私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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銀座クラブのホステス騒動3

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 実は、美代。ここに来るまえに歩美ちゃんに電話で連絡していた。どうしたら、クラブなどでお金を無駄にしてしまう同僚を救うにはどうしたらいいのか相談したのだ。

 歩美ちゃんが、
 「蓮司会長も一緒にその銀座のクラブにいるの?」
 「......うーーん。そうみたい」
 「しかも、プライベート?」
 「いままで、一回も真田さんはそういった会合とか接待には絶対でないんだよ......だから、そうとしか考えられない」
 「......鬼畜め。わかった。任せなさい。いますぐ、用意するから伊勢崎さんに途中で拾ってもらってくれる? 二人とも成敗してやるから!!」

 そして、なぜか伊勢崎さんの車の中で着替えをした。かなり恥ずかしかったけど、後ろは曇りガラスだし、後部座席と前席は小さな窓で区切られているから閉めてしまえば、前から見えないから、まあ大丈夫だといえば、大丈夫だ。

 「でも、歩美ちゃん、別に成敗しなくてもいいんだって。この衣装、必要なの???」
 「絶対に必要!!!成敗しよう! あいつらいろいろ美代に対して隠していることいっぱいあるっぽい」
 「え?隠し事?」
 「思い知らせてやろう。銀座の女よりあんたのほうがすごいってこと」
 「いやいや、それはないよっていうか、なんで私が銀座のオネー様たちと張り合うの。ただ、あのジーパンでクラブに乗り込む気合はちょっとないから......着替えはありがたいけど......これ、やり過ぎ......」

 まあ、あのつなぎでここにきてもよかったんだけどね。でもあの格好では夜の銀座のクラブの入り口で止められる可能性が高いと思った。

 出来上がったメイクをみて、歩美ちゃんがニヤリと微笑んだ。

 「ふふふっ。あの二人おったまげるよ。あー、一緒にいたいけど、私は帰るから!!ごめん! 将棋の中継が今晩やっているから! ごめんね。これから、将棋会館で出待ちなの!!」
 「あ、歩美ちゃん。ありがとうね」

 そして、美代はクラブの入り口に立っていた。
 正直、こんな格好してなぜ銀座のクラブまできてしまったから、ちょっと後悔している。
 孫にも衣装っていうけど、あれは贔屓目のはなしなんだよねっと思う。
 ああ、地味女に衣装ってなんか辛い。でも、同僚のためやるしかない。
 そして、今現在、伊勢崎さんが降ろしてくれた夜の電光と行きゆく人々の装いが眩しい銀座八丁目、クラブ花純のビルの前に降り立ったのだ。

***

 雫は黒服の『蓮司会長の忘れ物お届け係の“補佐”』という言葉を蓮司に伝えようと思ったが、ホールの入り口のざわつきに目がいく。

 そこには円状の大理石でできた床にギリシャ式のコロムが囲んであり、この有名クラブのシンボル的な内装がされているところだ。すぐ脇には白いグランドピアノが置かれている。

 そのシンボル的な入り口の円形上の場所に、春の息吹のような佇まいの女性が、キョロキョロしながら淡い水色の膝上のワンピースを着込み、ちょっと高さのあるハイヒール姿で立っていた。その薄色の生地は可愛らしい彼女の雰囲気に似合っていて、その透けるような白肌をさらに透明感あるものに見せていた。その新鮮な装いは、このクラブの中の女のプロ集団の中では異色を放つ春風だった。

 銀座のクラブにいた男たちがその異色の女性を見つめる。自分たちの淡い青春を思い出させてしまうような美代の姿に釘付けだ。黒服までもが美代に注目していた。

 その可愛らしい女性は、今までこのような場所に来たことがないのが明らかなように、目を見張りながらこのクラブ独特のゴージャスさと、煌びやかな雰囲気に驚いている様子だった。

 すると、近くに鎮座していたはずの御曹司が立ち上がった。顔はうっすらと赤みを帯びている。

 「くそっ......」

 舌打ちとともに蓮司は、どんどんと美代のほうに歩いていく。その様子に真田も気がつき、そちらのほうをみて立ち上がったが、自分の上司が先に行ってしまったため様子を見るためか、またソファーに座り込んだ。

