12 / 13
第11話
しおりを挟む
ユリアーナがトールの屋敷に来て、数ヶ月が経った。
「随分と顔色もよくなったし、肉付きもよくなったね。身体も特にどこか悪いというわけでもないから安心していいよ」
トールのとこへ来てから定期的に受けている検診を終え、医師からの言葉にユリアーナはほっと胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。異常がなくてよかったわ」
これで、一つ妃教育が終わったといってもいいのかもしれないとユリアーナは思った。
「くれぐれも無理はしないようにね。君の場合は無理をするとすぐに逆戻りになるからね」
医師はそう言い残し帰っていった。
「中庭でも散策しますか?」
マーサがユリアーナに声をかければ
「そうね、今日は天気もいいから運動がてらに少し歩いてくるわ」
ユリアーナはマーサの言葉に賛同するように立ち上がり行ってしまった。
「あっ、ユリアーナ様、せめて上着でもって…行ってしまったわね」
マーサがユリアーナに声を掛ける間もなくすでにユリアーナは部屋を出て行ってしまった後だった。マーサは小さな溜め息をつき
「上着を持って追いかけないと…」
ユリアーナを追いかけるために、衣裳部屋からユリアーナの上着を持って部屋を出ていった。
ユリアーナは自分の部屋から見える庭先に来ていた。
「今日はここから見ていこうかしら」
ぐるりと周りを見渡し散策開始の場所を決め歩き始めた。
「やっぱりすごく手入れが行き届いていてキレイだわ」
中庭を歩きながらユリアーナがその美しさに言葉をこぼす。一人でさっさと庭に出てきてしまったユリアーナは護衛のリオンやナイル、マーサのことなど忘れてしまっていた。
ユリアーナが庭の中央にたどり着いたころ
「そなたがトール殿の嫁であっておるか?」
不意に後ろから声を掛けられ
「えっ?」
驚いて振り返ればそこに白銀の髪に澄んだ青い瞳をした純白のドレスを着た女性が立っていた。ユリアーナは驚いて言葉が出なかった。
「トール殿の嫁ではないのか?」
女性がもう一度聞いてくる。
「えっ?あっ、まだ嫁ではありません。婚約はしてますけど…」
ユリアーナは慌てて答えるが、トールの嫁ではないし、まだ正式に婚約を交わしてないはずと一人考えてしまう。
「どちらでもいい。そなたがトール殿の女なのには変わりがないのだろ?」
女性の言葉になんて大雑把なとユリアーナは思うが、これ以上、事細かく言っても無理なのかもと思い
「はい、そうなりますね」
素直に自分がそうだと返事をした。
「早くせねば、トール殿が手遅れになるぞ」
急に真面目な顔をしてそんなこと口にす。
「手遅れってどういうことですか?」
ユリアーナには意味が分からず聞き返せば
「早くそなたが覚醒せねばトール殿が二度と戻れなくなるぞ」
女性はもう一度、トールが危ないと口にする。
「待って、覚醒ってどういうこと?トール様が危ないって…きゃっ」
ユリアーナがもう一度、聞き返そうとしたその時、突然、突風が吹き治まったときには女性の姿はどこにもいなかった。
「どういうこと?」
ユリアーナはポツリと呟いた。
「ユリアーナ様、上着を羽織りください」
立ち尽くしているユリアーナの傍にマーサが上着を持ってかけてくる。がユリアーナはマーサが来たことに気が付いていなかった。
「ユリアーナ様?いかがなさったんですか?」
マーサが声を掛けるがユリアーナの耳にはその声は届いていなかった。ユリアーナは先ほどの女性の言葉が気になっていたからだ。
トールが危ないということと、自分が早く覚醒しなければならないということの意味がユリアーナにはわからなかった。
「随分と顔色もよくなったし、肉付きもよくなったね。身体も特にどこか悪いというわけでもないから安心していいよ」
トールのとこへ来てから定期的に受けている検診を終え、医師からの言葉にユリアーナはほっと胸を撫で下ろした。
「ありがとうございます。異常がなくてよかったわ」
これで、一つ妃教育が終わったといってもいいのかもしれないとユリアーナは思った。
