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歩美の朝
しおりを挟むこ、腰が痛い。
体中がもう筋肉痛。
もう、もう、もう!!!
どうしてこうなったのか、思い出して身体が芯から熱くなる。
あの瞳がまだそこにあるような気がする。
ずっと自分を見ていた、蕩けるようで、獣のようなあの人の眼差しが……。
周りは静かだ。
ここは真田のプライベートな部屋だった。
薄暗い部屋に真田のシンプルな執務用のデスクが横に見える。
彼の几帳面さが現れているかのような見た目だ。
綺麗に整頓されており、デスクの上には、メモ用の紙と一本の高級そうなペンだけが置かれていた。
不思議。
なんか嬉しい。
彼自身の一部を見ているような気がする。
秘密を見てしまったような、ドキドキ感がある。
まだカーテンを開けていない部屋は薄暗く、本棚には英語、日本語、中国語などの本が所狭しに並んでる。
結構、難しいものまであるし、日本語のタイトルだけでは全く意味不明な物もある。
『実体概念から関数概念へ』ってなに?
『論理哲学論考』とか、タイトルだけで眠れそうだわ。
まああの人らしいって言ったら、そうだけど。
でも、もうなんて、甘いの!!!
自分がこんなに男のささやきに弱い人間だと思わなかった。
数々の甘い言葉や、焦らす言葉を囁かれて、正直、自分は壊れてしまった。
もう、どうして、ああああ!
でも、自分の指を見た。
あの真田さんがくれた指輪があった。
結構、大きめなダイアモンドだと思った。
会社員だよね、真田さん?
ああ、でも超嬉しい。
あの黒い瞳やら、優しい瞳を思い出し、思わず、彼の残り香があるシーツにくるまって、叫んだ。
「……もう、いやになちゃうくらい大好き!!!」
「誰をそんなに好きなんですか?」
「え??」
ドア越しに自分が思い描いて人が立っていた。
ドアを開ける音さえしないで入って来た真田の存在に歩美は驚いた。
そのピシッと決まった燕尾服に、髪型もいつものようにきちっと分けられ、メガネをしていた。
ああ、素敵。
カッコいい。
こんな人のお嫁さんに本当になれるの?
嬉しさがこみ上げる。
こんな感じの燕尾服、正直、フランスの実家では見慣れた物だったけど、なぜか彼の姿は特別に見える。
もう仕事に行っていると思っていた真田が、手に……自分用だろうか?
銀製のトレイを持っていた。
食事を運んでくれたようだった。
すでに燕尾服に着替えている真田は、まるで違う世界の人間に思えた。
自分は何て言ったって、まだ、シーツの中で、何もつけていないのだから。
真田が静かにそのトレイを彼の執務机に置く。
白い手袋をして給仕する姿は、何か色気と気品があった。
「歩美さん。おはようございます」
「お、おはようございます。真田さん」
「……」
言葉がない彼がちょっと怖い。
「どうしたの? 何で何も言わないの? あ、着替えた方がいい? でも、どこに私の着替えあるのかしら……」
「ああ、だめだ……」
真田が何か深いため息をついた。
「え、何かまずいことがあったの?」
「……貴方ですよ。この部屋に貴方が、こんな格好で寝ているのですから、大問題です……」
歩美はええっと思う。
あのハワイで、散々、真田の愛を受け取ったのだ。
もう声が出ないくらいに、彼に彼を教え込まれた。
飛行機に乗った時には、ほとんど昏睡状態。
しかも!!あの飛行機、知らなかったけど、寝室があったの。
そこでも、彼は放してくれなかった。
や、野獣!!
思わず、その時漏れてしまった言葉が状況を悪化させるとは歩美は全く思ってもみなかった。
そのことを思い出しながら、今の状況を確認する。
この部屋にたどり着いた時は、自分は寝ていたのだ。
そして、夜中に起きても、真田が自分をベットから下ろしてくれなかった。
だから、ここで何が大問題なのかよくわからなかった。
真田がベットの横に膝をおろし、歩美を覗き込んだ。
「さあ、答えて、歩美さん。誰をそんなに好きなんですか?」
「っ! え、聞こえていたの? 恥ずかしい……」
「答えて、ください」
真田が歩美の顎をあげる。その長い指を使って……。
「ば、ばか!! 誰かわかるでしょ?」
「わかりませんよ。歩美さん」
「あ、 貴方しか、その、いないでしょ!」
「……やっぱり大問題だ」
「えええ、何が問題なの?」
真田が歩美の唇に自分の唇を寄せた。
柔らかな感触が全身に電気のような刺激を流す。
彼のキスはまるで魔法。
一気に自分を別世界に飛ばしてしまう。
キスの雨を歩美に落としながら、呆然としている歩美とは対照的に、真田は冷静に喋り続けた。
「だって、蓮司様が……」
チュっチュっと彼の唇が音をたてる。
「れ、蓮司がどうしたのよ。関係ないでしょ? 私たちと!」
真田が思わず、歩美の耳たぶをかじった。
「あ、いた!!」
「歩美さん、貴方はわかっていない……。蓮司様が私たちを気遣って、ほとんど使われていない西の棟を我々にと言ってくださったのだけど……」
「え? そうなの、気前がいいわね。あの御曹司は……、あ、だめそこ!」
キスが歩美の肌のいたるところを走り回り、歩美はだんだんとまたぼうっとなってくる。
「貴方がここにいるっと思うだけで、私がだめだ……。頭に血が上ってしまう。ああ、貴方を思わずにはいられない……」
「!!!!!」
「だめだ。一緒に職場に住んでしまったら、自分がどこにいても、貴方の影を追ってしまいそうだ……」
ちょっと!!
え、待ってっと歩美は叫んでいた。
「ごめん。歩美さん、もうちょっと……朝食待てますか?」
「ええ?」
「私が、今、我慢できないんです……」
真田の影に、歩美が囚われた。
「……え? ど、どういう意味! さっきだってしたばっか……り……っ」
真田に押し倒されて口は塞がれた。
歩美は心の中で、真田を命名した。
悶絶系野獣男!
もしかして、あの変態御曹司よりタチが悪いかも!!!!
自分があられもない吐息を漏らしながら、歩美は心の中で絶叫した。
(ニュースです! あと、多分この本編……あと10話で終わります! 先程、最後のエピソードを書いちゃった! なんだか寂しくなりますね。きゃーーー!最後にちょっと驚きが何点か潜んでおりますので、最後までお付き合いしてくれたら嬉しいです。真田さんのムフフはあと、六話かな。こんなに長くなるつもりは全くなかった。皆様読んでくれて感謝でーす(о´∀`о)// by たまる)
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