会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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8話

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「前期生徒会長は委員長に頭が上がらないんですよねぇ。暴君と言われた会長を簡単にあしらえて、いうことを聞かせられる男、それが神尾委員長です。まぁ、あの暴君を従わせることが出来るのはもう一人いますけどね」
にこにこと笑いながら神谷が教えてくれる。

「あー、あの暴君な。前期風紀委員長にベタ惚れだっただろ確か?」
ヒロさんの言葉に驚いて見たら
「あぁ、確かきょうくんはしゅうくんに1年の時から猛アタックしてたねぇ。一目惚れしたって。それに愁くんは確か、身体が弱かったよねぇ?」
コウちゃんまでそんなことをいう。そう考えると俺って本当に何にも知らないんだ。本当に自分のことばっかりで、周りの事、興味なさすぎだって思う。


「はい、前期会長が前期委員長に惚れてたということもあって、あの時はかなり風紀内も殺伐としてて、それ加えてのアルファ委員の暴走でした。それに静かにブチ切れてたのが委員長でした。あの時は正直に言ってすっごく怖かったです」
コウちゃんとヒロさんの言葉に神谷が頷きながら答えてる。

「えっと、それと俺の会長とどういう意味があるんだ?」
そう、どういう意味があるのか俺にはわからない。なぜ俺が会長に推薦されたのかがわからない。
「前期会長は強いアルファでした、そして前期風紀委員長はオメガだったんです。そこで起きたのが風紀内の派閥です。オメガだからアルファが反発して暴走が起きた。だから委員長はオメガである聖会長を会長になるように前期会長に指示したんです。生徒会長に逆らえる生徒はいませんからね。そして委員長が風紀を固めたので、誰一人として逆らうことが出来なくなったんです」
神谷から出てきた言葉に絶句した。あの男はそんなことを考えてたのかと…。

「イヤ、でも、何も俺じゃなくてもいいじゃないか、会長なんて…」
そう、会長になるのは別に俺じゃなくてよかったはずだ。
「確かにそうかもしれません。でも、会長を選んだのは神尾委員長です。多分それは会長自身はよくわかってるんじゃないんですか?委員長がなぜそこまでしたのが…」
神谷の言葉に複雑な思いが浮かぶ。

「俺が…自棄を起こしたままだったからだろ?1年の夏ごろまで俺は自分の中でまだ納得できてなくて、中学の時のように発情した状態でふらつくことはなかったかけど、酷かったのは自覚してる。それが原因だったんだろ?」
今の俺が思い浮かぶのは多分これしかない。
「そうですね、それが原因だと思います。会長の椅子に座らせておけば何かあったときに自分で助けられるって言ってました」
神谷がいう言葉に唸るしかない。俺は気づかないところでずっと本当に大我に守られていたのかと…。

「まぁ、ゆいちゃんが不安定だったのは大ちゃんずっと気にしてたもんねぇ。だからずっと大ちゃんは化け物扱いされてたんだよねぇ。って今も化け物扱い中か」
コウちゃんが笑いながらそんなことを言う。
「えっ、もしかして俺が原因で大我って化け物扱いされてるの?」
それは俺、知らない。

「えぇ、会長は気が付いてなかったんですかぁ?」
俺の言葉に神谷が驚きながら聞いてくるから素直に頷いた。
「うん、知らない」
本当に知らないんだ。

「それはしょうがないよ。だって、大ちゃんは発情中のゆいちゃんに今までずっと無反応だった子だもん。それに、大ちゃんは今まで、本当に数か月前までこの学園の誰にもアルファだと気づかせてない男だよ。ゆいちゃんが気付くわけないよぉ」
コウちゃんの言葉にますます驚く。
「えっ?ちょっと待って、大我の第2の性の事って本当に誰も知らなかったのか?風紀委員ですらも?」
それってマジで?俺が驚きながら聞けば

「それが本当なんです。会長の発情の暴走の時に初めて我々も気が付きました。僕みたいに計画して休んでるのは知ってたんですが、本当に数日間だけですし、どのオメガのフェロモンにも無反応なので、属性を知ることが出来なかったんです。本人も言わなかったので、我々も全く気が付かなかったんですよ。というか、まだ覚醒してないんじゃないかって噂になってたぐらいです」
神谷は苦笑しながら教えてくれる。大我は本当に誰にも悟らせないように生活してきたんだと思い知らされる。

「えっ、でもどうやって大我の属性を知ったんだ?」
それも気になった。
「あの日、会長を教室から委員長がすぐに薬を飲んでるのを見て僕が気付きました。あの時、本当は委員長はすごく危険な状態だったんだって…。あと、一瞬でしたけど僕に指示をしてるとき左目を押さえて何かを隠してるようだったんで、もしかして我慢してるのかなって…」
あの日、俺が暴走をしたあの日、教室でそんなことが起こってたなんて俺は知らない。教えてもらってないし、俺は自分のことで精一杯だったから…。大我の様子まで気にしてなかった…。

「それだけ、あの時のあいつはゆいの発情のフェロモンで余裕がなかったってことだ。まぁ、それでもあいつは化け物並みの精神力だけどな」
神谷の言葉にヒロさんが教えてくれる。
「あの場所で襲われてもおかしくなかったんだよねぇ本当はあの時。でもそれをグッと我慢してたのはゆいちゃんを傷付けたくなかったのと、守りたかったからだよ」
なんて、こうちゃんまで言う。



あぁ、やっぱり俺は自分の知らないところで神尾大我に守られてきたんだ。


それを俺に悟らせないように、気付かれないようにずっと内緒で…


本当に俺はどれだけ大我に大事にされているのか…


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