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第1話
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「お前そんなところで何やってんだ?」
それが薗畑知宙とクラスメイトの不良、藍原櫂莉と初めて会話をした瞬間だった。そして、心から親友と呼べる人物との出会いでもあった。
知宙の両親は所謂、転勤族という種類に分類される人物だった。生まれた時から転々と両親の転勤に付き合わされていた。
その為、同じ土地に1年以上留まるということがなかった。父親の転勤が終われば母親の転勤が始まるというそんな日々を送っていたのだ。
そんなわけだから長くても半年、早ければ3ヶ月で違う場所へと移動していた。
幼少期からそんなことを繰り返していれば、学校へ行っても親しい友人をつくることなど難しくて、知宙は一人、浮いた存在になっていた。
転校したては珍しくて、色々と声をかけてはくるが、1週間、2週間と過ぎれば相手をしてもらえなくなることも度々あった。
そんな状態だから、知宙は自分から積極的に話しかけるということはしなくなっていた。ただ、毎日の時間が静かに過ぎていけばいいと、そんな風に思っていた。
家に帰っても知宙は浮いた存在だった。家に帰っても両親は常におらず、たった一人の姉も家にはいなかった。両親は仕事で家を空けることが多く、姉も新しい場所に来てはすぐに親しい友人を作っては遊びまくっていたからだ。
「親御さんの仕事の都合で、新しく転校してきた薗畑知宙くんだ。みんな仲良くしてやってくれ」
転校初日に担任に紹介されたがクラスの連中の反応は薄い。知宙もただ頭を下げただけで終わった。
どうせ、すぐに転校することになるのだから、親しい親友は作るつもりなどなかった。だから、空気と思ってくれればいい。知宙はそう思っていたのだ。
この頃の知宙は誰にもかまって欲しくなくなっていた。ボッチと呼ばれても平気になっていたのだ。
毎日、家と学校の往復。
今回は一体どれぐらいで引っ越すことになるんだろうか?
知宙はそんなことを考えながらつまらない毎日を過ごしていた。この頃にはある意味、心の病にかかっていたのかもしれなかった。
そんなある日、知宙の日常が崩れ落ちることとなった。それはいい意味で…。
その日は朝からずっと雨が降っていた。時折、激しく降っていた。
知宙は雨が嫌いなわけじゃない、とはいえ好きでもなかった。自分の心をより一層深く沈めていくから…。
授業も終えて、誰もいない家へ帰るために歩いていれば、どこからともなく聞こえてきた鳴き声。知宙はその声が妙に気になってその鳴き声を捜した。
公園の入り口付近に段ボールが置いてあるのを見つけて、そっと近付けば雨に濡れながら懸命に鳴いて寄り添っている子猫が2匹。
「子猫、一体誰が…。助けなきゃ…でも…」
助けなきゃと思ったが、知宙にはどうすることも出来なかった。そう思った瞬間。気分が沈んだ。
「ごめんな、俺…お前たちを助けてやれないや…」
知宙は子猫たちに謝りながら自分の使っている傘を段ボールの上にかけて、これ以上、子猫たちが雨に濡れないようにしてやった。
まだ小さな子猫たち。兄弟なのか、二匹で寄り添いながら懸命に鳴いている。でも、知宙にはこの子猫たちを助けてやることができなかった。助けても飼ってやることができないからだ。新しい引っ越し先に一緒に連れて行くことができなかった。
知宙が雨に打たれながら子猫の様子を見ていて、どれだけ時間がたったのだろうか?
