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意外に真田さんもHだった件。
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1月2日の朝
蓮司が朝の身支度をしている。大きなそのウォークインクローゼットには、見事にそのカラーや素材に分けられていた。そのあざやかな薄ブルーのシャツは、パリッと糊が効いていて、蓮司のよく鍛え上げられた体にしなやかにまとわりついた。ネクタイも無造作に選ぶが、もともと色彩感覚が優れているのが、その上に羽織った濃い藍色生地の細いストライプが入ったイタリア式の3ピースのスーツだった。ネクタイの位置をもう一度確かめる。
あまり自分を鏡で見直すことのしない蓮司だが、今日だけはなにか思惑があるのが二度見、三度見と鏡を見直した。
「ふぅ……」
そして、おもむろに自分の書斎がある部屋へと行く。ここには、あのペンやらパソコンやら自分の小物がここに置いてある。
朝の朝食はここで簡単に済ませることが多い。ダイニングまでわざわざ行かないのだ。ちょっと古風な蓮司は、朝必ず英字新聞二紙、経済関連の新聞二紙、そして、一般紙四紙に必ず目を通していた。今日は、本当は意中の人がいると思われるダイニングまで行きたかったのだが、その人が、
「会長、真田さんから聞きました。書斎でいつも軽く朝食を召し上がるということなので、そちらで私、忘れ物係りの最終点検をしたいと思います」
彼女の提案に舞い上がる。
いいじゃないか。朝から世話を焼いてくれる彼女がいるなんて・・
蓮司の妄想
『あなた、忘れ物ないですか?』
『あー、全部入れたと思うぞ』
『あ、わ す れ て る!』
『なんだ! ペンもパソコンもティッシュも全部、持ったぞ』
『わたしに、キ・ス!!』
!!!!!!!!!!!!
人から見れば、完璧な男。スタイル、容姿、地位、財力。
その男は書斎の自分のテーブルの椅子に座りながら、見苦しいほどに、悶絶していた。
トントンっ。
ドアを叩く音がする。
自分に言い聞かせ、顔に鉄仮面をかぶせた。
「入れ……」
「失礼いたします」
昨日の初詣騒ぎがうそのように、静かにそして、いつものように美代がかしこまって部屋に入ってきた。ただ、違うのが、これが蓮司の本宅の書斎というだけだった。
「蓮司会長!! いきますよ! ご覚悟を!!!」
美代はかなり気合をいれながら、蓮司を凝視する。なぜなら、いまのこの状況、忘れ物お届け係にはとっては夢の状態、忘れ物チェックができるのだ。今まで、何度もこの状況を夢見てきた。いま、目の前に鎮座している美形の御曹司に、朝のチェックを覚えさせなければと、美代は使命感に溢れていた。
そんな気合いの入ってる美代とは正反対に、美代の言っている意味を完全に忘れている蓮司は、「何をだ?」と、惚けた返事をしてしまった。
「蓮司会長!! いいですか?いま全部忘れ物の名前を言いますから、きちっと確認してください! いいですか? いくら、総裁とか会長とかいっぱい偉い名前がついてでもですねー、こんな忘れ物の多い大人って正直許されないと思うんです!」
「……はい」
先ほどのスーツを着替えた時のような王者の風格は消え失せ、借りてきた子猫のように大人しくなる。
「いいですか! いきますよ!!」
ポケットから折りたたんであった紙を取り出し、美代は上からいままでにあった忘れ物を全部読み出した。
「会長!!!チェックしてください。あるなら、あるって言っていただかないとわかりません」
実は、蓮司聞いているのだが、一生懸命怒りながら忘れ物を読んでいく美代が可愛すぎて、彼女の言うことが全く頭に入ってこない。
