私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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美代のお願い 蓮司のお願い

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 「ふ、ふざけるな!」
 A4の紙を切り裂こうとした。真田は止めない。何百枚破れようが用意は万全だ。
 蓮司が物凄い形相でもう一枚の写真を握り潰す。主人の怒りは想像していた通りだったのだろう、真田の眉は微動たりともしなかった。

 「妨害を加えれば、美代様が悲しむのは当然ですので、偶然というのは恐ろしいというか、奇遇過ぎますね」
 「ただ、黙って見ていろというのか?」
 「その方が、美代様の為かと」
 「何でわざわざ近づけなくてはならんのだ。なぜうちでは出来んのだ?」
 「一応、あちらが持っている資料などではかないません」

 写真を握りつぶしている蓮司の手は怒りで震えているようだった。
 まるで鬼の形相のような蓮司の表情に真田は、今までに感じたことのない冷たいものを自分の背筋に感じた。
 声に出さない蓮司の怒りが空気を重くし、緊張感を走らせる。ただ、真田としては、補佐として出来ることを述べるだけだった。

 「譲らんぞ。絶対に……」
 「分かっております」
 「こちらはまた別件ですが、進展がありまして」

 その資料を仕方が無さそうに見たが、その内容に驚愕する。

 「真田、これは……」
 「はい、こちらも正念場かと……」
 「あちらに行かれますか?」
 「ああ、そうしてくれ。あと悪いが、熱いコーヒーも頼む。あと、発つ前に人に会いたい人がいるから、時間の都合をつけてくれ」
 「もしかして?」
 「ああ、直接話す」
 「御意……」


***

 学校に久しぶりに来たような感じだ。
 学校の校門には騒然としていた。なぜなら、どう考えても、幾人かの報道陣が明らかな出待ちをしていたからだ。
 何か学校に不祥事があったのだろうか?と疑問符が頭をよぎる。

 そこを通り掛かろうとした瞬間、背後から腕を取られる。うわっと声を出そうになったが、口まで覆われて慌てた。

 「美代、裏門から行った方がいいよ」
 「歩美ちゃん!」
 「あれ(報道陣を指差しながら)、もしかしたら、あんた待っているのかもよ」
 「な! 」
 「さっきね、この女の子に似ている子知らないって聞かれたから!」
 歩美がバックの中から例の週刊誌を出して、抱き合う二人の写真を見せる。

 「ええええ!」

 驚いて顎が外れそうだ。

 「どうやら名前とかは知らないし、あの写真もかなり望遠だったから、正確には顔がわからないみたいよ」
 「そっか、良かった」
 「……」
 「あんた、今、完全に肯定したわね! あの白昼堂々を抱き合う二人!!」

 歩美ちゃんを見ていたら、不安だった気持ちが溢れてきて彼女に抱きついた。

 「歩美ちゃーーん!! もうどうしよう!」
 「美代、やっぱり王手だったんでしょう? 大丈夫?」
 「ああーーーん、まじ王手だった。やられたよ。どうしよう」
 「泣かないで、美代。大丈夫。私が守ってあげるから、ちょっとお昼の時間に話しなさいよ」

 お昼、学食の一番の端。

 「えええええええ! 何それ? 豪華なんだかチープなんだかわけわかんないコースね」

 美代は悩んだ。あの身体中のマークのこと。歩美に話したい反面、ちょっとここまで話していいか悩んだ。

 「それで、美代はその超でっかいプライベートボートで一泊したの?」
 「……はい」
 「ごめん。詳しいことは聞かない。でも、美代はどうしたいの?」

 会長のことが好きなの?と歩美は聞きたかったが、それは正直、一番の問題ではないような気がしたのだ。やはり、一番は美代がどうしたいのかだ。

 「わかんない。でも、ちょっと距離を置きたい、が正直かな」
 「距離ね……」

 あの大魔王がそれを許すかどうか、考えても難しそうだった。しかも、あの恋愛報道だ。どう考えても、蓮司が許可して撮影したとしか思えない感じだ。
 外堀から埋めたくなるほど、奴は焦っているのか? なぜ?

 「美代、電話貸しな! 奴の連絡先は? 携帯のだよ!」
 「真田さんの?」
 「あ、それは別件で欲しいな。違うよ。蓮司会長のだよ!」

 実は車で送られ時、教えてくれたというより、強制的に電話番号の入力をさせられた。
「俺の目の前で入れろ!」と命令口調で言われ、首元にキスを繰り返しさせながら、ボタンのキーを間違えると唇を奪われるという、かなり羞恥プレイだった。

 蓮司の携帯にダイヤルをする。

 「美代。嬉しいよ。電話くれて……」

 相手が歩美と知らず、甘い声の蓮司が答える。歩美は手加減せずに、怒鳴り始めた。

 「会長! ふっざけんなよ。あんたの余計な小細工のせいで美代の大学生活が脅かされているよ。どうしてくれんだよ。学校にまで報道陣が押しかけて、大変なんだよ。あんたぐらいの力が有れば、あんな報道陣ぐらいどうにもなるだろ? 追っ払えよ。じゃないと美代、お前と別れるって。そんな狭い器量のやつは願い下げらしいぞ」
 「……おい、待て、美代がいるのか? そこに? 出してくれないか?」
 「ふん、待ってろよ。美代、言ってやれ。困っているって!」
 電話を美代が持ち直す。
 「……会長、困ってます」
 「……わかった。なんとかする、そういう困られるつもりはなかった。悪い美代。 でも、俺は……愛しているから、待っている」

 美代は答え返せずにいるうちに、歩美に電話を取られた。

 「わかった? あとね、こんな美代は不安定な状態だから、お仕事はしばらく休むから、あ、でもね。給料は振り込めよ。あんたならわかるよね。美代、あんまり話さないけど、この状態作ったの、会長さん、あんたでしょ? 美代はかなり女友だちと過ごす時間が必要ですから! いい? 承諾?」

 ちょっとの間、無言が続く。

 「わかった。承諾しよう。でも、歩美さんにはちょっとお願いしたいことがある」

 ちょっと電話口の歩美は目を見張る。だが、その目線の先には、美代がとても心配そうな顔をして、歩美を見つめ返していた。



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