「お前、そんなところで何やってんだ?」
急に声をかけられてビックリして振り返れば、クラスメイトの不良である櫂莉が立っていた。知宙は言葉に出来ず、子猫たちに視線を戻した。
「育てられねぇなら情けはかけるな」
そんな冷たい言葉が飛んでくる。確かにそうである。自分では助けられないのに、中途半端なことをすればかえって子猫たちが可哀そうである。
そんなこと言われなくても、知宙には痛いほどわかっていた。だが、この時の知宙はどうしても子猫たちが放っておけなかったのだ。
この子猫たちを見捨てて帰ることができなかったのである。
それが薗畑知宙とクラスメイトの不良、藍原櫂莉と初めて会話をした瞬間だった。そして、心から親友と呼べる人物との出会いでもあった。
知宙の両親は所謂、転勤族という種類に分類される人物だった。生まれた時から転々と両親の転勤に付き合わされていた。
その為、同じ土地に1年以上留まるということがなかった。父親の転勤が終われば母親の転勤が始まるというそんな日々を送っていたのだ。
そんなわけだから長くても半年、早ければ3ヶ月で違う場所へと移動していた。
幼少期からそんなことを繰り返していれば、学校へ行っても親しい友人をつくることなど難しくて、知宙は一人、浮いた存在になっていた。
転校したては珍しくて、色々と声をかけてはくるが、1週間、2週間と過ぎれば相手をしてもらえなくなることも度々あった。
そんな状態だから、知宙は自分から積極的に話しかけるということはしなくなっていた。ただ、毎日の時間が静かに過ぎていけばいいと、そんな風に思っていた。
家に帰っても知宙は浮いた存在だった。家に帰っても両親は常におらず、たった一人の姉も家にはいなかった。両親は仕事で家を空けることが多く、姉も新しい場所に来てはすぐに親しい友人を作っては遊びまくっていたからだ。
「親御さんの仕事の都合で、新しく転校してきた薗畑知宙くんだ。みんな仲良くしてやってくれ」
転校初日に担任に紹介されたがクラスの連中の反応は薄い。知宙もただ頭を下げただけで終わった。
どうせ、すぐに転校することになるのだから、親しい親友は作るつもりなどなかった。だから、空気と思ってくれればいい。知宙はそう思っていたのだ。
この頃の知宙は誰にもかまって欲しくなくなっていた。ボッチと呼ばれても平気になっていたのだ。
毎日、家と学校の往復。
今回は一体どれぐらいで引っ越すことになるんだろうか?
知宙はそんなことを考えながらつまらない毎日を過ごしていた。この頃にはある意味、心の病にかかっていたのかもしれなかった。
そんなある日、知宙の日常が崩れ落ちることとなった。それはいい意味で…。
その日は朝からずっと雨が降っていた。時折、激しく降っていた。
知宙は雨が嫌いなわけじゃない、とはいえ好きでもなかった。自分の心をより一層深く沈めていくから…。
授業も終えて、誰もいない家へ帰るために歩いていれば、どこからともなく聞こえてきた鳴き声。知宙はその声が妙に気になってその鳴き声を捜した。
公園の入り口付近に段ボールが置いてあるのを見つけて、そっと近付けば雨に濡れながら懸命に鳴いて寄り添っている子猫が2匹。
「子猫、一体誰が…。助けなきゃ…でも…」
助けなきゃと思ったが、知宙にはどうすることも出来なかった。そう思った瞬間。気分が沈んだ。
「ごめんな、俺…お前たちを助けてやれないや…」
知宙は子猫たちに謝りながら自分の使っている傘を段ボールの上にかけて、これ以上、子猫たちが雨に濡れないようにしてやった。
まだ小さな子猫たち。兄弟なのか、二匹で寄り添いながら懸命に鳴いている。でも、知宙にはこの子猫たちを助けてやることができなかった。助けても飼ってやることができないからだ。新しい引っ越し先に一緒に連れて行くことができなかった。
知宙が雨に打たれながら子猫の様子を見ていて、どれだけ時間がたったのだろうか?
「お前、そんなところで何やってんだ?」
急に声をかけられてビックリして振り返れば、クラスメイトの不良である櫂莉が立っていた。知宙は言葉に出来ず、子猫たちに視線を戻した。
「育てられねぇなら情けはかけるな」
そんな冷たい言葉が飛んでくる。確かにそうである。自分では助けられないのに、中途半端なことをすればかえって子猫たちが可哀そうである。
そんなこと言われなくても、知宙には痛いほどわかっていた。だが、この時の知宙はどうしても子猫たちが放っておけなかったのだ。
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(できれば、春樹に彼女が出来ませんように)
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*********
久しぶりに始めてみました
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