私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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白石先生と美代の過去

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<一部暴力シーンが含まれます。ご注意ください>



 白石先生とこうやってまともな状態で話しをできる自分が嬉しい。彼に出会ったのは偶然だった。闇金融という言葉さえ、当時の美代は知らなかった。まさかそこまでうちの会社が危ないとは10代の美代にはわからなかった。
 悪いことが重なった。不慮の事故、両親の他界、残された借金。
 会社はもちろん、抵当に入っていたので取られた。自宅もだ。頼る親戚も美代にはいなかった。知り合いの友達の家に居候をしていたが、そこまでチンピラ風の金取りが来たのだ。そこまでは迷惑をかけられない。
 公園で所謂、路上暮らしの高校生だった。
 人気のない路地に連れ込まれた。高校の学校帰りを狙われたのだ。

 「おめぇ、探したよ。こんなとこにいたのかよ。親、恨めよ!」
 「ふざけるなっ。親は関係ない!」

 その顔と仕草が爬虫類のような感じの男は、ペロリと舌を舐める仕草をする。気持ち悪い男だ。

 「言ってろ、言ってろ。残念だな。お前みたいな世間を知らないお嬢様が堕ちるとは、世の中、無情だな……このままいいところの大学に行けたのだろうに、だから、なあ、親を恨めって、言ってんだろう~!!」

 ドスの利いた声が路上に響いた。

 「う、五月蠅い! 親は恨まない! 絶対に。大学でいってやるわ!」
 「ばかな。住む家も金なくてどうするんだ。あるのは俺らに借金だけだぞ」

 男に平手で殴られた。一瞬、星が見えるぐらいの衝撃だった。親にも一度殴られたことがないのに、その痛さは精神的なものの方が酷かった。
 口元から鉄の味がした。どうやら口の中が切れたらしい。

 「ははは、いい睨み顔だ。まあ美人局にはまだ治るのに時間かかるから、俺が可愛がってやるよ」

 髪の毛ごと引っ張られた。全身全てで拒否をして、もがいていると、ドスンっとそのチンピラ男が倒れていた。まだ口の中がヒリヒリし、血の味がするからあまりうまく口が開けない。

 「大丈夫か? 無理に喋らなくてもいい」

 その大人のひとは、携帯で連絡すると、すぐさま警察官が駆けつけた。

 「私は弁護士だ。こいつはこの少女を殴った上、無理やり誘拐しようとしていた」

 それから、病院での処置、警察官による事情聴取などに時間がかかる。そのあと、このチンピラは先生のお陰と私の証言、そして、他の詐欺事件にも関わっていたお尋ね者だったらしく、あっさりと御用になった。
 白石先生は、美代をそうやって助けただけではなく、残りの借金の取り立て屋の処理や奨学金などの申請、救済グループの人達まで紹介し、自らも率先して助けてくれたのだ。つまり、残りの高校生活を支えてくれた恩人だ。
 いろいろバタバタがあったせいで、美代は一年遅れて大学に入学した。美代にとっては、たった一年で奨学金や生活の目処がついたことが奇跡だった。

 「僕はちょっとある訴訟の件でしばらく日本を開けるから、僕のマンション使っていいよ」
と、白石先生は言っくれた。
 「いや、そんな、これ以上先生のお世話になるわけにはいかないので、お気持ちだけで結構です」
 「そっか、やっぱり。だめだよね。そう言われると思った」
 何故な残念そうな顔をした白石先生。

 「まだ、君は未成年者だ。20歳を過ぎたら、また会おう。その頃には、君はきっと晴れて大学生だろう。それまで、頑張れよ。あ! 変な男とかには気をつけろよ」
 「ははは! だれがこんな地味女を誘うんでしょうか? しかも、ちょっとまだ人前に出るのが、苦手なんですよ」

 白石先生は、私の頭をくしゃくしゃにしながら、
 「変わってほしいけど、変わってほしくないな。でも、時間が必要だな。君にも僕にも」

 爽やかなハンサム顔で若手弁護士は、別れを告げ、渡米した。

 手紙でのやり取りは最初は続いていた。ネット料金さえ払えなかった美代だったので、オールドファッションな手紙だった。それも、美代の仕事が大変になると、一週間に一度の手紙の返信が二週間になり、三週間、二ヶ月、半年となり、最近は皆無だったのだ。

 「ちょっと直接会って美代ちゃんに話したいことがあるんだ……」

 少し躊躇いがちな白石先生はそう言った。 
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