会長様を手に入れたい

槇瀬陽翔

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33話

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約束の土曜日、9時に寮の前で校医と待ち合わせしてた俺と大我。


えっと…目のやり場に正直困ってます。


大我の私服姿が初めてなわけじゃないんだけど、今日の大我さんはデニムのパンツと上着姿で、中には白いシャツ。
ビンテージ物で、左ひざが見え隠れする奴。いつになく、治安悪そうな格好してるけど、それが似合っててカッコいい。
わりとピチッてしてる大我とは対照に俺の格好はちょっとダボっとした大きめのシャツとズボン。やっぱりちょっとダボっとした黒のカーデガンも着てる。


クソッ!なんでこんなにカッコいいんだこの男は!


内心でブツブツ文句言いながら二人で待ってたら、黒い車がスーッと着て停まった。


「おはよう~二人とも、乗って~」
なんて相変わらずのんびりとした声で校医が助手席から顔を出す。それを見て大我が一瞬嫌そうな顔をするが後部座席の扉を開けて
「乗れよ。じゃないといけないぞ」
なんていうから俺は慌てて乗り込んだ。大我も乗って扉を閉めれば
「じゃぁ秋祭りに向かって出ぱ~つ」
校医の言葉で車が動き始めた。


あれ?そういえば俺、この二人の名前を知らないかも…。


今更かよ!って突っ込みが入りそうだけど俺は本当に名前を知らない。
「あの…大我さん…今更なんですが…俺、先生たちの名前、知らないかも…」
だからコソっと聞いてみた。
「あー、お前、名前覚えるの苦手だもんな。運転してるのが、神尾拓輝かみおひろきで助手席が神田煌太かんだこうただ、ちゃんと覚えろよ」
くすりと笑いながら教えてくれた。


あー、そんな名前だったような気がする。必要な名前以外は覚えないし、聞いてもすぐ忘れるからクラスメイトですら覚えてないときがある。先生なんて全部先生で済ませれるし…。


「あ~そういえば聖くんは人の名前を覚えるのが苦手だったねぇ~」
俺たちの会話を聞いていたのか神田先生が言ってくる。
「それは中学の時も一緒だな」
運転してる神尾先生までも言ってくる。


クソッ!どうせ俺は名前を覚えるのが苦手だよ!


「聖の場合は自分に必要のないものは覚えないたちだからしょうがない」
大我の言葉に自分で納得してしまう。


自分に必要なもの以外は覚えないというのは当たってるからだ。だから人の名前すら覚えない。これは本当に子どもの頃からずっとだ。


「でもぉ、そこが聖くんのいい所でもあるんだよね~」
神田先生の言葉になんだか照れくさい。
「そう甘やかすな神田」
冷たい神尾先生の言葉に顔が引きつる。中学の時のことを思い出した。俺はこの先生に結構キツイこと言われ続けてたんだった…。


まぁ、原因は自分自身なんだけどさ…。


「もぉ神くんはさぁ~聖くんに厳しすぎるよぉ~。そんなんだから怖がられちゃうんだよ」
「うるさい」
神田先生の言葉に神尾先生がぶっきらぼうに答えてる。
「痴話ゲンカは他所でやってくれ」
そんな二人に大我がそんなことを言う。俺は意味が分からなくて、何も言えなくて口をつぐんだ。


黙り込んだ俺の手をそっと大我が握ってくれた。驚いて大我を見たけど、大我は何も言わず窓の外を見ていた。俺は小さく笑いそっと大我の手を握り返した。


先生たちの会話をBGMにしながら車は進み祭りの会場まで来た。


祭り用の臨時駐車場に車を停めて4人で会場へと歩いていく。


「15時には帰ろうと思うから、それまでには車に戻って来てねぇ」
神田先生が時計を見ながら言ってくる。
「わかった。それまでには戻る」
大我が同じように時計を見て答えてる。


あれ?この二人もしかして最初から計画してた?


先生たちは二人で行ってしまった。

「さて、俺たちも楽しみますか聖くん?」
なんて言うから
「うん」
俺は盛大に頷いた。


「じゃぁ行くか」
差し出された大我の手を俺は迷うことなく握った。



「あー!クソぉ!外した!」
射的ゲームで最後の一発を外した。
「どれを狙ってたんだお前?」
隣にいた大我が聞いてくるから
「あそこのネコ」
上段の一番右側にあるネコのぬいぐるみ。なんか可愛くて欲しくなったんだ。でも、札が倒れなくてダメだったんだよ。
「ふーん。じゃぁ、いっちょ狙ってみますかね」
なんて言いながら大我が銃を構える。1発目は外れた。でも
「おし」
「やったぁー!」
2発目でネコの札が倒れた。

「おめでとー、はいこれが景品ね」
店員が渡してくれた景品は意外に大きかった。


あれ?大きさが思ってたのと違う。ちょっと大きいかも。でもいいや。


俺はネコのぬいぐるみを抱きかかえながら大我とブラブラと歩いて回ってた。
「あっ、あれいいな」
時折、見つけた露店に立ち寄っては品定めして、欲しいものは買ってと繰り返してた。

勿論、たこ焼きとか、焼きそばとか、かき氷とかも買った食べたんだぜ。


最後の露店は自作のアクセサリーを売ってるお店だった。二人で並んで見てた。
「うー、なんか色々といいものがあって悩む」
「そうだな、これお前に似合いそうだ」
俺は悩んでる隣で、大我が手に取っていたのはネコと月のチャームのついたネックレス。


あれ?大我さん、俺になぜネコ?もしかしてぬいぐるみつながりですかね?


「うん、やっぱり似合うな」
なんて言いながら大我があててみてたのはネコのぬいぐるみ
「えぇ!そっちぃ!!俺じゃないのぉ??」
思わず叫んじゃった。
「ん?なんだ聖も欲しかったのか?」
なんて意地悪く笑う。

「うー、いいもん。自分で選ぶもん」
俺はいじけて自分で選び始めた。
「聖、時間だ。戻らないと間に合わなくなる」
そんな俺に時間がないと言い出す大我。
「えぇ!まだ選んでないのにぃ」
でも時間なら仕方ないよな。


俺は渋々、選ぶのを諦めて大我と一緒に車に戻るために会場を後にした。


2人で車に戻ったら先生たちはもう戻って来ていた。
「また可愛いものを持って来たねぇ」
神田先生が嬉しそうな顔でいう。
「乗れ、寮まで送る」
神尾先生が車の鍵を開けて言ってくるから俺たちは急いで乗り込んだ。


朝と同じで先生たちの会話をBGMにしながら俺はぬいぐるみを抱きしめたまま流れる景色を見ていた。大我が何も話さないから俺も話さなかった。


「じゃぁ、また学校でねぇ」
寮の前で降ろしてもらい、
「ありがとうございました」
2人に頭を下げれば車は流れるように行ってしまった。


俺たちは会話のないまま寮の中に入った。



あれ?結局このまま俺たち会話のないまま別れるの?


あれれ?


楽しくなかったのかな?


なんかさっきまで楽しかった気分は急降下していく。


トボトボと項垂れながら自分の部屋へと向かうことにした…。

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