私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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真田 たこ焼きは嫌いですと言いたい

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 物凄い衝撃を頬に感じた。それと同時に床に倒れこむ。
 口の中が完全に切れたようだ。血の生臭い味がする。目の前に完全に切れた蓮司がバスローブを羽織って仁王立ちしていた。蓮司も美代を探す前にシャワーを浴びたらしかった。蓮司がただこちらを睨んでいるだけなのに、底冷えするような恐ろしさを感じた。

 やはり先ほどの陳腐な言い訳など蓮司には効かないと改めて感じるが、他になんて言えばいいのか?
 しかも、何故美代様が裸状態で寝ている意味がわからない。起き上がりながら、説明する。

「……ち、ちがう、んです。うっ」

 また物凄い衝撃を腹に食う。

 鈍痛が身体に響く。
 ああ、マズイ。マズすぎる。
 久しぶりの蓮司の拳も蹴りも凄まじい破壊力だ。でも、ギリギリ彼が抑えているのを感じる。本気だが、殺さないつもりらしい。
 ありがたい。しかし、これはたこ焼きコースだと真田は感じた。蓮司の眼が刺すような鋭さだ。

 昔、見た蓮司の眼だ。
 あのマフィアのボス、コウから龍を救ったときのようなキレやすく、慈悲もないような鬼神のようだった。この恐ろしい蓮司を見て、コウは蓮司に惚れたのだ。

 日本にこんな悪魔がいるとは、、、とコウは蓮司のパンチをくらい続け、笑みを浮かべたのだ。

 たこ焼きとは、顔がたこ焼きのように腫れるまで殴られ、しかもたこ焼きをひっくり返すように蹴られる拷問だ。相手に全く反逆の隙など与えない。しかも、複数名に一緒にブチのめすことができた。だから、たこ焼きなのだ。
 この名を命名したのは誰だか知らないが、それから真面目にたこ焼きという食べ物が苦手になった。大人になった蓮司は滅多にこのようなことはしなかったが、昔、ちょっと日本の高校に行っていた時代、荒れた時期があり、その時代の名残のような技だった。正直、また見たくも味わいたくもない懐かしい技だが、あの白石の事で激情した蓮司を見て、美代に忠告したものだった。もちろん、美代にそんな暴力をするはずない。主に周りが迷惑なのだ。

 しかもあのころより蓮司の体はもっと逞しくなり鍛え上げられている。パンチや蹴りをうまく受け身で避けても、体に効いているのは間違いない。ここは、やられてばかりでは、状況は変わらない。仕方がなく真田は立ち上がる。

 「さっきの言葉聞いたぞ」

 唸りながら蓮司が話す。

--え、なんだ? なんて言ったっけ?

 考えている間にパンチが入るが、上手くかわした。これが良くなかったらしい。蓮司の激情を加速させる。

 「お前も一応、男だと誇張してたな」

--うわー、最悪だ。前後の状況を知らないで、最後の言葉だけで理解したのか? 

「うっ。違います。いや、言いましたが、違う理由で……うっ!」

 また鈍痛が走る。真田も自分は意外と格闘技は得意だが、蓮司には敵わない。彼の一発ずつ食らうパンチが半端ないのだ。

 蓮司の険しい顔の眉間が更に深い皺を作り出した。逆らわない真田にイライラしながら、睨んだ。

 「真田……か、解雇だ」

 耳を一瞬疑った。
 聞いた言葉が信じられない。

 「なんと? おっしゃいましたか?」
 「真田、お前だけは信じていたのに! 許せない! 辞めてもらう!」

 真田はしばし俯いて考えた。
 そして、肩を震わせる。それが怒りなのか屈辱からくるのか、それとも全く違うものなのかわからなかった。
 今まで真田家の執事、または家令の立場のものが解雇になったことがなかった。ありえないことだった。普通の失態なら強制的に休暇をとらせるか、または違う別邸に配置替えなどが通例のお仕置きだ。それほど、真田が失態が深刻だったという事だ。代々従事する者達の関係を非常に従事する大原家で、重鎮の解雇などはあり得なかった。
 前代未聞の処置だった。