「くれぐれも無理はしないようにね。君の場合は無理をするとすぐに逆戻りになるからね」
医師はそう言い残し帰っていった。
「中庭でも散策しますか?」
マーサがユリアーナに声をかければ
「そうね、今日は天気もいいから運動がてらに少し歩いてくるわ」
ユリアーナはマーサの言葉に賛同するように立ち上がり行ってしまった。
「あっ、ユリアーナ様、せめて上着でもって…行ってしまったわね」
マーサがユリアーナに声を掛ける間もなくすでにユリアーナは部屋を出て行ってしまった後だった。マーサは小さな溜め息をつき
「上着を持って追いかけないと…」
ユリアーナを追いかけるために、衣裳部屋からユリアーナの上着を持って部屋を出ていった。
ユリアーナは自分の部屋から見える庭先に来ていた。
「今日はここから見ていこうかしら」
ぐるりと周りを見渡し散策開始の場所を決め歩き始めた。
「やっぱりすごく手入れが行き届いていてキレイだわ」
中庭を歩きながらユリアーナがその美しさに言葉をこぼす。一人でさっさと庭に出てきてしまったユリアーナは護衛のリオンやナイル、マーサのことなど忘れてしまっていた。
ユリアーナが庭の中央にたどり着いたころ
「そなたがトール殿の嫁であっておるか?」
不意に後ろから声を掛けられ
「えっ?」
驚いて振り返ればそこに白銀の髪に澄んだ青い瞳をした純白のドレスを着た女性が立っていた。ユリアーナは驚いて言葉が出なかった。
「トール殿の嫁ではないのか?」
女性がもう一度聞いてくる。
「えっ?あっ、まだ嫁ではありません。婚約はしてますけど…」
ユリアーナは慌てて答えるが、トールの嫁ではないし、まだ正式に婚約を交わしてないはずと一人考えてしまう。
「どちらでもいい。そなたがトール殿の女なのには変わりがないのだろ?」
女性の言葉になんて大雑把なとユリアーナは思うが、これ以上、事細かく言っても無理なのかもと思い
「はい、そうなりますね」
素直に自分がそうだと返事をした。
「早くせねば、トール殿が手遅れになるぞ」
急に真面目な顔をしてそんなこと口にす。
「手遅れってどういうことですか?」
ユリアーナには意味が分からず聞き返せば
「早くそなたが覚醒せねばトール殿が二度と戻れなくなるぞ」
女性はもう一度、トールが危ないと口にする。
「待って、覚醒ってどういうこと?トール様が危ないって…きゃっ」
ユリアーナがもう一度、聞き返そうとしたその時、突然、突風が吹き治まったときには女性の姿はどこにもいなかった。
「どういうこと?」
ユリアーナはポツリと呟いた。
「ユリアーナ様、上着を羽織りください」
立ち尽くしているユリアーナの傍にマーサが上着を持ってかけてくる。がユリアーナはマーサが来たことに気が付いていなかった。
「ユリアーナ様?いかがなさったんですか?」
マーサが声を掛けるがユリアーナの耳にはその声は届いていなかった。ユリアーナは先ほどの女性の言葉が気になっていたからだ。
トールが危ないということと、自分が早く覚醒しなければならないということの意味がユリアーナにはわからなかった。
0
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
いっとう愚かで、惨めで、哀れな末路を辿るはずだった令嬢の矜持
空月
ファンタジー
古くからの名家、貴き血を継ぐローゼンベルグ家――その末子、一人娘として生まれたカトレア・ローゼンベルグは、幼い頃からの婚約者に婚約破棄され、遠方の別荘へと療養の名目で送られた。
その道中に惨めに死ぬはずだった未来を、突然現れた『バグ』によって回避して、ただの『カトレア』として生きていく話。
※悪役令嬢で婚約破棄物ですが、ざまぁもスッキリもありません。
※以前投稿していた「いっとう愚かで惨めで哀れだった令嬢の果て」改稿版です。文章量が1.5倍くらいに増えています。
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる