私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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アベルという男

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 「アベル様、日本より緊急の連絡が入っております」

 まるで中世のヨーロッパ貴族の部屋が、そのままの形でタイムマシンで移動してきたかのような、豪華絢爛な部屋で、金髪の眉目秀麗な若い男が、その流線美と絵柄が美しい金縁の紅茶のカップを持っている手を止める。
 優雅な猫足の椅子に腰をかけ、午後の紅茶を楽しんでいた。

 「日本ジャポンからだと?」

 召使のような男が一枚の紙切れをアベルと呼ばれる男に渡した。
 それを全文読んだ後、男の声は震えだした。
 声色に怒りが読み取れた。

 紙と手がブルブルと震えている。
 
 「な、なんだと! アユミが寮から男の家に移り住んだだと! しかも、そいつには婚約者がいる?」

 ガシャンっと音がして、その美しい顔がゆがんだと同時に、下ろした金縁の華美な茶器が割れた。
 紅茶がそのテーブルに散乱した。

 「ゆ、許さん。そんな男、炙って殺してやる!」
 「アベル様、お手がそんな、割れた茶器を握られては!!」

 怒りのあまり、アベルは壊れた茶器を握り絞めていた。
 そのため、手から赤い鮮血が滴り落ちた。
 アベル呼ばれる美しい男の眉間に、苛立ちと怒りの皺がよる。

 「おい、早く日本へ行く用意をしろ。今すぐ行く、アユミのところへ」
 「はい、かしこまりました。アベル様」

 どういう事だ。あのアユミに男ができたのか?
 信じられない。
 もちろん超絶美少女のアユミだ。
 どの男が惚れてもおかしくはない。
 
 ただ、あの彼女の言葉遣いと態度。それにおかしな趣味が男たちを敬遠させる。
 そして、彼女自身の男への対する評価の厳しさだ。
 彼女に見合う男など、この世に存在するのだろうかと思うくらい理想が高いのだ。

 その彼女が、彼女の祖母との家との約束、大学の寮に入り、実家を頼らず自立をしてやっていく。
 これを条件に、あの堅物の彼女の祖母が許したと聞いた。
 だがその祖母も彼女の入学と同時に亡くなったのだ。
 本来なら、それで彼女は実家、またはこちらに来る予定だったのだ。
 誰もには干渉をするものはいない。
 
 みなアユミに甘すぎるんだ。
 アベルはそう思っていた。

 それに、彼女は自由を求めていた。
 誰にも干渉されない、本当の自由を。
 自分が何者と知られないで、自分の男を見つけたいと言ったのだ。

 当分はあの日本の有名なショウギというゲームの70歳のマスターにうつつを抜かしていると聞いたから、大丈夫だと高を括っていた。

 本当は会いたい衝動に刈られていたが、顔を見せれば、嫌味を言われるのはわかっている。
 腹を据えて、彼女がもう少し落ち着いたら会いに行こうと思っていたのに……。

 煮えたぎる想いが体を駆け巡る。

 それが男のうちに同居だと?
 しかも女がいる奴が、我が愛しのアユミに手をつけるとは、そいつは命知らずだ。

 我が帝国、ルイス・カルダングループを全て敵に回したのだからな。

 アベルは先ほど傷つけた手の血をナプキンで拭き取った。

 「待ってろ。アユミ。お前の腐れた根性も叩き直してやる」

 アベルは意味深に微笑みながら、つぶやいた。

 「レンジ・オオハラ、地獄を見させてやる……」




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