっきりと否定された。

 最近知らなかったが、銀座のクラブに興味があると言われた(美代情報)真田に聞いてみた。

 「真田、おまえ、俺の知らないところで銀座のクラブに興味があるって聞いた。人に好きなことを言っておいて、おまえは女遊びでも始めたのか? それとも、クラブに好きな女でも出来たのか?」

 「ち、違います。それは、美代様からの情報ですね。あーー、お願いしていたのに、報告してしまったんですね。」
 「……美代が、おまえの銀座のクラブ通いを心配してだな……『絶対に怒らないで真田さんに話をしてください』と頼まれたんだ」
 「……」
 「まあ一応、プライベートな話だから、おまえが何をしようとかまわん。だが、美代を心配させるのは気に入らない」
 「……しかも、スリットの入ったドレスまで好みを美代に暴露したか……」
 「……美代様」
 「……上司の命令ではない。男としての質問だ。なぜ美代におまえの女のドレスの好みを教えた?」
 「そ、それは、その蓮司会長が思われているようなことではありません。ご心配なさらぬよう……」
 「それでは、悪いが答えになっていない……真田……オレはおまえが気に入っている。はっきりいってほしい」

 真田はその『はっきり言って』という言葉を鵜呑みにするほど、子供ではなかった。

 「蓮司様!! あの、は、初夢に……美代様が何か出てきてしまいまして……その銀座のホステスになりたいと言い出したので、ちょっと私も焦ってしまい、起きてからの質問攻めにしてしまいました」
 「おい、おまえの夢のなかに、ホステスの格好をした美代が出てきたのか?」
 「え? 違います。なりたいと言った美代様が出てきたのです」

 真田は知っている。これでホステスの格好をした美代が出てきたなどど言ったもんなら羽交い締めにされるだろう。ここは毅然と答えなくてはならない。そんなことでどこかに飛ばされたくない。

 「つまらんな……」
 「え? どういう意味でしょう?」
 「つまらない。おまえが美代に心配されているのがつまらん。もしホステス姿の美代が出てきていたら、正直、温情で、まあ近場の香港ぐらいに飛ばしてやろうかと思ったが、まあいいだろう。」
「そ、そんな……(やっぱりそうだったんだな)」
 「わ、わかった。おまえ、本当に銀座のクラブに行ってこい。まあ俺が金をはらってやるから……そうだな……後生として、週3回、1ヶ月やってこい。そうだな、今のタイトルだと、女が食いついてこないかもな、そうだな、おまえ確か広東語ネイティブ並みだな。アジアの謎の投資家ではどうだ? いまちょうどあっちの関連会社の社長が来ているから、そいつに口合わせして連れて行くように言っておく」
 「な!! なんでですか? 会長!!!」
 「それで、銀座の女ひとりでもふたりでもメロメロにしてみろ……それで、まあ満足しろ」
 「まったく意味がわかりません!!!しかも、会長、わたしの特質をご存知のうえ、仰っていますか?」
 「……真田。もう一回言っておく。美代を心配させるのが、俺が気に食わん」
「……それで、私が銀座のクラブ通いを一ヶ月も続けるのですか? それでは、美代様がもっと心配されますよね。なんだか本末転倒ではないですか? それでは……」

 男がふたり黙りこんだ。そして、ちょっと考え中であった蓮司がまた顔を上げて真田を覗き込む。

 「でも、真田、確証が取れ次第、別件でやっぱり銀座へのクラブ、おまえには行ってもらうかもしれん……」
 「ええ?」

***

 そして、とある日の夜。銀座ナンバーワンと言われるホステスバーの夜。

 きゃーーーーーーー!!!

