20 / 60
20話
しおりを挟む
特にちゃんとした時間は決めてないし、約束はしていない。
だけど7時半を過ぎたころに大我の部屋に向かった。
よくよく考えてみると大我の部屋に行くのは初めてかもしれない。
発情の時は違う部屋を借りてるし、わざわざ部屋までいかないからな。
少し緊張しながら俺は部屋の扉を叩いた。
「入れよ」
なんの躊躇いもなく大我は俺を部屋の中に招き入れてくれた。
「そこで座ってろ。コーヒー淹れてくる」
大我に言われて俺は大人しく座て待つことにした。
コーヒーの入ったカップを二つ持って戻ってきた大我は机にカップを置き隣に座った。
何を言えばいい?
何を話せばいい?
俺はまた一人で考えこんでしまった。
大我は何も言わない。俺の言葉を待っててくれてるんだとは思うけど言葉が出ない。
「…あのさ…大我って…好きなヤツが…いるのか?」
自分でも口から出た言葉に驚いてしまった。まさかこんなことをいきなり聞くとかどうかしてると思う。
「そうだな。中学の時からずっと好きだったやつはいる」
その言葉に目の前が真っ黒になる。
あぁ、やっぱりいるんだと…
「そっか…そうだよな…いるよな…いて当たり前か…」
自分で言った言葉が深く胸に突き刺さる。
「で?それを聞いてお前はどうしたいんだ?今の曖昧な関係だって聖唯斗は一体どうしたいんだ」
大我の言葉に少しだけ怒りがこもっていた。
「…俺は…例え俺が言ったところで何も変わらないんだろ?だったら期待させるなよ」
他に好きなヤツがいるんだったらこんな曖昧な関係だって何も変わらないじゃないか。下手をすれば今の関係そのものがなくなるだけじゃないか。
だったら…最初っから期待させるな。今の関係が変わるって期待させるな!
「そのまま逃げ続けるのか?お前自身が手を伸ばして手に入れようとは思わないのか?」
いつになく大我が感情的で驚いた。
でもそれは俺に言えと言ってるようで…。自分の感情を気持ちを吐き出せと言ってるようだった。
「…っ…俺が言ったところで手には入らないんだろ?だったら言っても仕方がないじゃないか…っ…俺は…」
だったら俺はこのまま曖昧な関係のままでいい。
「お前がそうやって諦めるなら俺はもう何も言わねぇし、答えてやるつもりもない。そのままずっといじけてろ」
それはまるで俺を突き放すような言葉。
諦めてる間は何も手に入らないと言われてる気がした。
俺は唇を噛み締めて俯いた。ギュッとズボンを握りしめる。
本当に吐き出せば答えをくれるんだろうか?
俺は俯いたまま考える。
ずっと何も言わずに考え込んでいた。
どれだけそうしていたんだろうか?
不意にいつになく優しい手つきで頬を撫でられ驚いて大我を見れば、優しい眼差しで俺を見ていた。
…っ…そんな目は反則だ…
ドキドキと高鳴る胸。急に恥ずかしくなって目を逸らして俯けば
「…唯斗が…好きだ…」
耳元で囁かれた。
「…っ…嘘…だ」
信じられなくてつい言ってしまった。
「どんだけ俺はお前に信用されてねぇんだよ」
大我の呆れた声。驚いてその顔を見れば苦笑を浮かべていた。
「…っ…大我…大我ぁ…」
俺はそんな大我に飛びつかん勢いで抱き着いた。
「おっと…で?やっぱり諦めるのか?」
抱き着いた俺を抱きしめながら言われた言葉に俺は首を振り
「…っ…イヤだ…諦めない」
ハッキリと答えた。
「じゃぁ、どうするんだ?」
それは俺の返事次第だと訴えてくる。
「…っ…俺は大我が好きだ。だから…これからも大我と一緒にいたい…」
今度こそはっきりと自分の気持ちを告げた。
「なら、噂を本物にするか?」
その言葉に俺は大きく頷いた。
「…ぁ…でも…」
ふと思ったことがあって言えば
「誰にも言わねぇよ。わざわざ付き合ってるっていう必要はないだろ」
俺の考えてることがわかったのか大我は俺の欲しい答えをくれた。
「ありがとう」
素直にお礼を言えば
「どういたしまして」
なんて言いながら頭を撫でられた。
もし、ここで聞いたら大我は答えてくれるだろうか?
