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2話
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side 大我
風紀委員室で引継ぎをしながら自分の仕事をしていたら
「委員長、少し相談があります」
少し青白い顔をした神谷が声をかけてきた。
「出て来ても大丈夫なのか?」
俺はそんな神谷が心配で聞いてしまった。その理由はここ3日ぐらい体調不良で休んでいたからだ。
「はい、どうしても委員長に相談したいことがあります」
そう返事をする神谷だが、やはりどこか辛そうだ。
「俺だけでいいのか?校医がいた方がいいなら彼の所へ行くが?」
直観というのだろうか?その方が神谷的にもいいんじゃないかと思った。案の定、神谷は俺の言葉に驚き、そして静かに頷いた。
「わかった。後は任せる。行こう神谷」
俺は傍にいる新委員長に頼み神谷を連れて部屋を出た。
「先生、今大丈夫ですか?」
校医である煌太さんに声をかけながら部屋に入ればなんでか拓輝もいた。
「大丈夫だよぉ。おや?今日は珍しい子が一緒だねぇ。神谷くんはとりあえずそこのベッドに座って」
2人は神谷の顔を見て何かあったと感じたのか、目配せをして神谷をベッドへ座らせる。
「神谷が相談したいことがあるってことで、俺は2人がいた方がいいと思ってここに来た」
俺は2人の校医に事情を説明する。どちらか1人でもよかったんだが、2人一緒ならその方がいい。
「そう、で、神谷くん相談したいことって?」
煌太さんが神谷と向き合う。その途端に神谷の瞳から涙が零れ落ちた。俺たち3人は大きな溜め息をついた。普段人前で泣かない神谷がこうやってボロボロと涙を流すということは神谷にとって途轍もなく負担になることが起きたんだろう。
「神谷ゆっくりでいい。何があったんだ?」
俺は神谷の前にしゃがみゆっくりでいいから話すように声をかける。
「…っ…実は…先週辺りから…自分でもわからないほど…体調が悪くて…先日から…匂いが気持ち悪くて…」
そこまで話を聞いて校医2人を見れば小さく頷いた。
「それで?」
続きを促せば
「…僕…もしかしてって思って…もしもの時ように検査薬…持ってるんで…検査したら…陽性で…もぉ…どうしていいのか…」
そう言って、大泣きを始めてしまう。
「神谷くん、一度、病院に行って検査をしよう。それからどうするか相談しようか?」
いつになく真面目に煌太さんが神谷に話しかける。
「でも…病院は…」
神谷にとって病院は恐怖かもしれないが、この際、ハッキリさせないと今後のことも決められない。
「大丈夫、僕がお世話になってる場所だから安心して。神尾くん、戻って来るまでに顧問たちと会長をこの部屋に呼んでおいてくれるかな?」
滉也さんの言葉に頷く神谷。
「わかった、神谷のことお願いします」
俺が頭を下げれば煌太さんは神谷を連れて出ていった。
「十中八九、神谷は妊娠してるな。ただ、あの口ぶりだと神谷は望んでないみたいだが…」
2人が出ていったのを見送ってから拓輝が口を開く。
「そうだとしても、このままじゃ何もできない。顧問2人と聖を呼ぶことにする」
俺は溜め息交じり言って、携帯を取り出し聖に大至急、保健室まで来るようにメールをし、職員室にいる顧問2人を呼びに行くことにした。
2人が戻ってきたのはあれから2時間してからだった。
「取り合えず、結果から言うと妊娠4週目に入ったところだったよ」
泣き続ける神谷をベッドに座らせながら煌太さんが教えてくれる。
「神谷、今後のことを決めるためには、神谷の意思が知りたい。神谷は今後どうしたいのか教えてくれないか?」
俺は神谷の前にしゃがみ声をかける。神谷は何か言いたげに口を開いたが首を振った。
「神谷にとってその妊娠は望んでたことか?それとも…」
これだけはハッキリさせよう。俺の言葉に神谷は思いっきり首を横に振った。
それは神谷にとってこの妊娠は望んでいなかったもの。
「言い辛かったら言わなくてもいい、父親は永尾か?それとも違うやつか?」
もし、神谷が暴行にあっていたのならそれをやったやつらを処罰しなくてはならない。そうじゃなく、永尾だったならそれ相応に話をしなくてはならない。
「…健汰…」
小さな声で出てきた答えは永尾だった。
「そっか、やっぱり永尾くんなんだね、神谷くんはどうしたいのかな?」
煌太さんが神谷の頭を撫でながら聞いている。顧問2人は静かに様子を窺ってるし、聖はどうしていいのかわからないから黙ってみてる。
「…会いたく…ない…」
ポツリと出た言葉はその場にいたみんなが驚く言葉だった。
「どうして?永尾くんの子供なんでしょ?」
煌太さんが驚いたまま聞いてる。
「…っ…僕は…望んでなかった…僕は…まだ…なのに…たった一度だけ…一度だけの過ちで…できるなんて…健汰が…着けずに…中でって…言わなかったら…ちゃんと…止めれてたら…僕は…まだ…勉強…したかった…」
神谷が涙ながらに言う言葉にクラリと眩暈がする。
神谷は自己防衛も兼ねて、発情の時は徹底して、避妊をしてきたという。それなのに、永尾がたった一度だけのわがままで、着けずに中で出したという。神谷にとって、そのたった一度の過ちが妊娠することになってしまったという。しかも、神谷はまだ勉強したくて、進学を考えているということだ。
神谷の言葉に部屋の中にいた誰もが言葉を失った。
面倒なことになったな…。
神谷と永尾の性格を考えると俺の気は重くなる一方だった。
風紀委員室で引継ぎをしながら自分の仕事をしていたら
「委員長、少し相談があります」
少し青白い顔をした神谷が声をかけてきた。
「出て来ても大丈夫なのか?」
俺はそんな神谷が心配で聞いてしまった。その理由はここ3日ぐらい体調不良で休んでいたからだ。
「はい、どうしても委員長に相談したいことがあります」
そう返事をする神谷だが、やはりどこか辛そうだ。
「俺だけでいいのか?校医がいた方がいいなら彼の所へ行くが?」
直観というのだろうか?その方が神谷的にもいいんじゃないかと思った。案の定、神谷は俺の言葉に驚き、そして静かに頷いた。
「わかった。後は任せる。行こう神谷」
俺は傍にいる新委員長に頼み神谷を連れて部屋を出た。
「先生、今大丈夫ですか?」
校医である煌太さんに声をかけながら部屋に入ればなんでか拓輝もいた。
「大丈夫だよぉ。おや?今日は珍しい子が一緒だねぇ。神谷くんはとりあえずそこのベッドに座って」
2人は神谷の顔を見て何かあったと感じたのか、目配せをして神谷をベッドへ座らせる。
「神谷が相談したいことがあるってことで、俺は2人がいた方がいいと思ってここに来た」
俺は2人の校医に事情を説明する。どちらか1人でもよかったんだが、2人一緒ならその方がいい。
「そう、で、神谷くん相談したいことって?」
煌太さんが神谷と向き合う。その途端に神谷の瞳から涙が零れ落ちた。俺たち3人は大きな溜め息をついた。普段人前で泣かない神谷がこうやってボロボロと涙を流すということは神谷にとって途轍もなく負担になることが起きたんだろう。
「神谷ゆっくりでいい。何があったんだ?」
俺は神谷の前にしゃがみゆっくりでいいから話すように声をかける。
「…っ…実は…先週辺りから…自分でもわからないほど…体調が悪くて…先日から…匂いが気持ち悪くて…」
そこまで話を聞いて校医2人を見れば小さく頷いた。
「それで?」
続きを促せば
「…僕…もしかしてって思って…もしもの時ように検査薬…持ってるんで…検査したら…陽性で…もぉ…どうしていいのか…」
そう言って、大泣きを始めてしまう。
「神谷くん、一度、病院に行って検査をしよう。それからどうするか相談しようか?」
いつになく真面目に煌太さんが神谷に話しかける。
「でも…病院は…」
神谷にとって病院は恐怖かもしれないが、この際、ハッキリさせないと今後のことも決められない。
「大丈夫、僕がお世話になってる場所だから安心して。神尾くん、戻って来るまでに顧問たちと会長をこの部屋に呼んでおいてくれるかな?」
滉也さんの言葉に頷く神谷。
「わかった、神谷のことお願いします」
俺が頭を下げれば煌太さんは神谷を連れて出ていった。
「十中八九、神谷は妊娠してるな。ただ、あの口ぶりだと神谷は望んでないみたいだが…」
2人が出ていったのを見送ってから拓輝が口を開く。
「そうだとしても、このままじゃ何もできない。顧問2人と聖を呼ぶことにする」
俺は溜め息交じり言って、携帯を取り出し聖に大至急、保健室まで来るようにメールをし、職員室にいる顧問2人を呼びに行くことにした。
2人が戻ってきたのはあれから2時間してからだった。
「取り合えず、結果から言うと妊娠4週目に入ったところだったよ」
泣き続ける神谷をベッドに座らせながら煌太さんが教えてくれる。
「神谷、今後のことを決めるためには、神谷の意思が知りたい。神谷は今後どうしたいのか教えてくれないか?」
俺は神谷の前にしゃがみ声をかける。神谷は何か言いたげに口を開いたが首を振った。
「神谷にとってその妊娠は望んでたことか?それとも…」
これだけはハッキリさせよう。俺の言葉に神谷は思いっきり首を横に振った。
それは神谷にとってこの妊娠は望んでいなかったもの。
「言い辛かったら言わなくてもいい、父親は永尾か?それとも違うやつか?」
もし、神谷が暴行にあっていたのならそれをやったやつらを処罰しなくてはならない。そうじゃなく、永尾だったならそれ相応に話をしなくてはならない。
「…健汰…」
小さな声で出てきた答えは永尾だった。
「そっか、やっぱり永尾くんなんだね、神谷くんはどうしたいのかな?」
煌太さんが神谷の頭を撫でながら聞いている。顧問2人は静かに様子を窺ってるし、聖はどうしていいのかわからないから黙ってみてる。
「…会いたく…ない…」
ポツリと出た言葉はその場にいたみんなが驚く言葉だった。
「どうして?永尾くんの子供なんでしょ?」
煌太さんが驚いたまま聞いてる。
「…っ…僕は…望んでなかった…僕は…まだ…なのに…たった一度だけ…一度だけの過ちで…できるなんて…健汰が…着けずに…中でって…言わなかったら…ちゃんと…止めれてたら…僕は…まだ…勉強…したかった…」
神谷が涙ながらに言う言葉にクラリと眩暈がする。
神谷は自己防衛も兼ねて、発情の時は徹底して、避妊をしてきたという。それなのに、永尾がたった一度だけのわがままで、着けずに中で出したという。神谷にとって、そのたった一度の過ちが妊娠することになってしまったという。しかも、神谷はまだ勉強したくて、進学を考えているということだ。
神谷の言葉に部屋の中にいた誰もが言葉を失った。
面倒なことになったな…。
神谷と永尾の性格を考えると俺の気は重くなる一方だった。
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