 普通なら悲鳴など、はしたない声をあげないホステスの女たちが騒ぎ出す。

 黒服に案内されてきた眉目秀麗な男がいかにも高級そうなスーツを身にまとい、ファッション雑誌から抜け出してきたかのような雰囲気でそのゴージャスな店内に入ってきた。

 ひとりは大原蓮司。そのイタリアの3ピースのスーツが否が応でも似合い過ぎていた。銀座の女帝と呼ばれる花純(かすみ)ママは、長年の夢がかなった奇跡を噛み締め、興奮が抑えようにも手が震えてしまう。この日本の銀座の界隈で、すべてのホステスの夢の男、喉から手が出てくるくらいほしい男が完全にプライベートでやってきたのだ。まず、このような席にこの大原蓮司と呼ばれる、その見た目にも財力的にも神に愛され続けられている男がプライベートなことでくることなど皆無なのだ。
これは、絶対に顧客になってもらわないといけない。

 「大原様。今日はいらしていただきまして、クラブ花純のママとしては大変名誉なとでございます。ちょっとはしゃぎすぎの子がいたみたいで、教育が行き届いておりませんで、申し訳ありません」

 「……かまわない。俺のことは特にかまわなくていい。こっちだ。今日は知り合いを連れてきた。名前はテイだ。中国の投資会社を何個か持っている。日本にお忍びで遊びに来た。銀座の遊びを知りたいそうだ・・」

 「まあ素敵。そんな素晴らしいお客様をお連れしていただいたなんて、しかも、大原様のお知り合い。このクラブ花純を選んでいただいてありがとうございます」

 テイと呼ばれる黒髪の男は、その柔らかな髪を少し揺らしながら、綺麗な日本語で挨拶した。
 「よろしくね。花純ママ。日本は初めてではないから……」

 その男の佇まい、所作から見て、花純ママは『この男もただ者(もの)ではない』と感じ始めた。見た目は、隣に極上の男である蓮司がいるので多少霞んでしまうものの、かなりのイケメンであることにはかわりない。ただ、握手をしたのだが、この人との距離感や所作は……相当に訓練された上流階級のものだ。中国の華僑の人なのか?
 そんな疑問が頭に浮かんで消えていく。

 「まあ、こんなイケメンさんが二人もいっぺんにいらしてくれるなんて、今日の女の子たちは、ちょっと興奮で大変になってしまいますわ」
 「だれかご希望の子はいらっしゃいますか?」
 誰でもいいといいかけたテイの言葉を遮ったのは、蓮司だった。
 「テイは長いスレンダーなボディに深いスリットが入ったようなドレスを着る女が好みだ」
と、蓮司は並んでいるホステスを一瞥しながら、そう答えた。

 ニヤリと蓮司がテイに微笑んだ。テイ自体がちょっと目を見張ったが、仕方がないっという感じで頷いたようだ。

 黒服とママがこのクラブで一番豪華な席へと招き入れた。
 「こちらで少々おまちくださいませ」

 二人の男が白いゆったりとしたVIPのソファーに座り込んだ。すぐさまお客様を相手するためにホステスたちが何人が入ってきた。
 その中で、一番最初に入ってきたこのクラブナンバーワンのホステス、雫(しずく)は、この商売を始まって以来、客のその王者のような風格と美しい姿に慄いた。

ーーこんな眉目秀麗な男性二人を満足させるような接待……わたしにできるの??

 いつもなら自分の美しさに男たちが隠しきれない賞賛の言葉と憧れの目線をくれるのだ。だが、この目の前の白いソファーに座っている男たちがそういうことをするような者には到底考えられなかった。どちらかとえば、自分がその王者たちに近づいて、言葉を一言いただけたら幸いと思ってしまうぐらいこの二人から感じるオーラがすごかった。

 「初めまして、雫と申します。今日は花純ママが、宝くじにあったような幸運なんだからと説明を受けました。お二人とも正直に言って、とても素敵な殿方なのでわたしなんて霞んでしまいますね」
 雫はプロらしい笑顔で、また率直にこの二人に挨拶した。

 「ああ、すまない。おれはいいんだ。みんなテイについてくれ」
 雫はちょっと唖然とする。この男、一体何しに銀座のクラブまできたのか? でも、ここで引き下がるような女で銀座ではやっていけない。少し距離を開けながら蓮司のそばに雫は座る。