「いきますよ。ペン」
「はい」
「ノート型パソコン」
「はい」
「携帯電話2個」
「はい」
「はい」
「はい」
「会長!! 聞いてないでしょ? 返事が多すぎます」
これが何回も繰り返され、しまいに頭にきた美代が、
「もう! 知りません! 今日はストライキです。いま調べた限りで忘れ物はなさそうですが、今日は絶対にお届けしませんから! いいですか?」
「……はい」
涙目になりながら、蓮司は答えた。
そして、ちょっとしょんぼりしながら、出社となった。
美代はあっと言いながら、真田さんのホステス狂いの件について、なにも蓮司会長に言えなかった自分を叱咤した。
「この次はいわなくちゃね!!心配だもん……」
***
1月2日の午後の真田と美代の会話
「真田さん !やっとわかりました。やっぱり蓮司会長……重症ですね。忘れ物の……」
「どういうことですか?」
「あの考えたんですが、糖分とかが足りないんじゃないですか? 朝はあまりにぽーっとしてますよ。だから忘れ物が多いんだと思うんです。」
「……美代様。あの失礼ですが、他の可能性って考えられませんか?」
「え? 低血圧とか?」
「いえいえ」
「うーーん、寝不足気味?」
「いい線ですね。なんで寝不足なんでしょう?」
「やっぱり仕事が多いからじゃないですか?」
「うーーん。そうですね。でも、蓮司様はあんまり仕事に対してストレスを感じないタイプですから」
「うーーーん。なんだろう……まさか???」
「まさか!!!なんですか??」
急に顔が赤くなる美代。
真田がかなり期待をもって美代を見つめる・・
「言わせるんですか? 真田さん!!」
「ええ!!是非、お聞きしたいです。美代様!!」
「………真田さんの変態!!」
と言いながら、美代はその部屋から走り去った。
……ええ? 変態?? なんですか? 何を想像したんですか? 美代様!
美代の見解
夜食べ過ぎて便秘になり、お腹が不快になり寝不足。
真田の見解。
夜、いやらしいことを考えすぎて、男の生理現象のために………以下省略。
意外に真田さんもエッチだった。
蓮司が朝の身支度をしている。大きなそのウォークインクローゼットには、見事にそのカラーや素材に分けられていた。そのあざやかな薄ブルーのシャツは、パリッと糊が効いていて、蓮司のよく鍛え上げられた体にしなやかにまとわりついた。ネクタイも無造作に選ぶが、もともと色彩感覚が優れているのが、その上に羽織った濃い藍色生地の細いストライプが入ったイタリア式の3ピースのスーツだった。ネクタイの位置をもう一度確かめる。
あまり自分を鏡で見直すことのしない蓮司だが、今日だけはなにか思惑があるのが二度見、三度見と鏡を見直した。
「ふぅ……」
そして、おもむろに自分の書斎がある部屋へと行く。ここには、あのペンやらパソコンやら自分の小物がここに置いてある。
朝の朝食はここで簡単に済ませることが多い。ダイニングまでわざわざ行かないのだ。ちょっと古風な蓮司は、朝必ず英字新聞二紙、経済関連の新聞二紙、そして、一般紙四紙に必ず目を通していた。今日は、本当は意中の人がいると思われるダイニングまで行きたかったのだが、その人が、
「会長、真田さんから聞きました。書斎でいつも軽く朝食を召し上がるということなので、そちらで私、忘れ物係りの最終点検をしたいと思います」
彼女の提案に舞い上がる。
いいじゃないか。朝から世話を焼いてくれる彼女がいるなんて・・
蓮司の妄想
『あなた、忘れ物ないですか?』
『あー、全部入れたと思うぞ』
『あ、わ す れ て る!』
『なんだ! ペンもパソコンもティッシュも全部、持ったぞ』
『わたしに、キ・ス!!』
!!!!!!!!!!!!