 怒っている筈の蓮司は、真田を睨みながらほとんど泣きそうな顔をしていた。

「……真田、お前が美代をいくら好きでも、ダメだ。譲れない。無理だ。お前には感謝しきれないが、これだけは、おまえが俺の屍を越えていかないかぎり、許せん」

 話しを聞いていた真田はかすかに震えた声を小さく出した。

「*******」
「なんだ、聞こえないぞ」

 真田は打たれた腹を抑えながら、叫んだ。

「ば、馬鹿、御曹司め、目を覚ませ!」
「な、なんだと! 真田」

 次は腹の底から声を出す。

「馬鹿だ、馬鹿だ、大馬鹿だ!」

 焦った蓮司が真田に殴りかかる。
 真田は力を振り絞り、それを手のひらで受け止めた。そして、蓮司が油断している間に反対の手で蓮司の腹を狙う。

 ハダけたバスローブのお腹の溝に入ったと思ったのに、蓮司は、にやっとそのパンチを腹で受け止めた。

 「くそっ!」
 「まだまだだな。もうじいさんか? 真田は?」
 「その嫉妬の塊、もうちょっとなんとかしないと美代さまにきらわれますよ」
 「ふ、ふざけるな! お前が仕組んだんだろ!」
 「はー、なんでビジネスに於いては天賦の才能の持主のに、どうして美代様のことには、こんなに抜けちゃうんですか? うっ!」
 「な、なんだ。その見解!」

 二人はお互いに罵りあいながら、殴り合いをしていた。
 蓮司も着ていたバスローブがハダけ落ちできた。まるでボクシングの試合のような光景だ。

 ふざけるなとか、かなり効くなとか、殴り合いの音と共に男達の怒号が響いた。スヤスヤと寝ていたはずの誰かさんが目を覚ます。鍛え上げられた裸がぶつかり合う音が耳に入った。




 (な、なに!? 何が起きているの?)
 
 この喧嘩を作った原因の張本人が、目覚めた。なにか男たちが罵声が飛びあっている。果たしてここで、後ろを振り向いてなにが起きているか怖くてみれない。ど、泥棒なの? 

 しかし、蓮司の声が美代に届く。

 「美代は俺のもんだ」
 「わかってま、うっっ」

 会長?
 声や音の方に無理やり身体を向けて、目を開けた。

 会長!
 真田さん? 顔が!顔が!
 え、ヤダ!

 驚きのあまり、自分の姿などを確認する前に悲鳴をあげた。

 「ギャーーーーー! 二人とも、何故、裸なの!!!」

 思わず手で目を隠す。

 「「あ……」」

 二人は今、気がついた。タオルもバスローブも床の上だった。
 真田の腫れ上がった顔はかなり悲惨でもあったが、それよりも己の裸姿に気がついた二人はなぜか女子の悲鳴で驚いて反射的に身を隠すために抱き合った。

 そして、美代の悲鳴を聞きつけて、山川達が重装備で駆けつける。

 だが、状況は山川が今まで見た現場の中で、最も見たくも考えたくもない修羅場?のようだった。
 どう考えても入りたくないっと山川は心の中で呟いた。

 ほぼ裸の女、美代が真田のベッドに一人いる。それだけも大問題なのに、なぜか、真田と蓮司がこれまた裸で抱き合っている?!
 しかも、真田の顔は悲惨な状態だ。

--え、俺の知らないところでいろんな世界のドアが開いちゃったのか? それともこれは……、

 修羅場なのか?

 判断が不可能だった。

 「え? これ、俺たち、お邪魔? かな?」

 山川のボケとは言えないつぶやきに三人の声が揃う。

 「「「違うっ!!!」」」




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