彼女は最強のボディーガード

槇瀬陽翔

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4話

2人で、駐車場まで下りれば1台の車がすっと2人の傍まで来て停まった。
「どうぞ」
哉樹かなたは後部座席の扉を開け洸翔ひろとに声をかける。
「自分でできるって。それに哉樹かなたは召使じゃないだろ?」
洸翔ひろとは溜め息交じりに言いながらも、後部座席に乗り込んだ。哉樹かなたも同じように乗り込み扉を閉める。
「朝から痴話ゲンカぁ?相変わらずだねぇ2人ってぇ」
なんて、間延びした言葉が助手席側から飛んでくる。
「ちげぇ。痴話ゲンカじゃねぇし」
そんな言葉を洸翔ひろとは助手席に座る男に投げた。
「あはは。ヒロッちは相変わらずだぁ」
ケラケラと笑う男。
季楽きらうるさい」
今度は運転席の男がボソリと呟いた。
「わぁ、尚ッちもご機嫌斜めぇ?」
季楽きらと呼ばれた助手席に座る男は酷いわって言いながら笑う。
「ほら、2人ともヒロくんが仕事に遅れるんですけど」
そんな2人に哉樹かなたが声をかければ急に静かになり、運転席に座る尚と呼ばれた男が車を発進させた。


『相変わらずだな。口調こそは怒ってはいないけど、言葉に威圧的なものが含まれている。さすがボスだ』


洸翔ひろと哉樹かなたたち3人のやり取りを見ながらそんなことを考えていた。助手席に座る季楽きらも運転している尚登なおと哉樹かなたの部下である。そして、哉樹かなたと共に洸翔ひろとを護ってくれているのだ。
「そういえばぁ、ヒロッち、この間おばさんが家に大量に服送ってきたからありがとぅっていっといてぇ」
「はっ?」
季楽きらの突然の言葉に洸翔ひろとは変な声を上げた。
「俺の所にも送って来たな。なんか新作だって」
運転してる尚登もチロリとルームミラーを見て言った。
「はぁ?どういうことだよ哉樹かなた
洸翔ひろとはグリンッと哉樹かなたの方を見る。自分よりも哉樹かなたの方が状況がわかると思っているからだ。
「あー、お母さんがね、新作をね、みんなに配ってるの。今日の朝、着て見せたでしょ?」
哉樹かなたは半分言葉を濁しながら朝着て見せた服と同じだと洸翔ひろとに説明をする。
「はぁ?お前にだけじゃねぇの?」
洸翔ひろとはその真実は知らなかった。母親が趣味で始めたブティック用の服が完成するたびに哉樹かなたに送って来てるのは知ってはいたが、まさかそれを哉樹かなたの会社にいる、みんなにも同じように送っているのは知らなかったのだ。
「うん。洸翔ひろとを護ってもらってるので、そのお礼にって送って来てるかな。金銭もらうわけじゃないし、服を着てその性能とか?改善点とかを伝えてるからね」
哉樹かなたはあっさりとそんなことを言う。
「結構、重宝してるよねぇ。時と場合によっては役に立つ服とか多いしぃ」
季楽きらはもらって嬉しいと笑う。
「確かに、時々、服が破れて困るときがあるから、あると助かるな」
尚登なおともそう言って笑う。
「お母さんの所の新作の服は私たちの仕事を考えてくれてるヤツが多いからねぇ。本当に助かってるよ」
哉樹かなた洸翔ひろとを見て笑う。
「その割にお前の服はぴったりボディラインがわかるやつだよな」
少しだけ不満げに言う洸翔ひろとに3人が笑う。
「だってぇ、あれはぁ、おばさんの趣味だよねぇ」
「いかに可愛く、美しく、見えるか」
「悪い虫が付かないように、ヒロくんの傍に立っても不釣り合いじゃないようにって考えて作られてるからねぇ」
3人の言葉を聞き洸翔ひろとは頭を抱える。
「イヤ、だからって、哉樹かなたは男なんだぞ?俺のせいでこんな姿させてるけど!」
自分が言い出したせいでこんな姿をしてるが本来は男なんだぞと言えば
「いいじゃん」
「本人が楽しんでるからな」
季楽きら尚登なおとはハッキリと言い切る。洸翔ひろとが恐る恐る哉樹かなたの方を見れば
「大丈夫。心配しなくてもいいし、気にしなくてもいいよ。ヒロくんの傍にいるのは自分の意思だから」
哉樹かなたは心配するなと言わんばかりに笑う。
「…ごめん…」
洸翔ひろとは小さく呟いた。
「ヒロくんはさぁ、気にしすぎだよ。嫌だったらとっくに断ってるよ」
哉樹かなたはそんな洸翔ひろとの頭を撫でた。洸翔ひろとにとってこんな小さなスキンシップでさえ恐怖になるのを哉樹かなたは知っている。だから、女装した姿でしかやらない。傍にはいるけれど、必要以上の触れ合いもしない。勿論、洸翔ひろとが起きてる間、哉樹かなたは一切女装を解くことはない。女装をやめるのは本当に寝るときだけである。といっても最近は寝るときも女装を解いていない。その理由を洸翔ひろとは知らない。
「ありがとう」
洸翔ひろとは小さく呟いた。

洸翔ひろとは本当に哉樹かなたのこんな小さな気配りに幾度も救われてきたのだ。

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