私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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世間知らずの美少女は破壊兵器に近いと思った件。by 受付嬢

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 「はい? もう一度言って頂けますか?」
 まだメディファクトの会長室にいる矢崎が電話口で答える。
 「歩美様という方ですか……。え? 今、受付なんですか? でも、いま真田代行は業務が立て込んでいて……予約してない場合は……」
 矢崎が真田の横で書類の整理をしながら、代行の仕事を手伝いながら電話口で答える。
 「矢崎、通せ。美代様のご学友、しかも歩美さんだ。無下むげにはできん」
 「でも、代行、この仕事量、どんだけ……」
 「矢崎、この会話だけでも5秒のロスだ。そのままここに来る様に、受付のものに言ってください」
 真田はいつになく厳しい声で矢崎に言う。

 矢崎は「かしこまりました」としか言えなかった。
 矢崎が真田に言われた様に、歩美を上にあげていいと言ったら、受付嬢が言葉を失っているのが電話口でもわかった。そんな事は今までなかったので、何かが問題なのかと思い、矢崎は思わず尋ねた。
 「あの、大丈夫ですか? あの秘書課から一人そちらに向かわせますので……」
 「え、あ、はい、申し訳ありません。矢崎秘書。わかりました」
 受付嬢がハッと気がついたように返事をした。
 歩美を待つ短い間、真田が矢崎に話しかける。口調が一気にいつもの真田に戻った。
 「矢崎秘書、ご迷惑をおかけします。総裁代行とはいえ、裏方の仕事を全て放棄したわけではありません。蓮司様の大事な方のご親友ですから、本人がここに来るのはよほどの事だと思いまして、申し訳ありませんが、彼女に時間をあげたいのです」
 「畏まりました…」
 会長の部屋がノックされ、案内して来た秘書課の勤続5年目の水元薫子は、驚きを全く顔に出さずに、歩美を案内した。
 「ありがとうございます。水元さん。助かりました」
 真田がにこやかにお礼を言う。
 いつもは蓮司会長の前でも鉄板の表情で、何も感情を出さない技術がある彼女でも、顔が少し赤かった。

 10分前のメディファクト本社受付。

 一人の美少女が正面ドアから颯爽と入って来た。

 入って来た美少女はまるで本当にフランス人形の様な姿見すがたみだ。
 多分、普通のその辺で売っているシンプルなワンピースなのだが、なぜかとても高級で上品なものに見えた。
 だが、ここに入るのが明らかに初めてであるかの様に周りを見回していた。
 新しい新人モデルか、アイドルかしら、と五名体制で行なっている受付嬢達は思った。
 今日は公開オーディションなどはないので、来るとしたら、アポがある新人の可能性だ。
 だが、彼女は社内用パスを持っていない。
 だとしたら、考えられる可能性は飛び込みの売り込みだ。
 この容姿なら有り得るわね……、にっこりとプロフェッショナルな笑みで受付嬢三年目の丸橋理沙子まるばしりさこはこのいきなり現れた美少女に話しかける。
 
 「失礼ですが、今日はどの様なご用件でいらっしゃいますか?」
 「あ、私、工藤歩美と申します。真田さんに会いたいんですけど……」
 受付嬢全員がびくんと肩を震わせた。
 いつもなら、「大原蓮司に会わせて!」と来るとアポなしの女性達を、鉄仮面のような笑顔を崩さないで追い返すのが彼女達の仕事だ。ある意味、精鋭達の中の精鋭。彼女達はまるで蓮司の親衛隊のような連帯感があった。ただ、最近、蓮司会長があのつなぎが妙に似合う地味女をかなりご執心だったので、受付嬢達の間もざわついたが、この頃は全く見かけない。噂では裏口から出たり入ったりしているらしい。本当なのか怪しいが、どんだけ秘密情報を持ってんだ、と言う話になる。
 だが、今日から彼女達の連帯感が揺らいだ。
 なぜなら、あの真田総裁兼会長代行の登場だ。

 今日、蓮司が真田を呼び出してからすぐに、真田はビジネス用のいでたちでメディファクトの正面玄関に降り立った。
 連絡をすでに会長から受けていた受付は、久しぶりの真田の登場に震えた。
 会長はもう天上人。自分達がどう考えても手に届かない。
 いつも最高クラスの美女達にも囲まれていても、全く変わらない表情と態度。
 しかも、自分達が働く会社のトップだ。あまり下手な事は出来ない。
 だが、同じ真田の場合は別だ。
 彼の本職のタイトルは補佐だ。位置的に秘書課の第一秘書矢崎と同等扱いなのだ。
 ただ、会長のことをよく知るものは、真田がの補佐ではない事を知っている。
 どの世の中、どの補佐が会長代行などするのか? 
 蓮司の信頼度が抜群にある真田ならではのポジションだが、この男の欲のない態度は他の役職達にとっては全く脅威に感じないようで、割と役員達とも表面上、友好関係を保っていた。
 つまり、受付嬢にとっては、今一番、手に届きそうな超優良物件だったのだ。
 それなのに、いまここに現れた、彼を訪ねる女の意図がさっぱりわからない。

 今日づけで真田総裁兼会長代行になったのだが、まだそれは会社内でも少人数、外ならもっと知られていないはずだ。
 会長にアポがある来客には、もちろん事実を述べるが、いきなり現れた学生のようなこの美少女が知るような内容ではないからだ。

 「え、申し訳ございません。どの部署の真田でしょうか? 恐れ入りますが、お約束をいただいておりますでしょうか?」
 受付嬢の丸橋理沙子はこの状況をどうにかしないといけないという使命感を感じた。しかも、残り四名の受付嬢から無言のプレッシャーさえ感じる。
 「あーー、そうね。総裁、いや会長? どっちだったかしら。紛らわしいわよね。どっちかにすればいいのにね、あの変態男。ともかく、その代行の真田さんよ。真田代行っていえば、いいのかしら? 会長室にでもいるんじゃないかしら?」

 あまりにもの明け透けない喋り方に受付嬢五人が、唖然として口が開きっぱなしだ。

 そして、ただにっこりと、歩美は美しすぎる笑顔を彼女達に向けた。


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