 蓮司は自分のスーツの上着をさっと脱ぎだすと、それを驚いて自分を見つめている美代にかけさせた。

 「美代!! なんて格好だ!」

 蓮司の顔はかすかに赤い。
 美代は急に現れた自分の上司の言葉に深く苛立った。

ーーな、なんなの!!失礼な人。女性に対してもうちょっとデリカシーがあってもいいと思うのに......
 美代は心の中で悪態をついた。

 「か、会長!!あなたに言いたいことありますけど、今日は真田さんに会いに来ました」
 そう言いながら、真田さんのほうにずかずかと美代が歩いていく。

 ホステルさんたちも唖然としながら、この光景を見つめていた。
 「さ、真田さん!!」
 真田さんにはまだ両脇からホステルの手が真田の肩や膝に乗せられていた。
 「不潔!!」
 「ええ?ふ、ふけつ!!!」
 「真田さん!こんなことをしていたら、破産しますよ!!今日はキチンと最後まで真田さんがはまらないように見張っています」
 「え?見張るんですか? 美代様」
 「見張ります!!」
 そして、美代は真田の隣にガシっと座り込んだ。
 そんなざわざわしている店内に花純ママがやってきた。
 「まあこんな可愛らしい方がほんとうに蓮司様の補佐なんですぅか? まあ会長も隅におけませんね。お名前はなんておっしゃるの?」
 ママの威厳オーラに押されて、美代は一瞥して返答する。
 「土屋美代と申します。お騒がせして申し訳ありません。今日は同僚の様子を伺いに来ました。ママには申し訳ないですが、一緒に座らせていただきます」

 「同僚?」

 すべてがバレそうだったので、真田が花純ママを横に座らせ説明をする。もちろん、例の任務の事などは省いてだ。

 「そう? 真田さんっと本当はおっしゃるのね。いけずね。お二人さんは......嘘をついて......女を騙すだなんて......でも、美代さんは立派だわ。普通はそんなの無視してしまうけど、そうやって同僚の事をそこまで心配するなんて......真田さん、テイさんでなくて、良いわよね。こんな素敵な方を同僚に持てて、あなたは幸せね......」
 「いえ、こちらこそ申し訳ありません......」
テイ、こと真田も頭を下げた。
 「......わるかったな。すまん......」
 蓮司もそれに合わせるように謝る。

 「では、美代さんも楽しんでいってくださいね。まあそんなに怖がらなくても大丈夫よ...ゆっくりしてらして」

 銀座のママはその貫禄で、事態の収集を収めた。そして、ここはしばらくは、蓮司とこの補佐と呼ばれる女の子に時間をあげたほうが良さそうだというママならではの感でそこを立ち去った。

 残られたうちの一人、蓮司はさきほどから、隣りに座っている薄着のワンピースを着て、メガネなしのしかも化粧がキチンとされている美代が気になってしょうがない。こんな可愛くて薄着の美代を誰にも見せたくないし、見るなら自分だけにしてしまいたかった。先ほどからの男性客や黒服までの目線が気にくわない。みんな抹殺してやりたいとまで思ってしまう。でも、今は目の前の美代の格好をどうするかと頭を悩ませる。

 「美代。やっぱり寒いだろ。そんな薄着は......このマフラーもつけろ!」
 蓮司は顎をくいっと合図するだけで、黒服を呼びつけると自分のあの美代のお手製いマフラーを持って来させた。

 さきほどから大きなスーツの上着を無理やり着せられているのに、今度は黒服が持ってきたマフラーを無造作に受け取ると、美代の大きく開いた襟元にぐるぐる巻き始めた。

 「か、会長!!だいじょうぶです。見てください! 他の女性たちを! 外は真冬なのに、真夏でもだいじょうぶなような格好しているじゃないですか!」

 確かにみんな上品な装いだが、さりげなくノースリーブだったり、足にスリットが入っていたり、少々肌寒い格好をしているが、まったく寒さを感じない店内なのだ。

 「だめだ......お前はこれを着ていない限り、俺が許さん......」
 「許さんだなんて、何様ですか? 会長! 俺様すぎますよ」

 そんな会話の二人の間にどのホステスも入れない。

 美代自身、せっかく歩美ちゃんから貸してもらったドレスがこれではほとんど見えないでいる。

ーーいくら似合わないからって、こんなぐるぐる巻きにしなくたって......

 美代はやり場のない気持ちにブスッとしながら、じっと蓮司を睨んだ。

 そんな中、周りのホステスたちは慌てていた。

ーーな、なんなの?この娘。
ーーチビッコイただのガキなのに!!
ーーでも、なんなのこの親しげさ!?

 あの会長の隣にしっかりと座っているのだ。さきほどまでどのホステスも侵入を許さなかった領域に......
 ほとんどのホステスたちが、美代に対して敵対視をしようとする。そして、このチビっこいリスのような女の子を凝視した。

......ありえないだろう......(ホステスさん一致の意見)

ーーたしかにちょっと可愛い系だけど、敵対視するほどか??(ホステス歴3年 リカさん)
ーーどう考えても、このイケメンにこれ、ないでしょう?(ホステス歴2年 ヘルプ カレンさん)

 なぜか周りのホステスたちは、膨らんできていた嫉妬心と、自分たちのほうがはるかに上等な女であるというプライドが心の天秤に掛かる。

 一人のホステスがちょっと口をこぼす。

 「姪っ子をかばう叔父さん??」

 なぜか周りのホステスたちがその一言を聞いて、なるほど~~っという視線に変わる。
そして、なぜか美代を囲むホステスさんたちの雰囲気が良くなってきた。

 ただ二人のホステスを除いては......

 その一人、もちろん、雫はその考えに同意できていなかった。

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