会長様ははらみたい

槇瀬陽翔

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62話

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「吉沼先輩、今までありがとうございました」
一人だけ少し離れた場所に立つ吉沼先輩に声をかけた。
「お前も最後まで大変だな神尾」
苦笑を浮かべながら言われた言葉に
「イヤ、陰で先輩に助けてもらってたんでそこまで大変じゃないですよ」
そう返事をすれば盛大に溜め息をつかれた。
「俺はそこまで手伝ってないだろ。アイツらを見張ってただけだし、それに、実際に動いてたのはお前自身なんだからな」
「それが一番助かってたんですけどね」
先輩の言葉にそれが一番重要だったんだと返事をすればまた、溜め息をつかれた。
「そんなんだから、ぶっ倒れるんだぞお前」
なんて耳の痛いことを言われた。そう、実はぶっ倒れたってニュースが駆け巡った後で先輩たちに怒られたのだ俺は…。
「あん時は仕方なかったんですよ。色々と重なってたんで…」
って弁解してもブツブツ言われたんだよな。

「か、神尾くん、ヨシくんを苛めないでぇ」

なんて、突然、俺たちの間に割り込んできたのは同じ風紀委員のケア班の現班長の宮池みやいけだ。神谷の次に偉い班長だ。

「ヨシくん???」

そんな宮池の言葉を拾った先輩たちから驚きの声が上がった。

三条と神谷があちゃーって顔をして、吉沼先輩は片手で顔を押さえ天を仰ぐ。

「えっ?えっ?えっ?」
そして、意味のわかってない宮池が回りをキョロキョロした。

「宮池、お前は今、自分で地雷を踏んだからな。俺が折角ずっと誰にもわからないように隠してたのに…」
そんな宮池に俺が苦笑を浮かべながら言えば
「えっ?あーっ!!!」
状況を理解したのか口を押さえて叫んだ。
「イケ、否みに今、俺は神尾に卒業のお祝いの言葉をもらってただけで、苛められてねぇからな」
そんな宮池に吉沼先輩が苦笑を浮かべて説明をした。
「ふえぇーん、だってぇ、1年の時、ヨシくんは神尾くんに怒られてたしぃ、またなのかなって思ってぇ」
宮池は半泣きになりながら言ってくるが、
「宮池が心配になるのはわかるけど、流石の俺も卒業生にそんなことはしないぞ」
俺はそんな宮池の言葉に呆れた。

「そんなことより、ヨシくんてどういう意味だ」
食いついてきたのは恭先輩だった。
「2人はどういう関係なのかな?」
なんて、珍しく愁先輩も食いついてきた。
「なぁ、教えろ吉沼」
なんて、緑先輩までも。
「はぁ、だからずっと隠してたのに…」
「ほんと、宮ってば…」
三条と神谷は呆れている。意味がわからない永尾と聖はポカーンってしていた。そして、遠巻きに他の先輩たちも興味津々で様子を伺っていた。
「どうしますか先輩?」
この状況をどうするかと本人に聞けば小さく息を吐き
「宮池は俺の恋人だ。悪いか」
はっきりと言いきった。その途端に
「うわぁ~!」
とか
「マジかぁ~!」
とか歓声が上がった。

「ふぇーん、怖いよぉ」
案の定、宮池からそんな声が上がる。
「だから、神尾がずっと隠してたのに…」
「自分でばらすから宮は…」
そんな宮池に三条と神谷が頭を撫でながら苦笑する。
「どういうことだ?」
「神尾くん説明して?」
「吉沼とどうやって?」
なんて、恭先輩たちからの質問が飛んできた。

「宮池は怖がりで臆病なんですよ」
俺のこの言葉に

「はぁ?それでよく吉沼となんて!」
なんて声があがる。
「ヨシくんは怖くないもん。いい人だもん」
その声に宮池が三条と神谷に隠れながら声をあげる。
「イヤイヤ、突っ込みどころ満載だぞそれ」
「ダメだよ恭。そんな言い方」
「吉嶺、顔が笑ってる」
やっぱりな言葉が3人から出てくる。

「俺と吉沼先輩が一緒にいる時に、宮池が襲われそうになってる場面に出くわしたんですよ。俺が動く前に先輩は宮池を助けて、そっからですよ宮池が吉沼先輩に惚れたのは」
「あん時はお前が動くより俺が動いた方がよかったから俺が動いただけだろ」
俺の言葉に吉沼先輩が苦笑を浮かべながら言ってくる。
「あの時は神尾くんもヨシくんもかっこよかったんだよねぇ。聖くんが神尾くんに惚れてる理由がわかっちゃったぁ」
なんて、宮池の惚気が入った。
「へっ?おっ、俺?」
行きなり自分を呼ばれて聖もビックリしてる。
「で、どうして隠してたの?」
急に愁先輩が聞いてくる。
「宮池は風紀の仕事してるときはすごいできる人間なんです。仕事じゃなくなると、メッチャ怖がりでダメ人間になるんですよ。現にまだって怖がって三条と神谷の後ろから出てこないですからね」
「仕事はできるんだけど、宮はホントに怖がりだもん」
「先輩たちの餌食になったら生き残れないんですよ。だからずっと隠してたのに」
俺の言葉を付け足すように神谷と三条は言えば
「ダメな子っていうなぁ」
宮池が嘆く。
「あー、わかった。ある意味、俺よりダメな子だ。だから大我たちは秘密にしてたんだな」
宮池の嘆きを聞き聖がポンと手を叩く。
「当たり。ある意味、聖と同類だけど、宮池の場合は生活面的にもダメな子だった」
俺の言葉に聖は情けない顔をするが思い当たる節があるのか
「俺の場合は記憶障害だけのはず。それ以外は問題ないはず」
自分でそんなことをいう。
「お前の場合は他人に興味ないのが原因だから、だから覚えないともいう。宮池の場合は全て覚える気がない」
溜め息混じりに言えば
「ひどい~。神尾くんそれはひどい~」
って宮池から泣きが入るが
「イヤ、イケそれは違わない。神尾の言ってることは正しい。お前は完全に覚える気がないんだ」
あっさり、バッサリと吉沼先輩が言いきった。
「でも、なんで黙ってたんだよ」
「そうだよ、恋人がいるってだけでも教えてくれればいいのに」
「そうだぞみずくせぇ」
なんて、恭先輩たちが言えば吉沼先輩が盛大に溜め息をつき
「だからだよ。お前たちに教えたらこいつが怯えるだろうが。お前らみたいにグイグイ来られたらこいつ怯えまくって何も話せなくなるんだよ」
わしゃわしゃッと宮池の頭を大きな手で撫でながら言えば宮池が嬉しそうに笑う。
「そんなの決まってるだろ!」
「そうだねぇ」
「祝うに決まってるだろ~!!」
なんて恭先輩たちが言えば
「吉沼~!おめでと~!!!」
なんて、示し合わせたかのように吉沼先輩と宮池を祝うための声があがった。
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