私は、御曹司の忘れ物お届け係でございます。

たまる

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美代の朝

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 ジャーン、美代ちゃん久しぶりの登場です。
 生きてます!
 歩美ちゃんが気になる? はい、それもあとで出て来ます。少々お待ちください。



 日差しがかすかにカーテンから漏れていた。
 身体が至るところが軋むが、まだ今朝までの甘い余韻が媚薬のように身体に効いていた。
 薄暗い静かな寝室に、少女のような体型をした女はぐっすりと眠りについていた。

 誰かが部屋に入ってくる。
 足音がするが、ベットのシーツに包まっている小さな女の重い瞼はなかなか開けられない。
 ベットが軋んだ。
 そのわずかなムスクの香りが近くからする。

 「……まだ無理か……」

 男の声だけが耳に響いた。

 「……今朝までかったからな」

 誰かが優しく頭を撫でている。
 まだ眠たいのに、瞼が開いていく。
 そこには、すでにピシッとスーツを着こなしている蓮司が自分の目の前にいた。

 「!!!」
 「おはよう。美代」
 「ほへ? え、お、おはよう……ございます……」

 あの怒涛のスイートルームの鼻血事件から、ようやく二人は結ばれた。
 
 でも、その後も翌朝には大原邸に直帰したのだが、蓮司は美代を離さなかった。
 美代が蓮司のプロポーズを本気とわからせる為に、大人の方法で彼女に教え込んだ。

 男は思う。

 あくまでもの上だった。

 果たしていま微睡みの中に浮遊している少女がどこまでを同意とするかは定かではなかった。
 美代は精神も体も全て大原蓮司という男に喰い尽くされて、体力ポイントがゼロっとなった早朝から、深い眠りに付いていたのだ。
 ただ、遮光性カーテンから一筋の光が射していて、それが彼女を微睡みから、起こさせていた。

 そして、蓮司を見た瞬間、早朝までの甘い時間を思い出した美代の顔は、赤くなると同時に声を荒げた。

 「う! れ、蓮司、かいちょ~う……」

 眠たいのを我慢して美代が唸る。

 「……美代、お前……こんな時に会長呼ばわりって……」

 何故か少し困った顔をした蓮司が美代を覗き込んだ。
 でも眼差しは優しい。

 「どうだ? 体調は?」
 「……蓮司、なんで……そんな……げんきなの……?」

 シーツに包まりながら、美代は抗議する。

 「……さあな、お前が可愛いからじゃないか?」
 「……もう、朝から意味わかんない……」

 「お前はもうちょっと寝てろ……」
 「……会長の鬼……」
 「なんでだ……」

 理由がわかっているはずなのに、蓮司がさらにベットを軋ませながら、美代に近づく。

 「こんなんじゃ、今日学校行けない!」

 蓮司はふっと笑みを漏らす。

 「……ごめんな。でも、お前が俺と入籍を心底合意してもらわないと……意味がないだろう?」
 「……もう、蓮司のばか! それは、いいって言ったじゃん! でも、今朝はもうこっちは、無理って言ったのに、ど、どうして…あんなに!!」

 チュッとおでこに蓮司がキスをした。

 「ごめん。お前が可愛すぎるから……。でも約束覚えてる?」
 「え、……はい。あの、その……」
 「美代?! もう一度、最初から愛を確認し合いたい? 俺はそれでも構わないけど」
 「えええ! はい! 覚えています。すっごい覚えています!」

 約束は式はまだいいが、入籍はきっちりするということだった。
 それを最初、渋っていたら、蓮司の熱い息が耳元にかかる。

 低音で囁かれた。

 『お前は、頭で考え過ぎだから、こっちで教えていこうかな。もう合意だから、いいよな』
 そう言われたことまでは覚えている。
 怯えながらも、甘いキスに惑わされて、うんと言ってしまった自分に叱りたい。

 ちょっとは、加減をしろって付け加えろと!!

