189 / 200
歩美の朝
しおりを挟むこ、腰が痛い。
体中がもう筋肉痛。
もう、もう、もう!!!
どうしてこうなったのか、思い出して身体が芯から熱くなる。
あの瞳がまだそこにあるような気がする。
ずっと自分を見ていた、蕩けるようで、獣のようなあの人の眼差しが……。
周りは静かだ。
ここは真田のプライベートな部屋だった。
薄暗い部屋に真田のシンプルな執務用のデスクが横に見える。
彼の几帳面さが現れているかのような見た目だ。
綺麗に整頓されており、デスクの上には、メモ用の紙と一本の高級そうなペンだけが置かれていた。
不思議。
なんか嬉しい。
彼自身の一部を見ているような気がする。
秘密を見てしまったような、ドキドキ感がある。
まだカーテンを開けていない部屋は薄暗く、本棚には英語、日本語、中国語などの本が所狭しに並んでる。
結構、難しいものまであるし、日本語のタイトルだけでは全く意味不明な物もある。
『実体概念から関数概念へ』ってなに?
『論理哲学論考』とか、タイトルだけで眠れそうだわ。
まああの人らしいって言ったら、そうだけど。
でも、もうなんて、甘いの!!!
自分がこんなに男のささやきに弱い人間だと思わなかった。
数々の甘い言葉や、焦らす言葉を囁かれて、正直、自分は壊れてしまった。
もう、どうして、ああああ!
でも、自分の指を見た。
あの真田さんがくれた指輪があった。
結構、大きめなダイアモンドだと思った。
会社員だよね、真田さん?
ああ、でも超嬉しい。
あの黒い瞳やら、優しい瞳を思い出し、思わず、彼の残り香があるシーツにくるまって、叫んだ。
「……もう、いやになちゃうくらい大好き!!!」
「誰をそんなに好きなんですか?」
「え??」
ドア越しに自分が思い描いて人が立っていた。
ドアを開ける音さえしないで入って来た真田の存在に歩美は驚いた。
そのピシッと決まった燕尾服に、髪型もいつものようにきちっと分けられ、メガネをしていた。
ああ、素敵。
カッコいい。
こんな人のお嫁さんに本当になれるの?
嬉しさがこみ上げる。
こんな感じの燕尾服、正直、フランスの実家では見慣れた物だったけど、なぜか彼の姿は特別に見える。
もう仕事に行っていると思っていた真田が、手に……自分用だろうか?
銀製のトレイを持っていた。
食事を運んでくれたようだった。
すでに燕尾服に着替えている真田は、まるで違う世界の人間に思えた。
自分は何て言ったって、まだ、シーツの中で、何もつけていないのだから。
真田が静かにそのトレイを彼の執務机に置く。
白い手袋をして給仕する姿は、何か色気と気品があった。
「歩美さん。おはようございます」
「お、おはようございます。真田さん」
「……」
言葉がない彼がちょっと怖い。
「どうしたの? 何で何も言わないの? あ、着替えた方がいい? でも、どこに私の着替えあるのかしら……」
「ああ、だめだ……」
真田が何か深いため息をついた。
「え、何かまずいことがあったの?」
「……貴方ですよ。この部屋に貴方が、こんな格好で寝ているのですから、大問題です……」
歩美はええっと思う。
あのハワイで、散々、真田の愛を受け取ったのだ。
もう声が出ないくらいに、彼に彼を教え込まれた。
飛行機に乗った時には、ほとんど昏睡状態。
しかも!!あの飛行機、知らなかったけど、寝室があったの。
そこでも、彼は放してくれなかった。
や、野獣!!
思わず、その時漏れてしまった言葉が状況を悪化させるとは歩美は全く思ってもみなかった。
そのことを思い出しながら、今の状況を確認する。
この部屋にたどり着いた時は、自分は寝ていたのだ。
そして、夜中に起きても、真田が自分をベットから下ろしてくれなかった。
だから、ここで何が大問題なのかよくわからなかった。
真田がベットの横に膝をおろし、歩美を覗き込んだ。
「さあ、答えて、歩美さん。誰をそんなに好きなんですか?」
「っ! え、聞こえていたの? 恥ずかしい……」
「答えて、ください」
真田が歩美の顎をあげる。その長い指を使って……。
「ば、ばか!! 誰かわかるでしょ?」
「わかりませんよ。歩美さん」
「あ、 貴方しか、その、いないでしょ!」
「……やっぱり大問題だ」
「えええ、何が問題なの?」
真田が歩美の唇に自分の唇を寄せた。
柔らかな感触が全身に電気のような刺激を流す。
彼のキスはまるで魔法。
一気に自分を別世界に飛ばしてしまう。
キスの雨を歩美に落としながら、呆然としている歩美とは対照的に、真田は冷静に喋り続けた。
「だって、蓮司様が……」
チュっチュっと彼の唇が音をたてる。
「れ、蓮司がどうしたのよ。関係ないでしょ? 私たちと!」
真田が思わず、歩美の耳たぶをかじった。
「あ、いた!!」
「歩美さん、貴方はわかっていない……。蓮司様が私たちを気遣って、ほとんど使われていない西の棟を我々にと言ってくださったのだけど……」
「え? そうなの、気前がいいわね。あの御曹司は……、あ、だめそこ!」
キスが歩美の肌のいたるところを走り回り、歩美はだんだんとまたぼうっとなってくる。
「貴方がここにいるっと思うだけで、私がだめだ……。頭に血が上ってしまう。ああ、貴方を思わずにはいられない……」
「!!!!!」
「だめだ。一緒に職場に住んでしまったら、自分がどこにいても、貴方の影を追ってしまいそうだ……」
ちょっと!!
え、待ってっと歩美は叫んでいた。
「ごめん。歩美さん、もうちょっと……朝食待てますか?」
「ええ?」
「私が、今、我慢できないんです……」
真田の影に、歩美が囚われた。
「……え? ど、どういう意味! さっきだってしたばっか……り……っ」
真田に押し倒されて口は塞がれた。
歩美は心の中で、真田を命名した。
悶絶系野獣男!
もしかして、あの変態御曹司よりタチが悪いかも!!!!
自分があられもない吐息を漏らしながら、歩美は心の中で絶叫した。
(ニュースです! あと、多分この本編……あと10話で終わります! 先程、最後のエピソードを書いちゃった! なんだか寂しくなりますね。きゃーーー!最後にちょっと驚きが何点か潜んでおりますので、最後までお付き合いしてくれたら嬉しいです。真田さんのムフフはあと、六話かな。こんなに長くなるつもりは全くなかった。皆様読んでくれて感謝でーす(о´∀`о)// by たまる)
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる