会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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18話

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煌太さんに約束した通り俺は神谷が使ってる部屋へと向かった。


部屋の扉をノックすれば出迎えてくれたのは神谷本人だった。
「あれ?先生は?」
部屋の中に入って神谷しかいなかったので俺は聞いてみた。もしかしたら神谷自身が頼んだのかもしれないけどな。
「委員長と2人だけで話がしたいとお願いしました」
神谷からはやっぱりな返事が返ってきた。

「そうか。あっ、そうだ、神谷すまない、顧問の2人がここに来てたって俺は知らなかったから辛かっただろ?」
俺は何かを話す前に顧問のことだけは謝らないとと思った。
「大丈夫ですよ。先生たちも委員長に言うと怒られるからって内緒で来てたので…」
神谷は苦笑を浮かべる
「すまん。あの2人には後からちゃんと言っておく。で、少しは気持ちが固まったか?」

俺の言葉に少し驚いた顔をするがすぐに泣きそうな顔に変わる。
「やっぱり気付いてたんですね僕の気持ち…」
ポツリと言われた言葉。
「そりゃぁ、2年もずっと2人を見てたからな。神谷が本当は永尾と一緒にそのお腹の子を育てたいとずっとそう思いながらも、迷って俺に相談してきたのは最初から気が付いてた。だから、神谷と永尾に考える時間を与えたんだが…」

神谷は最初から産む気ではいた、だけどあの時は感情が不安定だったこともあり、俺に助けを求めてきた。だから、俺は永尾に接近禁止令を出したんだ。

「今でも、少し迷ってます。健汰に伝えてもいいのかなって…。でも、この子の父親は健汰だから僕は産んで育てたい。健汰と一緒に育てていきたいそう思ってます。でも、勉強したいって気持ちもあって…それを考えてたら頭の中がぐちゃぐちゃになっちゃって…あの時は本当にすみませんでした。…委員長と会長には迷惑をかけちゃってごめんなさい」
ハッキリと自分の気持ちを言う神谷はいつもの神谷だ。

「あのバカがまだ冷静になれてないからどうしようもないんだけどな」
溜め息交じりに言えば
「あのバカ…まだわかってないんですか?」
俺の言葉に驚いた顔をする。

「あぁ、まだ自棄になってるからな。ちゃんとした状況がわかってないな」
俺は溜め息交じりに答えた。
「いつもならとっくに冷静になってるはずなのに…。僕から連絡いれましょうか?」
苦笑を浮かべたまま聞いてくる。傍にいた分だけ永尾のことをわかってるからな。

「イヤ、神谷からは連絡しなくていい。かえって変に刺激すると困るからな。それに俺もあいつとは話さないとダメだと思ってるからな」
俺は神谷の提案を断った。永尾とは俺自身もちゃんと話し合わないとダメだからな。

「じゃぁ、健汰に伝言を頼んでもいいですか?」
俺の言葉を聞き神谷が聞いてくる
「あぁ、大丈夫だぞ」
俺がそう返事をすれば神谷は少しだけ考え

「健汰に伝えてください、今はまだ会いたくないと…。その理由をちゃんと考えて欲しい、でも、自分の考えがまとまったら、ちゃんと健汰と話し合いたいからそれまで待っててほしいと…。そう伝えてください」
自分の今の気持ちをはっきりと告げる。

「わかった。永尾にはちゃんと伝えておく。神谷、今回の件が終わったら満期前に副委員長の椅子を降りてもらうつもりだがそれでいいか?あぁ、神谷の身体のことを優先しての決定だからな。誤解するなよ」
俺は神谷に伝えなくてはと思っていたことを口にする。

「あっ、僕自信も解任してもらおうと考えてました。この身体ではみんなに迷惑がいっちゃうって思って…。なんだか、委員長には驚かされてばっかりです。僕の考えるよりも先に答えをくれるので…」
なんて言われた。

「まぁ、ガキん時に煌太さんが妊娠して出産するまでの間の様子をずっと見てたからな。男の身体で妊娠してって結構大変なことだってずっと見てきてたから、経験者の話しも聞いてるし、どうした方がいいって言うのもアドバイスはもらってるからな。負担になるようなことは避けた方がいいからな」
そう、俺はずっとガキの頃、ボロボロの姿で妊娠して戻ってきた煌太さんの姿をずっと拓煇と一緒に見てきた。

出産までの間どれだけ大変だったかをずっと傍で見てきたのだ。だからこそ、校医である2人にアドバイスももらってたんだ。

「なんか委員長って僕たちじゃわからないような経験をしてきてるんですね。だから化け物にまでなっちゃうわけですね」
なんて神谷が変な納得のしかたをする。

「イヤ、違うからな。その納得のしかたは違うと思うぞ。俺が化け物になってんのは聖を守るためであって、俺自身が化け物ってわけじゃないから」
そこだけは訂正しておこう。

「そうですね、委員長の中での第一は聖会長ですもんね。でもそのお陰で僕たちは委員長に守られてますから。あの内部崩壊の時から…」
クスリと神谷が笑う。

聖が知らないだけで、風紀の内部の人間は俺がずっと聖を守ってきていたのを知っている。化け物と呼ばれるようになったのも聖を守りながら内部崩壊をさせたからだ。それも、内部にいる人間も守りながら。

「今の第2の性のシステムは完全にオメガとベータを守るためのものだからな。3つの属性それぞれが互いに協力していくために作り上げたもんだし。まぁ、一部のアルファがバカをやってくれてるんでその対応が大変だけどな」


アルファが上位という考えを持つものはいまだにおり、そういった考えの奴らが犯行に及びそうになる。それを徹底的に排除しつつ、そんなアルファ上位の考えはこの学園では通用しないと叩き込んだ。それが、オメガとベータを守るための手段だから。

だから、オメガのアルファによる性的暴行被害は1年の頃に比べれば一目瞭然だ。月に1、2回、そういった被害が出るかでないかにまでなったのだ。


「そう考えると委員長はやっぱり化け物ですね。普通の風紀の仕事をしつつ、こうして僕たちのこともしつつですから」
なんて神谷が感心したようにいう。

「化け物ならなきゃやってけないときもあるからな。さてと、俺はもう戻るけど後は何かあるか?」
俺は時計を確認して神谷に聞いてみる。

「いえ、今、委員長と話した分だけ気持ちがスッキリしました。僕はやっぱり勉強もしたいけど、健汰と一緒にこの子を育てたいです」
そうはっきりといいきった神谷は本当に決心が決まったという顔をしている。

「わかった。永尾にはちゃんと伝言しておく。もう暫くここでゆっくりと過ごしてくれ」
俺はそうとだけ告げて風紀委員室に戻るために部屋を出た。


後は永尾と話をするだけか。


これが一番大変そうだけどな。



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