 他のヘルプたちはちょっとがっくりした様子だったが、もう一人のイケメンの客、テイの方の周りに腰を落とした。しかし、テイの好みのはずの長いドレスのスリットの女性が自分の役割をわかっているかのようにみんなを退かせ、テイの真横に座る。

 「テイ様。はじめまして。雪と申します」

 雪は髪の毛を夜会巻きにした黒髪の背の高いスレンダーな美人だ。タイトな濃紺の輝くドレスを着ている。色合いは地味だが、彼女の美しい顔立ちを良き引き立てていた。
雪はこの黒髪の美男子、投資家のテイを絶対に自分の贔屓にしてみせるっと意気込んていた。こんな見た目も財力もいい男、性格が問題でない限り自分が欲しいにきまっている。いままでの男たちがカスに見える。あいつもそろそろ潮時だし、もうそろそろ新しい男(おさいふ)が欲しかった。

 「雪さんですか。こんにちは。テイと申します。一緒に飲んでいただけたら幸いです」

 そして、宴がはじまった。雪は無難な話を続けながら、どうやってこの男の芯をついていこうか考える。
 だが、そのテイと呼ばれる男は飲んでもまったく崩れない。さっきからこの蓮司総裁を横目でちらちらと見ながら飲んでいるのだが、かなり強い酒を飲んでいるのに、いらやしい目線もそのようなきわどい会話も、このテイからは何も生まれてこないのだ。自分が最高に美しく見える目線や、ある程度節度を持ちながら色目目線を送る。

 ありえない!自分の魅力がここまで効かなかったことがあろうか? 雪のプライドがグラグラと揺らいできた。仕方がないので、となりの極上の男を覗き見る。悠々と白いソファーにゆったりと座っている蓮司の隣には約1席分ずつ横が空いている。隣にはナンバーワンの雫がすわっているのだが、その距離を蓮司が座らせない態度なのか、雫や他の女性がそこに座ろうとすると腕を伸ばし、拒絶しているみたいだ。変わった男だ。だから、難攻不落の男なのかもしれないと雪は思った。

 花純ママが心配して様子を見にやってきた。

 「総裁、なにかご無礼な点がありますでしょうか?」
 「いや、いいんだ。おれのとなりには誰も座らないでくれ。座るなら一席分、開けてもらえるとありがたい」
 「一席分ですか?」
 「ああ、悪いな。ママ。見ているだけでいいんだ……」

 そんな蓮司に対して、テイと言われる男が席を動かし、雫に断りを言って、席を譲ってもらう。
 そして、蓮司のとなりに座り込んだ。

 「て、テイ何している」
 「蓮司様だけ、ずるいですよ。わたしの身になってくださいよ……」
 小声でテイが話しかけてくる。

 (おい、おまえ、おれはここにいるっというだけで、なにやら浮気をしているような罪悪感が生まれて来るんだ……おまえにクラブという物を味わさせてだな、そして、クラブに対する興味をやめさせるためにだな……こうやって連れて来て恐ろしさを知れば、おまえもやめるだろうっと美代に説明するために、わざわざおれまでやってきたんだ!! 楽しめ、そして、はまって地獄に堕ちろ!!あと、任務を忘れるな……) 
 (蓮司様! なんでそんな不可解な思考なんですか? もともとわたし、クラブ狂いでもなんでもないと説明したではないですか?あと任務は忘れてないですよ。それこそ蓮司様も忘れないでください……)
 (……美代のためだ。この苦痛はおまえ一人だとクラブ通いと美代が勘違いして心配するだろ!!!)
 (いやーー、普通。そういう場合、話し合いで説得しませんか? 『クラブの女は本気になるなっとか、金の無駄遣いとか・・』というふうにですね。あと、任務でも他のものがするってこともできますよ)

