私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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<閑話> 恋愛研究会

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 (たくさん実際している漫画や小説が仮名で出てきます。どれだけわかります? 完全にふざけた話です。あ、全話ふざけていました。失敬。よろしくお願いします)

 二人の真面目な男たちが、蓮司会長の私宅の書斎で、夜更けに話し合っていた。
数日前、なにか大量の本を真田は蓮司に渡していたのだ。『重要参考資料です』と一言付け加えて……。
 特別な会議でも始めるような緊張感が漂っていた。七三分けの真面目な顔をした燕尾服姿の男が話し始める。

 「蓮司様。あのこちら、僭越ながら女性が好きな理想の恋愛を描いている事例です。ご参考になると思いますので、どうぞこちらに置いておきます。御曹司を主に集めてみました」
 「おい、これ全部少女漫画とTL小説じゃないか……そんなもの俺が読む訳ないだろ」
 「いや、蓮司様。こちら女性に大人気。ということは、かなり女性心を掴んでおります。あ、一部、かなりエロい物も含まれますので、ご注意ください」
 「……置いて行け。一応だ……」
 「御意……」

 数日後。

 またまた蓮司の書斎にて、二人の男が応接セットのテーブルを囲み、ソファーに座り込んで、なにかの談義をしていた。

 「真田、この御曹司…!」
一つの単行本と取り上げ、真田に見せる。

 「あー、こちらですね。あのネット小説で有名なアルファポリスさんでの人気作品ですね、ヒロインが夜食をつくるというやつですね。似ていますね、蓮司会長と……とても、いい作品ですね。私は好きですねー。いい恋愛の参考になりませんか? ヒロインが健気なんですよー」
 「おい、冗談じゃないぞ。まったく参考にならないぞ…!おい、こいつら知り合ってから、なんと4年も待っているじゃないか!どんだけ待ってろというのか?」
 「……ああ、まあ、そうですね。でも、この会長様の忍耐力! 素晴らしいじゃないですか!蓮司会長も見習ってですね!!」
 「だから、4年も待った上に、しかも逃げられているじゃないか!」
 「まあ、そうですが……最後はぎっちり固めてないですか?」
 「いや、そのあと、また逃げられているぞ……続編で!!」
 「ですからね、蓮司会長にはそれを参考にしていただいてですね」

 真田は、蓮司がかなりふくれっ面なのが分かったので、次の本を紹介する。

 「では、こちらはどうですか……育てる愛の究極!!『花よりだん○』ですね。いかがでしょう。学園ドラマですが、やっぱり主人公は御曹司ですよ。名作なんですが……」
 「……おい、この漫画、37巻もあるんだぞ。しかも、結婚までの道のりが長すぎないか? F4なんて存在、俺が美代の側に置くと思うか……しかも、ヒロインの近くに、気にくわない奴がいるじゃないか! F4で」
 「まあ、蓮司会長が許すとかは……確かに、ありえないですね」
 「では、こちら、社長と小さな女の子がアンアンとイチャイチャしちゃう作品です。ほとんどポルノに近いですが、愛がございます」
 「男が手が早いっというところは、今までの漫画にないような展開だ。さすがエロ漫画だ。こいつに烈しく同意するぞ。まて、おい、お前こんなの読んでいるのか?」
 エロい場面を開きながら、真田を見つめる蓮司。

 「………」
 「………」

 「俺たち、かなりやばくないか……」
 「まあ、そうですね」
 「美代にいま見つかったら、完全に変態扱いだぞ!」
 「いや、見つからなくても、多少、そういった考えはお持ちかもしれないです」
 「「……」」

 「でも、この作品やっぱり完全におかしいぞ」
 「な、なにがですが!!エロでも愛があるじゃないですか!!」
 「ヒロインがすでに違うやつに抱かれてるじゃないか! しかも、結婚の約束まで!!!」
 「そう、そうなんです! そこが! ちょっとエロと愛の狭間の究極のねじれ愛で!!」

 真田は興奮した様子で話し続ける。

 「でも、蓮司会長!!ポイントは違うんです。あの、どうなっていますか?? ヒロインがヒーロー役に押されまくった結果……」
 「逃げられたな……」
 「そうですよ……逃げちゃうんですよ!!」
 「でも、その逃げたリスを捕まえたいという欲望がおれにはある……どうやら、お前の趣味と俺の趣味はどうやら違うらしいな」
 「そうですね」
 二人の男がなぜかえっちな漫画を片手ににらみ合う。

 「では、あちらはどうですか!!気分を変えて、ガラスのお面! 御曹司と天才地味女優の恋愛成長物語です!!」
 「ふっ、うーーーん。だからだな。何度も言っているが、一体何年たってんだ! この二人が知り合ってから、付き合うまで!」
 「えええ、私も最新情報ではないかもしれませんが、今の所、お互いが好きなのは確認できたようですが、付き合っていないような微妙なラインだそうです。しかも、あの当て馬の桜なんちゃら君が、また登場って、すごい当て馬ぶりなんですよ!この作品!名作です」
 「おい、まったく参考にならん。ヘタレの男の王道じゃないか!!」
 「では御曹司を離れて、恋愛漫画の王道で攻めてみましょう」
 「……ベルはら、男装の麗人と従者の恋、そして、貴族の男が出てきます」
 「おい、待て、これ、最後、従者死んでるぞ……」
 「まあ、そうですね」
 沈黙……
 「では、まあ気をとりなおして、スポ根どうですか?」
 「『エースを狙っちゃえ』です。古典ですよ。これまたドジな地味少女が、美形鬼テニスのコーチと美少女ライバルなどのあいだで、成長し恋愛するスポ根ドラマです」
 「……何度言わせるんだ。このコーチ、死ぬんだぞ」
 「……」
 「わかった。お前の言いたい事が!!」

 蓮司会長が叫んだ。

 「そうですか? わかりますか?」
 「おれに美代を待つことを死ぬほど強要するか、もしくは、おれに死ねってことか?」
 「解釈が違いますね、でも……」
 「でも、なんだ!!」
 「まあ、女性は逃げる生き物なんですよ」
 「……だったら、追って捕まえるしかないじゃないか?」
 「でも、そのタイミングが、間違えると……」
 「逃げられたり……おれが死ぬのか?」
 「いえ、すべてがそういうわけではありませんが、運命がいたずらしますね」
 「だが、これ、漫画や小説の世界だぞ!?」
 「……」

 そして、なぜかもう二度と行われないかと思われた二人の男の恋愛研究会が密かに続いた……。


 「くわああああ! なぜ早風くんは気がつかないんだ!!!」
 「うううっ。そんなんです。ヒロインが可愛いんですよ。根暗で!!」
 「だめだ、おれにはきつすぎる!! 眩しすぎる!!こいつら!」
「頑張ってください! 会長!!」

***

 「だめだ……この映画、おれを聖人にするつもりか……」
 「泣けるでしょう!!この映画『君に名前は?』」
 「おれは、もっと俗欲にまみれたいぞ。こんな!!泣ける、うううっ……俺を異次元にでも何にでも飛ばせ、真田。美代をそれで助ける」
 「いやいや、美代様は異次元にはいませんので、ご安心を」

 チーーンっと鼻をかむ御曹司。

***

 「蓮司会長、これやばいです」
 「や、やめてくれ。おれのハートはすでに中学生になり下がった。威厳が保てん」
 「これです! 『これは恋のお話です』」
 「タイトルが無難過ぎないか・・」

 しばらく読書タイムが続いた。

 「さ、真田!なっ、なんて話だ!」
 「感動じゃないですか? この忍耐愛!」
 「ば、ばかを言え! ヒロイン、最初は小学生だぞ!」
 「ですから、ヒロインがですね、きちんと大人に成長するまで待ってですね、しかもヒロインの意思、想いが尊重されてですねー、恋が成り立つんです!」
 なにか真田が嫌なタイプの悪寒を感じた。
 「さ、真田~。おまえ、おれがどれだけ美代を待てばいいと思っているんだ?」
 「いやー、この場合、ヒロイン自身が大きくなりたかったみたいですからね。彼に認められたくて、泣けますね~~」
 「おい、答えが出てないぞ」
 「お、おかしいですね。先程まで、たしか中学生のようなピュアな気持ちになり下がったと言ったじゃないですか?」
 「……俺は、美代が好きだ」
 「存じております。清々しい告白ですね」
 「誰にもやらんぞ」
 「わかっております。かわいいですね。蓮司会長も。ちょっとこの資料が役に立ちましたかな?」
 「……ああ、抱きしめて、おれの腕の中で啼かせて、狂わせたい」
 「……あ、あれ?」
 「いや、しばらく閉じ込めて、俺だけを形を覚えさせるか……」
 「ひ、卑猥です!ダメです。逃げますよ!完全に無理強いです。それ!」

 蓮司会長がニヤリと色気のある笑みを浮かべる。

 「真田、何度も言うがな。俺は正直、逃げた子リスを捕まえるは悪くないと思っている。あいつの泣き顔もソソるしな……」

 その微笑が何故かとても悪魔的に見えた。

 しばらく、この続いた恋愛研究会、やっぱりあんまり効果なしとされ、真田の独断で中止となった。

 残念。

 (果たしてみなさん、すべての漫画わかったかな? ちょっと簡単すぎたかな?)

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