彼女は最強のボディーガード

槇瀬陽翔

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2話

洸翔ひろとが着替えてキッチンの方へ出てくると哉樹かなたは普段通りにパンツスーツ姿になっていた。
「着替えたのか?」
哉樹かなたの後ろ姿を見ながら洸翔ひろとが声をかければ
「うん、だってあれはただ試着してヒロくんに見せたかっただけだもん。仕事はいつも通りこっち。じゃないと意味ないしね」
哉樹かなた洸翔ひろとが座る席に食事の乗った皿を置きながら返事をする。哉樹かなた洸翔ひろとのボディーガードとして一緒にいるのだ。女装した姿で。食事の置かれた席に座り
「悪いな」
ポツリと出た言葉。洸翔ひろと自身ずっと後悔していた。自分が言った一言で、哉樹かなたをこの姿で自分の傍に縛り付けてしまっているんだと。

『同性じゃ怖い、だけど哉樹かなたが傍にいてくれた方が助かる』

「気にしてないし~。それに、ヒロくんのお母さんからの依頼でこうしてヒロくんを護ってるんだしね」
哉樹かなたは全然そんなこと気にしてないとばかりに笑う。

実際に哉樹かなたは気にしていないのだ。一番、傷付いてるときに傍にいて助けていれば頼られるのはわかってることだ。ましてや洸翔ひろとがこうなった事情を一番よくわかってるのも当事者以外では哉樹かなただけなのだ。だからこそ、哉樹かなた洸翔ひろとが本当の意味で大丈夫になるまでの間、傍で護れるようにとボディーガードの資格を取り、最終的にはライセンスも取得し、個人事務所まで立ち上げたのだ。個人事務所ではあるが、それなりに有名だし、有能な仲間も揃っている。

「あっ、はいこれ、尚が検査して異常ないやつっていって置いていったよ」
哉樹かなた洸翔ひろとの前に箱に入った手紙の束を置いた。それを見て洸翔ひろとの眉間に皺が寄る。
「いつ届いたやつだ?」
「昨日だね」
洸翔ひろとの問いに哉樹かなたは答え珈琲を淹れたカップをいつもの場所に2人分置き自分も席に座った。
「どこの検査機関だよお前らの事務所は…昨日の今日で終わらせるとかおかしいだろ…」
「それは尚にいってよ。尚の場合は専門知識が半端ないからね。私の事務所についてきた時点でそっち系は大体熟知してるもん」
哉樹かなたの言葉に呆れながら洸翔ひろとが言うが、文句を言ってるわけではない。ただ、驚いてるだけだ。昨日届いた郵便物をたった一晩で検査し終えていることに驚いているだけ。
「そういえば尚登って鑑識とかそっち系の知識メッチャ持ってたよな?お前の右腕として高校んときからバリバリやってたの覚えてる」
パンをちぎりながら洸翔ひろと哉樹かなたが尚と呼んだ人物の事を思い浮かべながらそんなことを言う。
「尚はねぇ、親の影響もあるよあれ。そのおかげで、こうして結果が出せてるんだけどね」
哉樹かなたが小さく笑う。それは洸翔ひろとも実感していた。

哉樹かなた率いる、哉樹かなたの個人事務所に所属しているボディーガードは各自、各々の特技、知識をいかんなく発揮しているのだ。その為、依頼を受けたときの成功率はダントツでいい。哉樹かなた洸翔ひろとの専属ボディーガードとして常に一緒にいるが、他のメンバーはそうじゃない。哉樹かなたが振り分けた依頼をこなしているのだ。

「だけど、よくもまぁ、あれだけの奴らがお前の元に集まったな。しかも高校からの腐れ縁だろ?」
洸翔ひろとは感心していう。洸翔ひろと哉樹かなたの事務所にいるメンバーを全員、知っているのだ。
「まぁねぇ。半分は実家の都合で後継者の修行とかに追われてるけど、残りの半分は後継者争いを放棄してるから自由の身だー!っていって着いてきちゃったからね」
哉樹かなたは小さく笑う。

事務所のメンバーは高校の時の同じ委員会のメンバーだ。そのメンバーたちがどこまでもついていきます!と言って着いてきた結果、個人事務所を立ち上げることにつながったのだ。
勿論、事務所のメンバー全員が資格もライセンスも取得済みである。哉樹かなたはそれだけは最低条件だと言ったのだ。

「俺も放棄してんだけど?」
つい洸翔ひろとはそんなことを口にしてしまった。

書類上、すでに洸翔ひろとは後継者から辞退した身になっている。それも高校の誘拐事件の後すぐにだ。だが、今でも後継者争いに巻き込まれている。だからこそ、ボディーガードが必要だった。だけど、同じ男が傍にいるのは怖い。本当は大勢のいる場所に行くのも怖い。だが、哉樹かなたが傍にいればまだましなのだ。だから、女装した哉樹かなたが常に傍にいる。

「ん~、それはねぇ。信じないバカが多いんだよね。だってお父さんの会社で手伝ってるんだもん、狙われてもおかしくないでしょ」
洸翔ひろとの言葉に哉樹かなたは溜め息交じりに答えた。
「毎日じゃないし!ひと月に5回あるかないかだし!」
なんて、洸翔ひろとが反論するが、手伝っていることには変わりないのだ。
「ヒロくんの仕事は別だもんね。ほら、早く食べないと遅れるよ」
哉樹かなたは時間を確認して早く食べるように促した。

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