死に戻り令嬢は黒竜の花嫁

槇瀬陽翔

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第12話

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「ユリアーナ様、一体何があったんですか!」
「えっ?あっ、マーサ、いつ来たの?」
マーサの声に驚きユリアーナが我に返った。
「先ほどから声を掛けてるのに、呆然と立ち尽くしてるので心配しました。何かあったんですか?」
マーサはユリアーナに持ってきた上着を掛けながら聞いてみた。ユリアーナは少し考え
「マーサ、今からトール様に会うことは可能かしら?」
トールに会うことは可能かをマーサに確認してみた。
「今からですか?この時間でしたら、執務室にいらっしゃるので、もしかしたらお会いできると思います」
ユリアーナの様子に驚きながらもマーサはトールに会えるかもと答えた。
「なら、トール様に会いに行くわマーサ」
ユリアーナはトールの元へと行くとマーサに告げて歩き出した。
「ちょ、ユリアーナ様、何があったんですか?そんなに慌てて」
マーサにはユリアーナがこんなにも慌ててる理由がわからなかった。朝、2人が一緒に食事をとってるときはいつものように普通だったし、診察を受けているときも普通だったのだ。それが数分、一人、中庭へ行っている間に彼女に何が起きたのかマーサにはわからなかった。
「急いで確認したいことがあるの」
ユリアーナはマーサの問いに答えるとそれ以上は何も言わず、足早に屋敷へと戻り、トールの執務室へと急いだ。


トールの執務室の前にユリアーナが着くと、扉の前にギリムがいた。
「ユリアーナ様、いかがなさいましたか、そんなに慌てた様子で?」
ギリムはユリアーナの慌てぶりに驚き声をかければ
「ギリム、トール様に会いたいの。会えるかしら?」
ユリアーナはトールに会いたいと訴えた。その言葉からもどこか焦ったような感じがしギリムは
「少々お待ちください、トール様に確認してまいりますので」
トールに確認をしに行った。ギリムが戻ってくるまで、ユリアーナは少しだけ落ち着きを取り戻していた。
「お待たせしました。トール様がお待ちですので、お入りください」
ギリムが扉を開けるとユリアーナは急いで中へと入った。

「トール様、執務中に突然の訪問お許しください」
ユリアーナはトールの前に来ると仕事の邪魔をしたことを詫びた。
「ギリムからユリアーナ嬢が焦ってるようだと聞いたからな。何かあったのか?」
トールは急な訪問を咎めるわけではなく、ユリアーナに何があったのかと問うた。
「トール様、教えていただきたいことがございます。トール様はどこか悪いのですか?」
単刀直入にと言わんばかりにユリアーナが声を上げる。
「どういうことだ?」
トールはユリアーナの突然の言葉に困惑する。何を根拠にそんなことを聞いてくるのかがわからなかったからだ。
「先ほど、中庭でとてもキレイな女性にお会いしたんです」
「はっ?女性?」
ユリアーナの言葉にトールが変な声を上げる。ギリムや、その部屋にいた者たち、そして、ユリアーナについてきたマーサも驚いた顔をする。この屋敷に出入りできる女性など限られているし、婚約者であるユリアーナに声を掛けれる者などそうそうはいないのだ。
「はい、キレイな銀色の髪に透き通るような青い瞳に白いドレスを着た女性でした」
ユリアーナの言葉にトールが誰に会ったのかを理解した。イヤ、その場にいたユリアーナ以外の者たちが理解した。
「で、その女性が君になんと?」
トールはその女性がユリアーナに何を告げたのかが気になり聞いてみる。
「その人はとトール様が危ないと、トール様が二度と戻れなくなると…私が覚醒しないとトール様を救えないとおっしゃってました。どういうことですか?トール様が戻れないってどういう意味なんですか?」
ユリアーナは自分の覚醒とトールの戻れなくなるという意味が分からなかった。
「ユリアーナ嬢、少し落ち着いてくれ。俺は別にどこも悪くないし、戻れないとかも意味が分からない。それに君が覚醒っていうのもわからない。だから、気にしなくてもいい」
トールはユリアーナにわからない様に嘘をつく。トールがユリアーナに隠している信実を伝えるにはまだ時間が必要だったからだ。
「本当ですか?」
ユリアーナはトールの言葉を信用してないわけではないが、聞いてしまう。
「あぁ。本当だ」
トールはユリアーナを安心させるように頷いた。ユリアーナは小さく息を吐き
「わかりました。トール様のその言葉を信じます。邪魔をしてしまってごめんなさい。マーサ戻りましょう」
ユリアーナはトールにもう一度、謝りマーサと一緒に執務室を出ていった。

「ギリム、城へ向かう」
ユリアーナが出て行ったあとで、溜め息をつきトールがギリムへ告げる。
「今から行かれるのですか?」
今すぐいくのかとギリムは確認してみる。トールが怒っているのに気が付いているからだ。
「あぁ、別に王太子陛下に会いに行くわけじゃないし。許可がいるわけじゃない。最も俺自身に許可は必要ないからな」
少しだけ棘のある言葉に部屋の中にいた者たちの顔に苦笑が浮かぶ。
「かしこまりました。すぐに準備します」
ギリムは頭を下げトールが城へ行けるように準備をするために部屋を出た。ギリムが部屋を出るのと同時に、部屋の中にいた他の者たちも出ていった。
「余計なことを…」
トールは誰もいなくなった部屋の中で1人呟いたのだった。

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