 そのあとは、もう、わああああああああという世界しかなかった。

 ど、どうしてこんなこと、こんな大事なこと、学校教育で教えてくれないんですか!!と思ってしまう。
 猛獣系の甘々御曹司に襲われた場合の対処法、知りたかった。
 そりゃー、きっとハイキング中にクマさんに出会っちゃう可能性よりは、低いと思う。
 でもでもでも。
 そういう一般知識として世の女子は知るべきだ!

 蓮司のしつこいくらいの愛の告白と愛の確認作業にやられていた美代は悶絶した。

 あのホテルでは鼻血を出して寝ていた蓮司は可愛かった。
 うん、確かにすっごい可愛かった。

 だが、そこからジェットコースターだった。

 全てが恥ずかして、全てが切なくて、全てが蕩けるように甘かった。
 あんなに、自分の口からあられもない、声が漏れて怯えていると、蓮司が背中に優しく手を当てる。
 自分で自分の唇を噛んだのだ。
 恥ずかしくて……。

 彼が優しくその少し赤くなった唇を指先で撫でた。

 「美代、いいんだよ。その声、そそられるんだ……男たちは……」
 「ええ、ああ、これ、がぁ!!!!」

 蓮司がクスッと笑っているような気がした。
 でも、返せるほど自分には余裕がない。

 その後、本当に彼に愛の刻印を受けた。
 信じられないほどの激しいを迸りさせながら……。

 美代の学業もきっちりと進める。
 でも、入籍はする。
 それを長き夜の間、みっちりと蓮司に教えこまれたのだ。

 「はははは、よろしい。今日は寝てなさい。そして、午後になったら、一緒に役所に行こう。いいか? もう逃げるとか、紙飛行機とか、言い訳はいらないぞ。愛人とかも問題もないからな!」
 「……はい」

 「あと、そのあと、お前のご両親の墓参り、行こうな……」
 「え、蓮司。本当?」
 「お前を産んでくれたことに、感謝しないとな。あと、お前の父親は最高だ。変わった人だが、彼が君のお母さんを本当に愛していて、変わったものをプレゼントしてくれたおかげで、色々なことができたんだよ」

 「え? 色々なこと?」

 二人はサイドテーブルに飾られていた美代の両親の写真を見つめた。
 蓮司は美代を後ろから抱きしめながら、その写真を見つめる。

 そこには美代の父と母、そして、幼い美代が一緒に写っている写真だった。
 この大原邸にに引っ越してきてから、いつもこのサイドテーブルに飾れていた。

 「これがあったから、本当に助かった」

 蓮司が言葉を漏らす。
 その意味を美代は本当にわかっていなかった。

 なぜなら、その美代の母の首元には、あの珍しいカットの宝石があったのだ。

 これが美代の家を最初に訪れた時、蓮司の目に止まった。
 すでに調査は進んでいたが、決定的となる繋がりが見つからなかったのだ。
 無実な人を追い詰めるのは、蓮司の性に全く合わない。
 あの不審な点が多かった土屋工業の倒産劇と両親の不審な交通事故。
 その突破口が、この宝石だった。

 これにより、あのホステスのヒモの男が特定できた。
 それもこの写真のおかげだった。

 「天国のお母さんやお父さんにも報告したいんだ。私がお前の夫となって、お前を支えて、愛し続けるって約束したい」
 「!!!」
 「愛しているよ。美代」

 真っ赤になった美代が固まった。

 「わ、私も……です。れ、蓮司さん」
 「!!なんだか、そう言われると、いやらしいな」
 「え! 名前を呼んだだけで、いやらしいって…」
 「まあ、いい。ここにいたいが、その真田がな、急にしばらく休みを取ることになるかもしれなくなって……まだその弟の光希って奴が代行なのだが、まだ真田ほど、完璧にこなせないんだ。心配だから、俺は出社しないといけない。悪い。美代、お前を放ってしまって。でもすぐに帰ってくる。3時には帰るつもりだ」

 「真田さん、病気とかですか? あと、真田さんに、弟っているんですか、知りませんでした」
 「……いや、病気ではない。あとでから事情を聞いてくれ……」

 「二人?」

 まだ何も知らない美代はハテナ顔を表した。

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