ふと思ったことを聞こうか悩んだ。本当は知りたかったし、聞きたかった。
「どうした?今度は何が聞きたい」
俺のことをお見通しなのか大我は俺に言えと言ってくれる。
「大我はなんで…発情の時、俺を頑なに抱かないのかなって…」
反応はしてるっていうのはこの間、聞いたけどこっちに関しては聞いてない。理由があるとしか教えてもらってない。
「そんなことか…。付き合ってもないヤツを抱くわけにはいかないだろ?」
その言葉にあっそうかと納得してしまった。
「それと自分の気持ちか。お前が俺のことを欲してるのは気が付いてたしわかってた。だけど、聖自身がその理由に気付くのを待ってた。それだけだ」
大我のその言葉に
「それって…俺が大我を欲してる本当の理由が大我のことが好きだからってこと?」
確認しながら聞けば
「まぁ、そんなところだ。お前が唯一ずっと名前で呼んでるのは俺だけだって知ってるし、俺にばっかキスしてくるからな」
あたりだと言わんばかりに小さく笑う。
「あー、確かにそうだ。俺、中学の時に覚醒してからずっと大我って呼んでるな。えっ?ってことは…」
ふと思い出した。
「中学の時から好きなヤツって…俺のこと?」
中学からって…マジで?
自分を指さしながら聞けば
「他に誰がいるんだよ。俺はいま好きだって言っただろ?お前が覚醒する前からすっと好きだったんだよ」
ぐしゃりと前髪を乱された。
「えっ?えぇぇぇ!!全然気が付かなった…」
これはマジで気が付かなかった。
「ってことは…ずっと我慢してたってことだよな?」
据え膳だったはずなのにすっと我慢してたっとことになる。俺が自分の気持ちにちゃんと気が付くまで…
「まぁ、そうなるな。ギリギリ一杯一杯だったけどな」
大我は苦笑を浮かべる。
「ごめん、でも…ありがとう」
そんな大我の気持ちが嬉しかった。
校医が言っていた
『君は神尾くんに大事にされてるよ』
この言葉の意味が今ならわかる。
「まぁ、次はどうなるか俺もわからねぇから…」
そういいながら大我は俺のそっとキスをしてきた。
俺はそのキスを受け止めながら思う。
俺は大我になら抱かれてもいんだ。だから…もう我慢しなくてもいいんだよって…
だけど7時半を過ぎたころに大我の部屋に向かった。
よくよく考えてみると大我の部屋に行くのは初めてかもしれない。
発情の時は違う部屋を借りてるし、わざわざ部屋までいかないからな。
少し緊張しながら俺は部屋の扉を叩いた。
「入れよ」
なんの躊躇いもなく大我は俺を部屋の中に招き入れてくれた。
「そこで座ってろ。コーヒー淹れてくる」
大我に言われて俺は大人しく座て待つことにした。
コーヒーの入ったカップを二つ持って戻ってきた大我は机にカップを置き隣に座った。
何を言えばいい?
何を話せばいい?
俺はまた一人で考えこんでしまった。
大我は何も言わない。俺の言葉を待っててくれてるんだとは思うけど言葉が出ない。
「…あのさ…大我って…好きなヤツが…いるのか?」
自分でも口から出た言葉に驚いてしまった。まさかこんなことをいきなり聞くとかどうかしてると思う。
「そうだな。中学の時からずっと好きだったやつはいる」
その言葉に目の前が真っ黒になる。
あぁ、やっぱりいるんだと…
「そっか…そうだよな…いるよな…いて当たり前か…」
自分で言った言葉が深く胸に突き刺さる。
「で?それを聞いてお前はどうしたいんだ?今の曖昧な関係だって聖唯斗は一体どうしたいんだ」
大我の言葉に少しだけ怒りがこもっていた。
「…俺は…例え俺が言ったところで何も変わらないんだろ?だったら期待させるなよ」
他に好きなヤツがいるんだったらこんな曖昧な関係だって何も変わらないじゃないか。下手をすれば今の関係そのものがなくなるだけじゃないか。
だったら…最初っから期待させるな。今の関係が変わるって期待させるな!
「そのまま逃げ続けるのか?お前自身が手を伸ばして手に入れようとは思わないのか?」
いつになく大我が感情的で驚いた。
でもそれは俺に言えと言ってるようで…。自分の感情を気持ちを吐き出せと言ってるようだった。
「…っ…俺が言ったところで手には入らないんだろ?だったら言っても仕方がないじゃないか…っ…俺は…」
だったら俺はこのまま曖昧な関係のままでいい。
「お前がそうやって諦めるなら俺はもう何も言わねぇし、答えてやるつもりもない。そのままずっといじけてろ」
それはまるで俺を突き放すような言葉。
諦めてる間は何も手に入らないと言われてる気がした。
俺は唇を噛み締めて俯いた。ギュッとズボンを握りしめる。
本当に吐き出せば答えをくれるんだろうか?
俺は俯いたまま考える。
ずっと何も言わずに考え込んでいた。
どれだけそうしていたんだろうか?
