会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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15話

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「神尾先生、神尾委員長の命により、聖会長を保護してきました」
俺を部屋の中に入れて三条が声をかける。
「ご苦労様ぁ~じょうくん」
返事をしたのはコウちゃんだった。

「コウさんもいたんだ。てっきりひろさんの方かと思ったんだけど」
返事をしたのがコウちゃんだったから三条が驚いてる。
「俺もいるけどな。俺が仕事してるから煌太が返事しただけだ」
机に張り付いていたのかヒロさんも返事をしてる。

「えっと、どういう関係で?」
この2人が親しいのが気になった。
「あれ?大ちゃんに教えてもらってないんだ。僕と譲くんはねぇ、親戚になるんだよぉ」
ニコニコ笑顔でコウちゃんが教えてくれて

「えっ?えぇぇぇ!!!」
俺は驚いた。そんなこと一言も教えてもらってない!
「俺の母親がコウさんのお父さんの妹だから従兄弟になるんだ」
三条が溜め息交じりに教えてくれる。

「あっ、ごめん。聞かない方がよかったやつかこれ?」
俺はとっさに謝った。
「あっ、いや、聖に対してじゃないんだ。コウさん、いい加減に俺の事を譲と呼ぶのやめてくれ」
三条は俺に説明しながらコウちゃんに言う。

「ん?だって譲一じょういちよりも譲くんのが言いやすいもん。大ちゃんだって大我よりも大ちゃんの方が言いやすいし、ゆいちゃんだって唯斗よりゆいちゃんの方が言いやすいもん。それに僕が短く呼ぶのは僕なりの愛情表現だよぉ」
煌太さんは悪びれるわけでもなく、あっさりという。

「諦めろ三条。こいつは自分が言いやすい呼び方しかしねぇから」
なんて、ヒロさんもそんなことを言うから三条ががっくりと肩を落とし項垂れた。
「なんというか、三条ドンマイ」
俺はそれしか言えなかった。俺は呼ばれ慣れてるし、気にしてないからいいんだけどさ。

「それより、ご苦労だった。聖は確かに俺が引き受けた」
急にヒロさんが言うから、あって思った。


そうか、俺は発情期間に入るから校医である二人に引き渡されたのか…。


「委員長直々の命令なんでお願いします」
三条が頭を下げる。
「ありがとうな三条」
俺がお礼を口にすれば

「救護班総括の役目なんで気にするな」
三条は小さく笑ってくれた。
「君が救護班をまとめてくれてるから、救護班の子たちも混乱なくいつも的確に行動してくれるから校医として助かってるよ」
って、コウちゃんがいつになく真面目に言ってる。


「俺を救護班に置いたのはあの男ですからね。あの化け物の神尾大我です。神尾がいなければ今の俺たちはこうやって救護班として動くことはできなかった。だから俺は昔からずっとあいつには感謝してるんだ」
三条はそんなことをいいながら肩を竦める。
「あいつの化け物扱いは風紀の内部紛争から始まって聖に関すること全般だからな」
そんな三条の言葉にヒロさんが笑いながら言う。

「えっ?えぇぇ!!そんなときからぁ?ってかやっぱり俺が原因???」
やっぱり俺の知らないことばっかりで驚けば
「そうだな。神尾の化け物扱いが始まったのは内部紛争と会長のこと同時だったからなぁ」
苦笑を浮かべながら三条が教えてくれる。


マジか、やっぱり俺が原因だったのか…。確かにあの頃の俺は自棄になったままだったから大我に無茶難題を言ってたかも…。


「神尾にもらい受けたと報告してくれ。聖のことは責任もって部屋に届けるとな」
いつのまに書いたのか書類を三条に差し出しながら言ってるし
「じゃぁ、ゆいちゃんは移動しようか。でもこれも持ってねぇ」
ってコウちゃんは俺に小瓶の入った紙袋を渡してくれる。

「では、後はお願いします。失礼します」
三条はヒロさんから書類をもらって出ていった。
「ゆい、お前はいつもの場所じゃなくて、発情の暴走の時に使った部屋に行くぞ」
三条を見送ってからヒロさんがそんなことを言ってきてビックリした。

「へっ?なんで?」
だって普通の発情ならいつもの部屋でいいと思ったんだ。
「うん、これもね事情があってね。君1人を置いておけない理由があるから。君の身の安全のためだよゆいちゃん」
少しだけ困ったなって顔してコウちゃんが言ってくる。

「それって、永尾が関係してるってことですか?」
だから俺は素直にそれを口にした。
「そうだな。それもあるんだが、大我がな、ゆいは不安定になってるからいつもの部屋じゃなくて暴走の時に使ってた部屋にして欲しいって言ってたんだ」
「大ちゃんにしかわからないゆいちゃんの変化だよね」
俺の言葉にヒロさんとコウちゃんが教えてくれる。


いつも俺より俺のことを知ってるあの男が俺のちょっとした変化に気が付かないわけがないんだ。


俺がいつもより不安定になってることに気付かないわけがないんだ。


自分ではうまく隠してるつもりだったんだけどなぁ…。


あの男は本当にどこまでも俺よりも先に考えて行動をしていく。


そして、そんなあの男の行動に俺はいつも助けられてるんだ。


俺は2人に連れられて暴走の時に使った部屋へと連れていかれた。


決して呼んでも大我が来ないのを寂しいと思いながら俺は一人であの部屋で過ごすんだ…



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