 (ああ、確かに。でもそれでも俺はあいつのために何かしたいんだ。それに例の件もあるしな……)
 (で、我々二人で銀座ですか?)
((……))

 小声で話し合う男二人の様子を見ていたホステスたちが心配して、怪訝な顔した雪が声をかける。

 「大丈夫ですか? 蓮司様もテイ様も? ご不満な点がありましたら、どうぞいってくださいね」

 可憐な手つきで、その時期ナンバーワンと言われる雪はさりげなく蓮司との距離を詰め、蓮司の膝に手を置こうと手をあげた瞬間、テイにその手をにぎられる。

「雪さん、美しい名前だ。以後お見知りおきを……」
 テイがその雪の手を取り上げ、その手の甲にやさしくキスをした。

 彼の瞳が黒髪の間からチラリの獣のように覗き込まれ、ドキっとする。

ーーこの男? いままでまるで無害なただのイケメンだと思っていたけど、実は本性を隠した獣なの?

 その巧みなテイの微笑みが時期ナンバーワンといわれる雪の心を射抜いていた。
 しかし、そんな中、蓮司がその雪がしている珍しい形のネックレスに注目する。

 「雪さんのネックレス。珍しい宝石(いし)だね。彼氏からも贈り物かな?」

 珍しく口を開いた蓮司に、雪がドキッとした顔をしながら答えた。言葉をこの男からもらえるだけで、腰が砕けそうだ。そんな上等な男がこの世に存在するなんてしらなかった……。
 雪も雫も、花純ママがなぜ『宝くじに当たったんだから、あんたたちは……せいぜいこのチャンス……無駄にしなさんなよ』と言われた意味が今更ながら納得した。


ーーありえない。こんな美形で金持ち。まだ性格はわからないけど、そんなのどうだっていいいではないか。変態でもなんでもいい。彼のものになりたい!!

 雪はどちらの男も条件が良すぎて初めて悩んだ。恋の駆け引きならば、銀座のホステスとして受けて立つ。雪は蓮司の質問に最高の笑みで答える。
 「れ、蓮司様。そんな無粋なこといわないでくださいね……それは銀座のクラブの禁句ですよ。アレキサンドライトって石なんです。一目惚れで」
 それを聞いたテイこと真田が口を挟む。
 「ああ、昼と夜に違う色がみられるという鉱石ですね、しかも、わざわざ雪さんの宝石はハート型ですか、大変ロスのあるカットの仕方……」

 「まあ、テイさんまでそんなこといわないでくださいね……嫉妬なら嬉しいけど」

 二人の男が意味深に顔を見合わせた。

 そんな中、ピロロロロロッと誰かの携帯が鳴った。いきなりテイがさっと胸の中から電話をとりだした。

 「はい。さな、いえ、あの、如何されましたか? 美代様」

 グラスを持っていた蓮司の手が固まる。浮気はしていないけど、なにか浮気現場に電話をされたような気分だ。

 「え? いまですか?どうでしょう」

 電話口の美代がなにかを感じ取ってギャーギャーと言い出した。

 「ち、ちがいます……そうですけど、ちがいます。なぜなら蓮司会長も一緒です」
向こうの電話口から絶句しているのが聞こえる。

 二人の返答が続いた。

 絶句していた蓮司が口を開ける。

 「おい!真田!美代になにをいった!!」
 「申し訳ございません……蓮司様」
 「まさか……おまえ!!」
 「こちらにいることをばれたみたいです」

 蓮司のもっていたグラスが落ちた。

 がっしゃーーんという音が広いホールに響き渡る。
 割れたグラスを黒服の男たちが一斉に片付け始めた。
 呆然と放心状態の蓮司が固まっている。

「なぜばれた……」
「たぶん、この雰囲気の音が電話口から漏れたのかもしれません」

「帰る。美代に会う……」
立ち上がる蓮司。

 「蓮司様。それが、美代様がいまここに来られるということなんです……」

 無言の史上最高のイケメン男からいわれないような悲壮感がただよった!!




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