人から見れば、完璧な男。スタイル、容姿、地位、財力。
その男は書斎の自分のテーブルの椅子に座りながら、見苦しいほどに、悶絶していた。
トントンっ。
ドアを叩く音がする。
自分に言い聞かせ、顔に鉄仮面をかぶせた。
「入れ……」
「失礼いたします」
昨日の初詣騒ぎがうそのように、静かにそして、いつものように美代がかしこまって部屋に入ってきた。ただ、違うのが、これが蓮司の本宅の書斎というだけだった。
「蓮司会長!! いきますよ! ご覚悟を!!!」
美代はかなり気合をいれながら、蓮司を凝視する。なぜなら、いまのこの状況、忘れ物お届け係にはとっては夢の状態、忘れ物チェックができるのだ。今まで、何度もこの状況を夢見てきた。いま、目の前に鎮座している美形の御曹司に、朝のチェックを覚えさせなければと、美代は使命感に溢れていた。
そんな気合いの入ってる美代とは正反対に、美代の言っている意味を完全に忘れている蓮司は、「何をだ?」と、惚けた返事をしてしまった。
「蓮司会長!! いいですか?いま全部忘れ物の名前を言いますから、きちっと確認してください! いいですか? いくら、総裁とか会長とかいっぱい偉い名前がついてでもですねー、こんな忘れ物の多い大人って正直許されないと思うんです!」
「……はい」
先ほどのスーツを着替えた時のような王者の風格は消え失せ、借りてきた子猫のように大人しくなる。
「いいですか! いきますよ!!」
ポケットから折りたたんであった紙を取り出し、美代は上からいままでにあった忘れ物を全部読み出した。
「会長!!!チェックしてください。あるなら、あるって言っていただかないとわかりません」
実は、蓮司聞いているのだが、一生懸命怒りながら忘れ物を読んでいく美代が可愛すぎて、彼女の言うことが全く頭に入ってこない。
「いきますよ。ペン」
「はい」
「ノート型パソコン」
「はい」
「携帯電話2個」
「はい」
「はい」
「はい」
「会長!! 聞いてないでしょ? 返事が多すぎます」
これが何回も繰り返され、しまいに頭にきた美代が、
「もう! 知りません! 今日はストライキです。いま調べた限りで忘れ物はなさそうですが、今日は絶対にお届けしませんから! いいですか?」
「……はい」
涙目になりながら、蓮司は答えた。
そして、ちょっとしょんぼりしながら、出社となった。
美代はあっと言いながら、真田さんのホステス狂いの件について、なにも蓮司会長に言えなかった自分を叱咤した。
「この次はいわなくちゃね!!心配だもん……」
***
1月2日の午後の真田と美代の会話
「真田さん !やっとわかりました。やっぱり蓮司会長……重症ですね。忘れ物の……」
「どういうことですか?」
「あの考えたんですが、糖分とかが足りないんじゃないですか? 朝はあまりにぽーっとしてますよ。だから忘れ物が多いんだと思うんです。」
「……美代様。あの失礼ですが、他の可能性って考えられませんか?」
「え? 低血圧とか?」
「いえいえ」
「うーーん、寝不足気味?」
「いい線ですね。なんで寝不足なんでしょう?」
「やっぱり仕事が多いからじゃないですか?」
「うーーん。そうですね。でも、蓮司様はあんまり仕事に対してストレスを感じないタイプですから」
「うーーーん。なんだろう……まさか???」
「まさか!!!なんですか??」
急に顔が赤くなる美代。
真田がかなり期待をもって美代を見つめる・・
「言わせるんですか? 真田さん!!」
「ええ!!是非、お聞きしたいです。美代様!!」
「………真田さんの変態!!」
と言いながら、美代はその部屋から走り去った。
……ええ? 変態?? なんですか? 何を想像したんですか? 美代様!
美代の見解
夜食べ過ぎて便秘になり、お腹が不快になり寝不足。
真田の見解。
夜、いやらしいことを考えすぎて、男の生理現象のために………以下省略。
意外に真田さんもエッチだった。
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