不意にいつになく優しい手つきで頬を撫でられ驚いて大我を見れば、優しい眼差しで俺を見ていた。
…っ…そんな目は反則だ…
ドキドキと高鳴る胸。急に恥ずかしくなって目を逸らして俯けば
「…唯斗が…好きだ…」
耳元で囁かれた。
「…っ…嘘…だ」
信じられなくてつい言ってしまった。
「どんだけ俺はお前に信用されてねぇんだよ」
大我の呆れた声。驚いてその顔を見れば苦笑を浮かべていた。
「…っ…大我…大我ぁ…」
俺はそんな大我に飛びつかん勢いで抱き着いた。
「おっと…で?やっぱり諦めるのか?」
抱き着いた俺を抱きしめながら言われた言葉に俺は首を振り
「…っ…イヤだ…諦めない」
ハッキリと答えた。
「じゃぁ、どうするんだ?」
それは俺の返事次第だと訴えてくる。
「…っ…俺は大我が好きだ。だから…これからも大我と一緒にいたい…」
今度こそはっきりと自分の気持ちを告げた。
「なら、噂を本物にするか?」
その言葉に俺は大きく頷いた。
「…ぁ…でも…」
ふと思ったことがあって言えば
「誰にも言わねぇよ。わざわざ付き合ってるっていう必要はないだろ」
俺の考えてることがわかったのか大我は俺の欲しい答えをくれた。
「ありがとう」
素直にお礼を言えば
「どういたしまして」
なんて言いながら頭を撫でられた。
もし、ここで聞いたら大我は答えてくれるだろうか?
ふと思ったことを聞こうか悩んだ。本当は知りたかったし、聞きたかった。
「どうした?今度は何が聞きたい」
俺のことをお見通しなのか大我は俺に言えと言ってくれる。
「大我はなんで…発情の時、俺を頑なに抱かないのかなって…」
反応はしてるっていうのはこの間、聞いたけどこっちに関しては聞いてない。理由があるとしか教えてもらってない。
「そんなことか…。付き合ってもないヤツを抱くわけにはいかないだろ?」
その言葉にあっそうかと納得してしまった。
「それと自分の気持ちか。お前が俺のことを欲してるのは気が付いてたしわかってた。だけど、聖自身がその理由に気付くのを待ってた。それだけだ」
大我のその言葉に
「それって…俺が大我を欲してる本当の理由が大我のことが好きだからってこと?」
確認しながら聞けば
「まぁ、そんなところだ。お前が唯一ずっと名前で呼んでるのは俺だけだって知ってるし、俺にばっかキスしてくるからな」
あたりだと言わんばかりに小さく笑う。
「あー、確かにそうだ。俺、中学の時に覚醒してからずっと大我って呼んでるな。えっ?ってことは…」
ふと思い出した。
「中学の時から好きなヤツって…俺のこと?」
中学からって…マジで?
自分を指さしながら聞けば
「他に誰がいるんだよ。俺はいま好きだって言っただろ?お前が覚醒する前からすっと好きだったんだよ」
ぐしゃりと前髪を乱された。
「えっ?えぇぇぇ!!全然気が付かなった…」
これはマジで気が付かなかった。
「ってことは…ずっと我慢してたってことだよな?」
据え膳だったはずなのにすっと我慢してたっとことになる。俺が自分の気持ちにちゃんと気が付くまで…
「まぁ、そうなるな。ギリギリ一杯一杯だったけどな」
大我は苦笑を浮かべる。
「ごめん、でも…ありがとう」
そんな大我の気持ちが嬉しかった。
校医が言っていた
『君は神尾くんに大事にされてるよ』
この言葉の意味が今ならわかる。
「まぁ、次はどうなるか俺もわからねぇから…」
そういいながら大我は俺のそっとキスをしてきた。
俺はそのキスを受け止めながら思う。
俺は大我になら抱かれてもいんだ。だから…もう我慢しなくてもいいんだよって…
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
カメラ越しのシリウス イケメン俳優と俺が運命なんてありえない!
野原 耳子
BL
★執着溺愛系イケメン俳優α×平凡なカメラマンΩ
平凡なオメガである保(たもつ)は、ある日テレビで見たイケメン俳優が自分の『運命』だと気付くが、
どうせ結ばれない恋だと思って、速攻で諦めることにする。
数年後、テレビカメラマンとなった保は、生放送番組で運命である藍人(あいと)と初めて出会う。
きっと自分の存在に気付くことはないだろうと思っていたのに、
生放送中、藍人はカメラ越しに保を見据えて、こう言い放つ。
「やっと見つけた。もう絶対に逃がさない」
それから藍人は、混乱する保を囲い込もうと色々と動き始めて――
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜
飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。
でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。
しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。
秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。
美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。
秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。
その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。
強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない
砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。
自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。
ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。
とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。
恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。
ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。
落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!?
最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。
12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる