私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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美代 翌日の気まずさを味わう

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 大原邸、真田の仕事部屋。
 「はい、それでいつ発売ですか?」
 メガネをかっちりとかけた真田が、誰かと電話口で話している。
 「今日? それはそちらも急ぎましたね。まあ、一応、こちらも承諾はとってありますので、大丈夫ですよ。ただ、あの件についてはまた……」

 ゲラ刷りされた印刷物を眺める真田。電話を切ったあと、ため息をつく。

「はあー、果たしてこれが、上手くいくか……」

 そして、また違うレポートを読みだした。

 「こちらもまた、厄介だな」 

 指で写真付きのレポートをペラペラとめくり始めた。

***

 シャワールームを出て、リビングルームに行くと、吉澤さんが笑顔で出迎えてくれた。

 「おはようございます。美代様。ご機嫌いかがでしょうか? 洋食、和食どちらがお好みでしょうか?」

 さすが吉澤さんだ! 返答が二者一択にしてくれてる! 昨夜の事を聞かれると恥ずかしかった美代はほっとする。

 「本当なら、昨晩はもっと航行するはずでしたが、蓮司様が美代様が初航海で気分が悪くなると困ると言われまして、昨晩から沖合に停泊中なんですよ」

 美代の好みの紅茶を淹れながら、吉澤が会話を勧める。
 昨晩という言葉が気にかかる。あれ、待て。みんな、もしかして、やっちゃったと思ってる? そうなの? いや、どう考えてもそうでしょ! でも、じつは確かではない。どうやら先ほどシャワールームで奇声を発してしまった。なぜなら、身体中に、あの虫刺され後がついているのだ! しかも、かなり、その際どいとこまでヤラレている。

 現在、美代。自分が新品なのか使用済みなのかがよくわからない。

 「待たせたな……」

 その真偽を知っている人物が現れた。この身体中につけられた赤いマークについて、問いただしたいが何をきっかけに聞いていいかわからない。憎らしいくらいの清々しさ。むかっとしていたが、蓮司の男前な顔を見て、とても幸せそうな表情を見ていると、なんだかもうどうでもいいような気がしてきた。実際、果たして需要なことなのだろうか?
 楽しかったじゃないか? いい思い出には変わらない。
 二人であまり会話もなく朝食を摂る。これが、あのよく言う「翌日の気まずい雰囲気」なのだろうか?

 「明日は学校なので今日はもう帰りたい」とお願いすると、ちょっと考えこんだ蓮司は、ただ「わかった。送る」っと一言、言っただけで、船長の松永さんに指示し、帰港したとたん、また会長の車に乗せられ、ボロアパートに送られた。

 車を降りる時、ぐいっと手を引っ張られる。

 「楽しかった……美代」

 そう言われた途端、後頭部を抑えられて深いキスを受ける。目も眩むような、全身の力が抜け落ちるようなキスだった。

 「また……」

 そう言われてそこを立ち去る。

 ああ、このゲームの勝者は一体誰なのか? と疑問が浮かぶ。でも、ここからが本当に自分の試練が待っていたとは、全くわからなかった。


***


 昨晩の出来事。

 蓮司は自分の嘘寝にまんまと騙されて、寝息を静かにたてていた美代を見つめる。自分は馬鹿だと思う。こんなみすみすこのチャンスを逃すとは。でも、考えても美代の態度がいささか不安定というか、このまま同じように愛しても、自分の愛が届くかいささか不安だった。

 悶々とした時間が続く。

 可愛らしい、いや、美味しそうな果樹が隣にあるのに食べないと決断した自分は馬鹿だ。
 
 グラスにまたバーボンを注いでしまう。グラスの中の氷がカラッと軽い音を立てた。年代物のウィスキーの味が妙に舌に沁みる。さっきまでの舌触りや味を思い出し、またグラスに口をつける。

 まずい。忘れるつもりがもっと思い出してしまい、つらい。

 そんな中、美代がもそもそしたかと思うと「暑い!」と言って、バスローブの間から、艶かしい脚を露わにする。

 ぶっとウィスキーを吹き出しそうになる。

 「おっ前は、人の気も知らんで………」

 薄いシーツだけをその上にかける。が、そんな行為をした自分を呪う。今度は暑さに堪えられない美代が、ベットの中でバスローブを脱ぎ捨てそのまま寝てしまったのだ。

 「!!!」

 少し灯を落としていたので、その仄かな灯に白い肢体が浮き上がる。初めて見たわけではないのに、まるで自分の中のマグマのような欲望が湧き上がる。

 「美代。お仕置きだ。思い知ればいい、男はズルいんだ………」

 熱い吐息が美代の裸に堕ちていった。


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